《ゆりせんせいは猫耳サイテー勇者を教育します!×星空の小夜曲》第10話 私達を信じて
「ゆり!? ……ゆり!」
力無く崩れ落ちそうになるゆりさんの体を、ナオトが両手で支える。私とサークもゆりさんに駆け寄り、その様子を見た。
「……顔色が悪いな。どこかで休ませた方がいい」
「オイ、何勝手にゆりに顔近付けて……!」
「んなつまんねえ意地張ってる場合か! それともお前がゆりを今すぐ元気に出来んのか!」
「……っ」
ゆりさんの顔色を確かめるサークにナオトが抗議の声を上げたけど、返ってきた言葉に反論出来なかったのかそれ以上は何も言わなかった。サークはゆりさんに目立った外傷がない事を確認すると、ナオトに向かって言う。
「おい、お前鼻はどこまで効く」
「ハ? 何でそんな事答えなきゃ……」
「お前だってゆりを街で休ませたいだろうが。今街を探せる一番の手段が、お前の鼻なんだよ」
諭すように言ったサークの視線が、ナオトと交錯する。ナオトは暫くそのままサークを睨み付けてたけど、やがて不承不承といった顔で口を開いた。
「……オレの鼻はトクベツだから、街ならかなり離れてても街の匂いは解る」
「上等だ。ならとにかくその鼻と、あと耳も駆使して何が何でも街の手掛かりを掴め。ゆりを助けたかったらな」
「オレに指図すんな! これはオレがオレの意思で、ゆりの為にやるんだからな! お前に言われたからじゃねーぞ!」
「はいはい」
ゆりさんをきつく抱き締めながら、威嚇するように言うナオト。それを見て、私は思わず声を上げていた。
「待って! その格好であんまりゆりさんに密着したら、ゆりさんまで血塗れになっちゃう!」
「じゃあどうしろって……」
「私が、ゆりさんをおぶってくよ!」
「……アンタが?」
驚いた顔で、ナオトが私を見る。私はそれに、力強く頷き返した。
「私とゆりさんなら女同士だし。それに私、結構力あるんだよ」
「……でも」
「ナオトがゆりさんを凄く大事にしてるのは解る。でも今だけは私達を信じて、ゆりさんを預けて。絶対に、ゆりさんの事は守り抜くから」
願いを込めて、ナオトの目を真っ直ぐに見つめる。そして。
「……アンタと話してると、ホント、調子狂う。ゆりじゃないのにゆりみたいで」
「そうなの?」
「ああもう! 言っとくけど、ゆりにケガさせたら許さねーからな!」
少し顔を赤くして叫びながら、ナオトはゆりさんを私に託してくれたのだった。
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