アイテムボックスでヒロイン登場②~ただし、セリフは「…。えっ」しかない~

 昼に目が覚めた。髪がボサボサだ。疲れが良くとれた。洗面所で顔を洗い、頭を水でびちゃびちゃにし、アイテムボックスで乾かす。服を着替えて部屋の鍵をカードキーで閉め、一階に降りる。一応、宿は二泊三日にしてある。宿の1階が飯屋なのでそこで飯を食い、宿を出る。


「さて、街を散策しますか。」


 初めて来た土地だし散策散策。地形把握と店の把握。そして『ある店』で『あるアイテム』か、また無ければそれに近いものがないかを探す。



 メインストリートと思わしき所を練り歩く。適当な店へ入り店内を見て回る。いくつか店を巡った後、裏路地へ入り、人目が無い所で空に行き、俯瞰ふかんして見て別のメインストリートを確認する。を、繰り返している内に目当ての店は見つかった。


「お、あった。…もう、散策はいいだろう。大体の立地はわかったし。さて、『俺の欲しいアイテム』はあるかな?」


 店に入る。内装は全体的に狭く暗い。目の前にカウンターがあり、その上にベルが置いてある。


『御入り用の際はベルを鳴らして下さい』


 そう書いてある紙がカウンターの上にある。


チーン…。


 鳴らすとカウンター奥の黒いカーテンから全ての指にキラキラした宝石の指輪を嵌め、キラキラとしたネックレスをいつくか首にひっさげ、黒をベースにキラキラとした宝石のようなものがりばめられているスーツを着た小太りのおっさんが出てきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御入り用ので?」

 

 カウンターまでやってきたキラキラは手揉みをしながらキラキラした金歯を見せつけてくる。


「ああ、さっそくを見たいんだが…。」


「あのぅ、お客様、どのようなをご所望でございますか?」


「戦闘に使えるのがいい。できれば、魔法も近接もできるやつ。…それと別に夜に使えるやつも欲しいな。まぁ、買うとしたらどっちかなんだが。」


「…ご予算はいかほどでござますでしょうか?」


 俺は肩をすくめ、困り顔で答える。


「俺はこういった店は初めてなんで相場を教えて欲しいな。多少俺からボッタクってもいいからさ。」


「いえいえ、滅相もございません。お客様からボッタクるなんてマネしませんよぉ。相場は…。そうですねぇ。お客様のご要望の前者の方ですと低くて金貨20枚、高いところですと金貨500~800枚程でございます。後者の方ですと金貨10枚~白金貨1.3枚ってところが相場になりますねぇ。」


「ふ~ん、あ、じゃあ、この店で一番高いだといくらすんの?…あ、実はさぁ、俺、…。だから、この店来れたんだよぉ。」


 俺はカウンターに肩肘をつき、もう片方の手でパンパンに膨れている小袋をポケットから取り出し、手のひらの上で『軽く上に投げキャッチ』を数回繰り返す。


ジャラッチャリン…。


 もちろん、ポケットの中にアイテムボックスを出してそっから財布を取り出しただけだ。


「おっほほー、正直ですねぇお客さん。私好きですよぉ、お客さんみたいなお人。…この店一番高くて私イチオシののお値段は…白金貨1.3枚になります。お客さん、両方のご要望が叶うのがこのイチオシになります!」


 キラキラが目をキラキラさせ、興奮した様子でカウンターに前のめりになりながら教えてくれた。


(このキラキラ、『お客様』から『お客さん』に変わったな。)


俺は軽い感じに話し出す。


「そっかぁ~。やっぱ、高いもんはそんぐらいすんのかぁ。…まぁ、今日の予算は金貨200枚くらいで。さっき俺が要望した見せてくれる?」


「あー、はいはい、では、こちらへどうぞぉ。」


 キラキラはキラキラしたハンカチで額の汗を拭きながら俺をカウンター脇の扉へ案内する。キラキラが扉を開け、俺は中へ入る。


「お客様、では、こちらへお掛けください。」


 俺が赤いソファーに腰掛けるまでの間にキラキラは部屋にいたメイド服の女性にお茶を持ってくるよう促した。


「お客様、それではわたくしはご要望のをお持ち致しますので少々お待ちください。只今ただいまメイドにお茶を用意させておりますので、お待ちのあいだ、『メイド』と『お茶』をお楽しみ下さいませ。では、失礼します。」


 キラキラはキラキラした扉を開け中へ入って行った。


(ん?『メイド』と『お茶』?どういうことだ?)


 キラキラがキラキラした扉へ消えた後、すぐに入れ替わりのようなタイミングでさっきとは違うおっぱいの大きいメイドがお茶を乗せたカートを押してきた。胸元にネームプレートのようなものがある。『330』と書いてあった。


「お客さま、お茶をお持ち致しました。すぐご用意致します。」


 目の前でティーポットからカップへ紅茶が注がれる。


「アールレイでございます。ミルクはこちらになります。ご自由にどうぞ。それとこちらと一緒にお召し上がり下さい。」


 手際良くテーブルに準備された。クッキーもある。メイドがカートをさりげなく壁際まで運ぶ。俺はさっそくクッキーを食べる。


サクサクサクッ…。


(う、うまい…。程よい甘さだ。)


 口の中がモソモソしてきて紅茶が飲みたくなる。


コクッコクッ。


(少し強い渋みとコクがある。このクッキーと良く合うなぁ。でも、俺もうちょっとまろやかな味がいいからミルクいーれよーと。)


 紅茶にミルクを注ぎ、スプーンでかき混ぜ一口。


コクリッ。


 俺はクッキーを1枚手に取り、口に入れる。そしてモソモソし、紅茶を一口。


 …。俺はクッキーを1枚手に取り、口に入れる。そしてモソモソし、紅茶を一口。


…。…。俺は…。









 気づいたら無くなっていた。誰だ!食ったやつ!あ、俺か…。


「こちらお手拭きになります。」


メイドがおしぼりを渡してきた。 


「お茶のお代わりはいかが致しますか?」


「あ、お願いします。」


「はい、承りました。少々お待ちください。」


 俺は手を拭きながら即答した。メイドがカートを再び持ってきてお茶の用意し、紅茶を注いだカップをテーブルの上に置く。俺は紅茶をすすり始めたところでこんなことを言ってきた。














「おっぱい揉みますか?」



ブフーッ。


 俺は紅茶を吹き出した。むせながらもおしぼりでソファーを拭いて謝罪する。


「ごぼっ、ごほ、す、すみません。ソファーを汚してしまい…。」


「いえいえ、良く吹き出す人が多いんで汚れが目立たないよう、『赤い』ソファーなんでお気になさらずに。」


(そうか。そのために『赤』なのか。っていうか、確信犯だろ。このメイド。)


 苦笑いを浮かべながら居直いなおす。


「で、えっと…。さっきのはどういう意味で?」


(まさか、客の口から紅茶を吹き出させるためのただのジョークとかないよな?)


「はい、冗談ではなく、本当にいいですよ。…ただし、私をする気があれば。ですけれど。」




 ああ、そういえば、読者の皆さまには言い忘れていたな。うすうす気づいているとは思うがここは奴隷商だ。


(恐らくだが、このメイドのネームプレートのようなものに『330』という数字は金貨330枚って意味か。あのキラキラ、俺の予算が200と言って、1.5倍のやつ置いて行きやがった。俺が「この子欲しい」と言えばあのキラキラが食いつき、「サービスです」とか何とか言って結局値段は『300』にして、俺に売りつけそう。)


「ああ、なら、注文した商品を選んでからにするよ。」


 俺は視線を反らし、手を軽く振る。そして、気を落ち着かせるため、紅茶を口に入れる。


「今なら買う気が無くてもサービスで『タダ』、でいいですよ。ほら。」


 メイドが耳元でささやき誘惑する。メイドが俺の手を取る。


ゴクリッ。


 紅茶を飲み込む。そしてメイドがその俺の手をメイドの胸元にーーー。









ガチャ。



「いやぁ、大変長らくお待たせ致しましたぁ。お待ちの間、退屈致しませんでしたか?」


(キーラーキーラアァー!)


 俺は愛想笑いを浮かべ、メイドの手から俺の手を離し、『何でもないですよ』みたいに手を振る。


「え、ええ、大変楽しませていただきましたよ。」


「お気に召して頂いたようで私はうれしゅうございます。…それでは、お待ちかねの商品でございます。」


 キラキラは汚ないキラキラした笑みを浮かべていた。


(確信犯か。こいつも。)


パン、パンッ。


 キラキラが手を叩く。すると扉から順に奴隷が入ってきた。全員が入ってくる間にキラキラが俺のトイメンのソファーに座る。


「それでは左から順にご説明致しましょう。」


 そう言い、キラキラは商品の説明をし始めた。まぁ、ざっくり言うと『俺の要望した商品からちょっと欠陥があるものは俺の予算内で済み』、『俺の要望通り、あるいは要望以上の商品は予算を少し超えるもの』を紹介した。そして、最後に…。


パン、パンッ。


「最後に私イチオシの商品をご紹介致します。」


 キラキラが再び手を2回叩く。すると、金髪のエルフと思われる美少女が入ってきた。胸は普通だ。


「彼女はご覧の通り、エルフでございます。彼女はエルフ国で大罪を犯し、追放され、このアーヴァルズ王国へ奴隷として売られたのです。…で・す・の・で!『エルフ協定』に違犯しない珍しいエルフでございます。」


 キラキラが更にキラキラ目を輝かせ、体が前のめりになり、話を続けた。


「そして!お客様のご要望の叶えられるのが!彼女でございます!」


 キラキラが目をギラギラさせ、更に俺に近づき、話をまくし立てる。


「剣術もさることながら、魔力が高く、高レベルの魔法が扱えます!そ・し・て!…この美貌びぼう、夜の方もご自由に使えます。」


 最終的に俺の耳元まで来て最後のセリフを小声で言う。キラキラは俺から離れ、ソファーに座り直す。俺はまじまじと彼女を見る。


「ほーーーう、そいつぁいいねぇ。…あ、高レベルの魔法が使えるって言ってたけどさぁ、『奴隷の首輪』は解除される心配はないの?ほら、俺、初めて買うからさぁ、『奴隷の首輪』の効果とかあんましわかんないし、信用していいもんかぶっちゃけ、知らないだよ。」


 俺は膝の上で手を組み、若干前屈みになる。キラキラはどこからともなく取り出したキラキラの扇子を広げ、軽く口元であおぐ。


「ほっ、ほっ、ほ、そうご心配なさらずに。まず、奴隷との主従契約方法についてお話し致しましょう。その方が分かりやすいと思いますので。」


 キラキラはキラキラの扇子を閉じ、その扇子と手でジェスチャー混じりで説明をする。


「まずは『奴隷の首輪』に主人の登録をしていただきます。登録方法は主人のかたの血を数滴程染み込ませればいいだけです。次にその『奴隷の首輪』を奴隷にしたい相手にかけるだけ。『奴隷の首輪』の効果は『主人に歯向かえない』・『主人の命令に従う』です。この歯向かえないというのは主人に害を与えることができないと言う意味でございます。」


 キラキラがまた前のめりになる。


「そしてお気になさっていた解除というものですが、この『奴隷の首輪』を無理矢理外すしたり、解除しようと魔法をかけますと、『強烈で特殊な呪い』がかかります。その呪いの内容は『主人に絶対服従』というもので、呪い自体が奴隷の魂と肉体に溶け込み、混ざり合うという、どんな高レベル解呪師でも解呪不可能な呪いになります。この呪いの『主人に絶対服従』というのは主人が『呼吸せよ』と命令しなければ呼吸することもできない程、強力なものでございます。ですので、まず、『奴隷の首輪』は外そうとは思わないでしょう。」


 俺はソファーにもたれ掛かる。目線はエルフの奴隷に向ける。


「へー、なら安心できるなぁ。その首輪、今新品の現物ある?」


「ええ、もちろん、ございますとも。」


パン、パンッ。


 キラキラは目線をメイドに向け、二回手を叩く。


「畏まりました。少々お待ちください。」


 メイドはお辞儀し、部屋を出る。


「お客様ぁ、お客様のお眼鏡にかなった子はいらっしゃいましたかぁ?」


 キラキラはキラキラした金原を再び見せつけてくる。俺の目線は金髪エルフだ。


「あー、うん、いると言えばいるかなぁ。…でも、予算オーバーだしなぁ。」


 俺は目を瞑り、腕を組む。キラキラはすかさず、値引きしてくる。


「お客様ぁ、あのエルフを今!ご購入いただけるなら、なんと、白金貨1枚と金貨250枚にまけますよぉー。今、お手元に無ければ、ご検討だけでもよろしいですよぉ。」


「…白金貨1枚。」


 俺はピクリと動いてから小声で値段交渉する。


「白金貨1枚と金貨230枚。」


「…白金貨1枚と金貨50…。」



(以下省略)



「白金貨1枚と金貨175枚。こちらでよろいしいですね?」


「…検討させてくれ。今、手持ちがないんだ。」


 俺は困り顔で話し、続けて顔を伏せ小声で一人言を言う。


「…あれを売ればいけるか?」


「もし、資金を質屋で増やしたいのであれば他より高額で買い取ってくれる私の知り合いのお店がございます。ご紹介致しましょうか?私の紹介ともなればボッタクられるご心配もなく、多少、色を付けて下さると思いますよぉ。」


 誘惑してくる。すると、コンコン。と扉からノック音がする。


「入れ」


 キラキラの許可を得て、メイドが入ってくる。『奴隷の首輪』が乗ったカートを押している。


「失礼します。ただいま『奴隷の首輪』をお持ち致しました。」


 メイドがキラキラに『奴隷の首輪』を渡す。メイドが俺のそばに来て白い手袋を差し出してくる。


「お客様ぁ、申し訳ございませんが、こちらの『首輪』を触る際はそちらの手袋をつけてからにお願いします。何分なにぶん『新品』でございますので、そのぉ、何かの拍子ひょうしにお客様の血が付着なさる危険がございますのでぇ。」


 キラキラが俺に手袋をするよう促す。俺は素直に手袋をし、の首輪を触る。


「これが…。そうなのか…。」


 俺はまじまじとの首輪を観察する。外側を見たり、内側を見たり、硬さや厚さを確めてみたり、軽く振ってみたりといろいろする。その間にキラキラはメイドから紙を受け取り、何やら紙に何か書きながら聞いてくる。


「お客様ぁ、如何ですかな?『奴隷の首輪』は?」


「ん、ん~と、思ったより普通の首輪って感じだな。」


「そうでございましょう。見た目や重さはペットなどにする首輪とそう変わりありません。ただ、ペットにする首輪と違い、効果が絶大なものです。」


「へー。」


 そう相槌をうち、俺は綺麗な奴隷の首輪をメイドに渡す。手袋を外し、テーブルの上に置く。姿勢を正し、キラキラに聞いてみる。


「質屋の紹介状が欲しいんだが…。」


「はい、こちらにございます。グリックス商会からだとおっしゃって貰えれば話しはスムーズにいくと思います。」


 キラキラが先程まで書いていた紙を封筒にしまい、手渡してくる。ここから質屋までの地図が封筒の下にあった。


「おお、手際がいいですねぇ。ありがとうございます。」


 俺は受け取り、立ち上がる。そして俺はルンルンしながら扉に向かう。キラキラも立ち上がる。扉の近くまで来て振り返り、キラキラに向かって申し訳なさそうに言う。


「あ、もし…届かなければ諦めて来ないかもしれません。か、今度は予算内のを買いにきます。」


「いえいえ、その時はその時で結構です。もし、資金がまとまりましたら、お早めにお越し下さいませ。何せ、私イチオシの商品ですので他のお客様が先にご購入なさる場合がございます。またのお越しを心よりお待ちしております。」


 このやりとりの間にメイドが扉を開けてくれて待っていた。俺が扉を通る際、メイドがお辞儀をし、「またのお越しを。」と送り出してくれた。


 俺は地図を見ながら質屋に向かう。しばらく歩いた所で俺はほくそ笑む。


「ふ、俺の欲しかったものは手に入った。」
































-----『演技』で重要なのは『なりきること』だ。


 例えば、『冒険者が賭け事で一発当てて大金が入り、調子に乗って性奴隷を買いに行く。だが、素直に「性奴隷を買いに来た」とは恥ずかしくて言えないウブで見栄っぱりな冒険者』みたいなキャラに『なりきること』とかだ。




 そこからの会話は上記の通り上手くいく。そして今日、俺が欲しかった『情報』・『の奴隷の首輪』・『質屋の紹介状』…全てが手に入った。上手くいきすぎてニヤケ顔が止まらん。ニヤケ顔のまま質屋に入る。


「いらっしゃいませ。」


「グリックス商会から来たんだが、鑑定をお願いしたい。」


 俺は紹介状を取り出し店員に渡す。店員は丁寧にペーパーカッターで封筒を破り、紹介状を確認する。


「ああー。グリックス商会のダイアモンドさん直執のサインですね。…これはこれはようこそおいで下さいました。こちらへお掛けください。」


(キラキラ…キラキラネームだったのかよ!)


 俺は心の中でツッコミをいれながら席に着く。


「こちらお茶をどうぞ。お品ものはどちらですか?」



 


 そっからは俺はあの戦場で指輪・宝石・なんか高そうなものを鑑定してもらいそのまま売っぱらった。


 そして街中散策中に見つけた飯屋に入る。晩飯だ。料理を食いながら周りに耳を傾ける。


「なあ、おい、知ってっか?ルフス平原の戦争のこと。」

「…ん?あれだろ?もう何週間かしたら夜の連中のやつらも含めて総攻撃を仕掛けるってやつだろ?」

「いや、ちげーって。その情報はもう古いって。」

「んじゃ、なんだよ。」 

「ここだけの話、箝口令かんこうれい敷かれてるやつなんだけどさぁ。」

「なんで箝口令敷かれてるやつお前が視ってんだよ。」

「へへっ、俺の情報を舐めてもらっちゃあ困るなぁ。」

「ったく、毎回毎回どこから来んだよその情報。」

「いやぁ、ソースは教えられねぇなぁ。でさぁ、…ルフス平原の戦争。…終わったらしいぜ。」

「!…な、なんだよ、その情報。ホントか?」

「ああ、なんでも、消滅したらしい。ルフス平原が。」

「…?どういうことだ?」

「いや、正しくはルフス平原にいたやつらが、だ。そこにいた人も魔族も…武器も鎧も血も涙も全て消えたらしい。」

「血も涙もって。…まったく理解できないんだが。つーことはあれか?戦っていたやつら、みな等しく仲良くどこかへとんずらしたってか?」

「そうじゃない、昨日の夜のあの地揺れが関係しているらしい。」

「ああ!あの地揺れか。酷かったもんなぁ、あれ。俺んちの家具ほとんどひっくり返っちまって今日片付けんの大変だったわー。」

「その地揺れの後に戦場から消えたらしい。消滅のルフス平原。今ではそう呼ばれてるらしいぜ。戦場から後方にいた昼間のやつらは巻き込まれなかったみたいだがな。」

「…。」

「-----。---…。」




 観葉植物で仕切られた隣の席の冒険者っぽいやつらの会話を食事をしながら盗み聞いた。店に入る前にこの食事前の2人を店の外から見て、この席に座った。こういうことができる店を昼間の内に見つけといて良かった。


(そうか、俺のお陰で戦争終わったか。これで思ったより自由に動けそうだな。)


 食事を終えた俺は宿に戻り、シャワーを浴びる。そしてベッドの上に寝転がる。


(さて、さっそく装備させますか。)


 俺はアイテムボックス一覧を出す。アイテム名『レヴ・ヘルマイン』を選択。『の奴隷の首輪』を『装備させる』。








 『奴隷の首輪』はあの戦場で回収したから『奴隷』がこの世界にいることもこの『首輪』のことも、そして『首輪の簡単な情報』も知っていた。


 だが、『正確な契約方法』と『首輪の入手方法』はわからなかった。ゆえに、聞くしかなかった。盗れるタイミングで盗るしかなかった。


 盗るまでの過程のためにキャラを演じた。上手くいった。紅茶とクッキーは旨かった。



 そしてアイテムボックス一覧から所持しているキャラの装備変更を行う。


 






 俺はベッドから起き上がり、ベッドに座る。せっかくなんで、挨拶する。『奴隷の首輪を装備したレヴ・ヘルマイン』を取り出した。


「今日から俺はお前のご主人さまだ。よろしくな、レヴ。」


「…。えっ」






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