第24話 これで、ストレス発散

「イテテ……あの魔法使うと、体中が痛ぇんだよな」

 部屋に入ると、俺はベッドまでもたず、そのまま床に伸びた。

「だろうね。そうでもなかったら、自分で封印なんかしないもんね」

 相棒は苦笑して、俺に回復魔法を掛けてくれた。

「命がけだぜ。これ以上の負荷は体がもたねぇってのに、効かねぇ上に吸収しやがったぜ。アイツに魔力をくれてやったもんだ。どうなってんだかな」

 俺は苦笑した。

「さて、あんなのみた事ないよ。コーベットにしたら、堪ったもんじゃないって感じ?」

 相棒が笑った。

「全くだ。こんなところで、絶対勝てねぇヤツに出遭っちまったんだからな。まあ、自分が一番強いなんて思っちゃいないがな!!」

 俺は苦笑した。

「まあ、もうどこにいったか分からないし、変なモノがいたくらいでいいんじゃない。魔王なんていうから、ネチネチ悪巧みでもしてるかと思ったら、全然暇つぶしに遊んでるだけじゃん。大した事じゃないって」

「……それがムカつくんだよ。こっちはガチでやってるのによ」

 俺はため息を吐いた。

「まあ、その気になれば、僕たちなんて一瞬で全滅させられたんだよ。それが先だと思うけどな。まあ、気に入らないだろうけど」

 相棒が笑った。

「分かってるねぇ。気に食わん!!」

 俺は笑った。

「はいはい、しばらく動けないでしょ。じっとしてなよ」

 相棒は俺にもう一度回復魔法をかけ、部屋から出ていった。

「ったく、アイツだってイライラしてるのによ。はぁ、なんか新魔法考えるかな……」

 俺は小さく笑った。


 結局、俺が動けるようになったのは、昼近くになってからだった。

「なに、もう大丈夫なの?」

 相棒が聞いてきた。

「ああ、大丈夫だ。まだちょっと痛むが、普通にしてれば問題ねぇ」

「それじゃ、一階に降りようか。もうみんな集まって、これからどうしようかってやってたよ」

「俺が最後か。よし、いこう」

 俺と相棒が一階に降りると、皆であーでもないこーでもないやっていた。

「おっ、戦番長がきたぞ!!」

 コリーが笑った。

「な、なんだよ、戦番長って!?」

「うん、まさにその通りだね。戦闘中バリバリ引っ張ってたから」

 相棒が笑った。

「……あれ、俺ってなにやってたっけ?」

「コーベットの指示を聞いてれば大丈夫って、みんな思っていましたので、怖くはなかったですよ」

 ランサーが笑みを浮かべた。

「……つい、やっちまってた記憶はあるな。うん」

「コーベットは戦闘になると本気だからね。いうこと聞いて損はないよ」

 相棒が小さく笑った。

「おいこら、戦闘しか興味ないみてぇにいうな……」

 俺は苦笑した。

「さて、どうしますか。もうすぐご飯が届くようですが、食べた後ですね。いずれにしても、明日には私たちが住む街に帰ります」

 ランサーが笑みを浮かべた。

「観光するんじゃねぇのか?」

「それでは、昼ご飯の後ですが、色々食べながら街を回ってみましょう。ここは、お城以外特に目立ったものはないのです」

「おお、それいいね。コーベットもムスタも知らない食べ物が多いし」

 コリーが笑った。

「王都にくると太るのはこれが原因なんだよね。まあ、いいけど」

 ケニーが苦笑したとき、ちょうどメシが届いた。

「さて、とりあえず食べましょうか」

 こうして、俺たちはとりあえず昼メシを食った。


 メシが終わると、俺たちは観光と称した食べ歩きの旅に出た。

 路地から表通りに出ると、目眩がするほどの人で溢れかえり、さすがはこの国の中心という感じだった。

「はぐれないように、こうしよう」

 ケニーが相棒を抱きかかえた。

「ああ、そうだね。私もやろう」

 コリーが俺を抱きかかえた。

「い、いいけどよ。急に猫扱いされると、なんか微妙だぜ……」

 俺は苦笑した。

「単にはぐれないようにしてるだけだよ。あんな魔法使えるんだもん、猫扱いしろっていわれる方が困るよ」

 コリーが笑った。

「さて、屋台を片っ端からいきますよ」

 ランサーが笑い、通りの屋台で売っている食い物を片っ端から買い始めた。

「酒とこれが、ランサーのストレス発散か」

 俺は小さく笑った。


 屋台をハシゴしての買い食いが終わり再び宿に戻ってくると、俺たちはそれぞれの部屋に引っ込んだ。

「王都は賑やかでいいが、人が多すぎて俺にはキツいぜ」

「うん、僕もキツかったよ。賑やか過ぎるね」

 俺と相棒は笑った。

「まあ、途中で城をじっくり見られたのはよかったけどな。デカいぜ!!」

「あそこに国王様は住んでいるんだよね。スケールが大きいや」

 俺は笑みを浮かべた。

「あんなデカい家はいらねぇな。困っちまうぜ!!」

「うん、何事も程々にだよ」

 相棒が小さく笑った。

「さてと、悪いが寝かせてもらうぜ。人のせいで目眩がよ」

「うん、いいよ。ゆっくり休んで」

 相棒が部屋の出入り口に立った事を確認してから、俺はそっと目を閉じたのだった。

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