《ラクリマの恋人×星空の小夜曲》2 第11話 再会の聖騎士

「成る程なー。それでお前はセシリアとアデル達と、そのティオってのを探してると」


 森を探索がてらトキがこれまでの事を説明すると、ロビンは腕を組み、大きくうんうんと頷いた。


「……オイ、クソゴリラ。本当に理解したんだろうな」

「したした。夢なのにスゲェ細かいせって……あいってえ!」


 案の定未だただの夢の中にいると思い込んでいるロビンの後頭部を、トキは全力で殴り飛ばす。ロビンは今殴られたところをさすりながら、涙目でトキを振り返った。


「……とにかく、死なないでかつセシリア達も死なせないようにすりゃいいんだろ? ダイジョーブダイジョーブ。俺だって例え夢でも死にたかねえし、親しい奴らが死ぬのを見るのも嫌だからな」

「……そこを理解出来てりゃいい」

「でも、いい夢だよなあ。セシリアがホントは生きてたなんてな!」


 気を取り直し、嬉しそうに言うロビンにトキの胸が痛む。セシリアと再会して三ヶ月。ロビンと連絡を取ろうと思えば取れたのに、罪悪感から連絡出来ずにいた。

 この夢からセシリア達を救出したら、すぐにロビンに連絡をしよう。トキは密かに、そう心に誓った。


「それにトキが子供育ててるってのもビックリだな! 口ワリィとこまで似てねえだろうな?」

「余計なお世話だクソゴリラ」

「なーんだよー、捻くれトキ君にちゃんと子育てが出来てるか心配してんだろー?」

「だからそれが余計なお世話だって……」

「……ん、トキ、ちょいストップ」


 と、突然ロビンが足を止め、トキを制する。何事かとロビンを見るトキに、声を殺してロビンは言った。


「……視線を感じる。蛇じゃねえな、多分人だ」

「……解んのかよ」

「殺気が少ない。襲おうとしてるっつーより、こっちの様子を窺ってる感じだ」


 ロビンが言うのなら、恐らくはそうなのだろうとトキは思う。こと戦闘に関しては、自分よりも賞金稼ぎのロビンの方が信用がおけた。


「……なら先手を打つか」

「いやいや、多分こっちを警戒してるだけだろ。まずは話し合いといくか。……油断はしないようにしつつ、な」


 そう言って、ロビンが深い茂みの向こうに銃口を向ける。そして、声を張り上げこう宣告した。


「そっちが見てる事は解ってるぜ! 大人しく出てくりゃ、こっちも手荒な真似はしねえ。出てこい!」


 ロビンの宣告から一拍置いて、茂みがガサガサと大きく揺れ出す。そして姿を現したのは、聖騎士の正装を身に纏った一人の青年だった。


「……っと。そのカッコ、ヴィオラ教の聖騎士サマか?」

「そうだ。貴様はその身なりからすると、野蛮な賞金稼ぎといったところか」


 銃口を向けられているにもかかわらず高圧的な態度を崩さないその青年に、トキは既視感を覚える。同時に思い出すのは、酷く苦い記憶。

 彼女の。セシリアの秘密を、初めて知った、あの村。

 そうだ。セシリアの秘密を知る故に、セシリアに対し凶行に走ったあの男。

 あの男の名は、確か――。


「……マルク。テメェ、マルクか」

「……気安く名を呼ぶな。ドブネズミが」


 記憶の中より少し歳を取った青年は。名を呼んだトキに対し、強い殺意の視線を向けた。

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