《ゆりせんせいは猫耳サイテー勇者を教育します!×星空の小夜曲》第6話 これにて全員集合……かな?
正直、状況が全く解らない。
物凄い速さでナオトが駆け出していって、足の痛みを堪えながら何とか走って、やっと追い付いたと思ったらこの状況。訳が解らない。
サークが無事だったのは嬉しいけど何だか曲刀も抜いて殺気バリバリだし、その正面ではナオトがやっぱり殺気バリバリでサークを睨み付けてるし、サークの側にはパジャマ姿の可愛い女の人がいるし……。
解らない事だらけだけど、一つだけハッキリしてる事は……。
「テメェ、ゆりから離れろよ……!」
「人に化ける魔物か……どんな姿になろうがやる事は変わらないがな!」
この二人……今すぐ止めないと絶対不味い!
「待って、サー……」
「こらっ、ナオト!」
「っ!?」
私が口を開きかけた、その時だった。サークの側にいた女の人が、毅然とした様子で声を張り上げたのは。
「駄目でしょ、初対面の人にそんな態度取っちゃ? それにあれはナオトが悪いわよ、知らない人が見たら私がナオトに襲われてるように見えるでしょ」
「えー、だって、ゆりの匂い嗅いでたら勃ってきたからさー?」
するとさっきまでの殺気はどこへやら、実にとぼけた調子でナオトが答える。ん? あの二人知り合いなの?
サークを見ると、同じく何が起こってるのか理解出来ていない顔で曲刀を構えた姿勢のまま固まってる。私の事には、まだ気付いてないみたい。
「この人は、一人で困ってた私を保護して一緒にいてくれただけよ。だから駄目だって言ったのに、それも……獣の姿のままでなんて……」
「挿れてないからセーフでしょ? それより感動の再会の続きを……」
「もう……真面目に話を聞きなさいっ!」
全く反省の色の見えないナオトと、真っ赤になって怒る女の人。サークの事なんか忘れたみたいに言い合う二人に、サークが気まずそうに口を挟んだ。
「あー……ゆり?」
「あっ、サークさん、本当にごめんなさい! ナオトったら私に会えた事が嬉しかったみたいで……悪気はないんです!」
「いや、それはいいんだが、その……彼は君の知り合いか?」
「はい、ナオトと言います」
「ゆりはオレのだから! あー……ゆりの匂い、ゆりの感触……」
頭を下げる女の人と、いつの間にかそんな女の人に抱き着いて匂いを嗅ぎ始めるナオト。サークは何か言う気も失せたみたいで、盛大に溜息を吐くと曲刀を鞘に納めた。
と、とりあえず……。一件落着、でいいのかな?
「あら? ……あなたは?」
その時女の人が、漸く私の存在に気付く。女の人の声に振り向き、こっちを見たサークの顔が……みるみるうちに明るくなった。
「……クーナ! 無事だったんだな!」
「えっ……あ、うん」
サークの思った以上の喜びように、つい戸惑ってしまう。……も、もしかして、すっごく心配させてたのかな?
どうしていいか私が迷ってると、サークが足早にこっちに近付いてきた。そして早口気味に、一気に捲し立てる。
「怪我は? 木の実でも何でもその辺の物を口にしたりしなかったか? ひとまず魔物はいなさそうだが、植物も下手に食うと毒があるかもしれねえからな。何せここは未知の世界だ、どう未知かっつうと」
「ちょちょちょストップ! ストーップ!」
その激流の如く畳み掛けてくる言葉の波に、私は思わず制止の声を上げた。い、いつもならもっと冷静なのに、ホントにどうしちゃったの!?
ふとナオト達の方を見ると、女の人が私達を見てクスクスと笑っていた。な、何だか恥ずかしい……!
「……何だよ」
「とりあえず、一旦落ち着いて! ほら、笑われちゃってる!」
話を中断させられて不満そうにしてたサークだったけど、そう言ってナオト達の方を指差すとバツが悪そうにそっぽを向いてしまった。全く、普段はすっごく大人なのに、時々私より子供っぽくなるんだから!
「何だよ、クーナの言ってたのってアイツかよ」
「え? ナオト、あの子知ってるの?」
「うん。森で見つけて保護したとこ」
「そうだったの……って、ナオト? それじゃああなた、保護した子を置き去りにしてきたの……?」
「いやー、ゆりの匂い嗅いだらもうゆりの事しか考えられなくて……フカコーリョクってヤツ?」
「こらっ! いくら何でもやっていい事と悪い事があるでしょ? これは完全に悪い事よ!」
と思ったら、向こうでもあくまでも悪びれないナオトの態度に、女の人も本気で怒り出したみたいだった。もしかして、あの人がゆりさん……なのかな。何だか大変そうだな……うん。
まぁ、何はともあれ……これで全員集合、でいいのかな?
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