アイテムボックスで魔王城蹂躙偏

アイテムボックスでレヴの取り出し方

 受付嬢がギルド登録した時の人で、数時間前に吹っ飛ばした冒険者のことが頭にあるのか顔が引きつっていた。俺主観でな。

 俺はギルドに魔石を鑑定してもらい、すぐに金を貰うおうとしたが、鑑定に小一時間程掛かり、大抵の冒険者は受付の前で待つより飯を食って待つか明日の朝に報酬を受け取りにくるらしい。

 そんなわけで今はギルドのフードコートで飯を食っている。


 一人さびしくもぐもぐ食べる。周りを見渡すと冒険者同士で賑わっていた。

 パーティーだろうか、5人が和気あいあいに楽しげに料理を食べていたり、一人死んだんだろうかもしくは博打で大負けしたんだろうか、2人がしょんぼりしながら悲しげに酒を飲んでいたり、犬猿の仲だろうか、ちょっとした怒号が飛び交う喧嘩かが始まる所があったりとみんな楽しそうだ。


 いや、別に寂しくはないよ。ホント。


 料理を半分程食べ終わった辺りで後ろから声をかけられた。


「なあ、お前か?数時間前にギルド内で冒険者を吹っ飛ばしたって言う冒険者登録したてのやつは。」


 俺は野太い声に反応し、振り替えるとそこにはゴリラがいた。いや、違う。腕毛や胸毛がものっそい濃い筋肉ダルマのおっさんがいた。俺は飲み物を一口飲み、応える。


「ん、あぁ、吹っ飛ばしたかどうかはさておき、数時間前にトレジャーハンターになるために登録したけど。」


 あれ?吹っ飛ばしたのはレヴじゃなかったっけ?…うん、レヴだ。だから俺じゃない。


「おい、とぼけるな。数時間前に冒険者登録したのはお前とお前の連れしかいない。…で、お前で合ってるってことでいいな。俺はここのギルドマスターのゼレギスだ。冒険者を吹っ飛ばした件について少し話がある。」


 俺は食べかけの料理を指差す。


「飯食ってからでいい?」


「…ああ、構わん。食い終わったら2階の応接室に来い。場所はそれ見りゃわかる。」


 壁に貼ってある案内図を指差しそう言ってゴリラは立ち去った。

 良くあることなのだろうか、フードコート内はギルドマスターがいた時といない時とで喧騒けんそうに違いがない。多少会話の内容は俺の話になってるとこもあるがその程度でしかない。




 ---デザートまで食い終わった後でトイレに行き、個室に入りレヴを取り出した。


 レヴが辺りを見渡し、俺は個室の扉を開け洗面所で手を洗い、トイレを出る。レヴも付いてくる。


「レヴ、ギルドマスターに呼ばれた。レヴがツッコミを入れて吹き飛んだあの冒険者についてらしい。」


 俺は簡潔に用件を述べて応接室に向かう。トイレから出てすぐにレヴがツッコミを入れる。


「なんで男子トイレ!?」


 トイレ内とトイレから出る時に数人の人とすれ違った。レヴを2度見する人がいたり、入口ですれ違った人は一旦トイレから出て男子トイレの標示を確認しに来たりとまぁ、リアクションがそこそこ面白かった。


 ん?なんでこんなことしたって?そりゃあ、アイテムボックスからレヴを取り出すところを見られたくなかったからだ。


 何もない空間からレヴを取り出すのと男子トイレの個室からレヴと一緒に出てくるのでは見られた時の印象がまるで違う。

 前者の方は人気のない所へ行ったり裏路地とかで出せばいいが人の目がどこにあるかわからない。宿屋に戻れば問題ないが、ギルドマスターゴリラのあの聞き方的には宿屋に戻れば変に勘ぐられるだろうし、何よりめんどくさい。

 後者の方は男子トイレの個室を覗き見する人なんてこの世にいないだろうから人の目を気にせず取り出せる。その後にレヴと一緒に個室から出てくるというインパクトを周囲に与えることで『何もない空間から金髪美少女奴隷を取り出す』という過程を忘れさせられる。


 みなさんも想像して欲しい。公衆トイレで用を足している時に男が個室に入り、しばらくしてから金髪美少女と一緒に個室から男が出てきたとしたら、『何もない空間から人を取り出す』というあるはずの過程は考えない思う。それより何をを妄想してしまうだろう。


 レヴを取り出さずにギルドマスターに会えばいいと思うがこれはレヴが吹っ飛ばした冒険者についての話だから俺は律儀にレヴに話をさせるつもりでいる。

 俺は真面目で誠実で義理堅い性格だからな。いや、別に周りの反応を見るためにレヴを出した訳でも話がこじれて面白くなりそうとかじゃないからな。






 


 おいおい、そんな疑いの目で俺を見るなよ…。








「ねぇ、ちょっと。今すれ違った人に変な誤解されてない?ねぇ。」


 レヴが近寄って来て耳打ちしてきた。横目で顔を見たら、恥ずかしいのかちょっと顔を赤くしていた。


「誤解されても良いだろ。てか、誤解された方が好都合だ。」


 理由は上記の通りだ。だが、レヴはそんなことは知らない。小声で慌てふためく。


「へ!?ちょっ。な。こ、こここ好都合ってどゆこと!?」


 いつも通りに俺はレヴの質問には無視して応接室に向かう。

















「ねぇ!だからどーゆーことなんだってば!?」







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