《ゆりせんせいは猫耳サイテー勇者を教育します!×星空の小夜曲》第13話 男と女が一緒にいたら、ヤる事なんて一つだろ?

 ナオトは不満で一杯だった。

 折角再会出来たゆりとは、一緒の部屋にいられない。いつものように抱く事も出来ない。

 トドメに、だったらさっさと寝てしまおうと思ったら、こうして酒場に連れ出される始末だ。


「何っでオレまで付き合わされんの? 一人で飲みに行きゃいーじゃん」


 テーブルにドカッと足を乗せ、自分が不機嫌である事を強調しながらナオトが不平を口にする。それに対し、サークは涼しい顔で言った。


「お前を一人でほっとけるか。監視だ監視」

「何ソレ」

「それに一人で飲むのもつまんねえだろ。付き合え」


 どうやら後半の言葉の方がサークの本音のようだったが、人の機微に疎いナオトには伝わらなかったようだ。ナオトは頬杖を突くと、また愚痴を垂れ流し始める。


「ハァー……ホントなら今頃ゆりとヤりまくってたハズだったのに。しかもヤローと二人で飲みだなんて」

「お前何でそんなにヤりたい訳」

「は? 惚れてんだから一緒にいたらヤるだろフツー。おかしいのは寧ろそっちの方だろ」

「あ? 俺のどこがおかしいんだよ」

「アンタとクーナ、一緒に旅してんだろ? なのに何でまだ処女・・なんだよ」


 ナオトがそう言った瞬間。サークは素早い動作で椅子を蹴り、ナオトの胸ぐらを掴んでいた。


「――どうやってそれを知った」

「匂いだよ! 処女とそうじゃない女は匂いが違うからオレには解んの!」

「手は出してねえんだな?」

「オレは今はゆりだけ! 第一あんなガキくせーのタイプじゃねーし!」


 険悪な雰囲気に、周囲の視線が二人に集中する。サークは暫くの間ナオトを睨み付けていたが、やがて小さく舌打ちするとナオトから手を離した。


「……大体、クーナが処女だったら何がおかしいんだ」


 周囲の視線が散り、空気が落ち着いたところで、サークが再び口を開く。先程までと違い、その表情には苛立ちがありありと浮かんでいた。


「だってフツーヤるだろ。男と女が一緒にいたら。それともアレ? アンタイ○ポ?」

「アホか。何でもテメェと一緒にすんな。それにアイツはまだガキだ」

「だったら尚更さっさとヤってオンナにすりゃいーじゃん」

「そういう問題じゃねえ!」


 ナオトのあまりに下世話な物言いに、サークの語気が荒くなる。しかしそれによりまた周囲の視線が俄かに集まり始めると、サークは慌てて咳払いをした。


「……俺はアイツの親みてえなもんだ。子供に手ぇ出す親はいねえだろ」

「フーン……あ、酒来た」


 サークの話にナオトが興味を無くしたのと同時に、給仕が二人のテーブルに酒を運んできた。ナオトはそれを当たり前のように手に取り、グイッと飲み干す。


「金出してるのは俺なのに、遠慮しねえな、オイ」

「そんなもんしたら酒が不味くなるだけじゃん」

「ハァ……潰れて明日に響くのだけは勘弁してくれよな」


 そう溜息を吐くと、サークもまた、運ばれてきた酒に口を付けた。



 ――という話があったのが、今から一時間前の話である。では、現在の彼らはと言うと。


「グッグッ……プハー! だからさ、女が無防備だとホント男は大変なんだよ!」

「わかる。ゆりもホント無防備でさ、クソ犬とかエメとか平気で近付けさせんの! 大体アイツらもオレのゆりに近すぎんだよ!」

「おう、うちにもいるわ、やったらクーナに近い奴! クーナもあんなのにニコニコしやがって、アイツに襲われかけたの忘れたのかっつの!」

「だからさぁ、さっさとヤってモノにしちまえって!」

「でもお前んとこはモノにした後も無防備なんだろ?」

「そう! ゆりはオレの奥さんだっていう自覚が足りない!」

「それもこれもクーナが可愛すぎるのが悪い!」

「ハ? ゆりのが可愛いし。おまけに体もエロいし」

「クーナはあの慎ましい体がいいんだよ!」

「まぁ確かに育て甲斐はありそうだけど?」

「育って欲しい気もするしでも育ちすぎても野郎共の目が……あああああ!」

「わかる。ゆりをエロい目で見ていいのはオレだけなの!」


 ……何故かすっかり意気投合していた。

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