第51話 麦の宮公園でのピクニック
サンドイッチに手を伸ばそうとした僕たちに、
それによると……予想通り、学校はそれこそ蜂の巣をつついたような大騒ぎになっているらしく、今戻るのはお勧めできないとのことであった。
そのため学校の近くにある、
「あの公園に行くのであれば、サンドイッチは包んで持っていき、そのままピクニック状態でいいかもしれないな」
堅物の
僕たちもまだ食べていないので、オリビアに許可をとることにした。
「もちろん、いいですよ! パックに包んで、食べやすいようにしますね」
オリビアの許可もあり、僕達は公園に向かうことになった。
「あ~。俺とチカは、家で留守番している。チカにきちんとご飯を食べさせないといけないし」
カイムは、家に残ることを選んだようだ。
「カイムが家にいるのであれば、安心できますね。私もたまには外で食事をとることにします」
オリビアも一緒についていくことになった。
……ただ、サンドイッチが入ったバスケットを持っているのはいいとして、格好がメイド服のままなのだけれども……。
「まあ、舞先生はお嬢さまだからな。そのお付きのメイドだと考えれば、有りかもしれん」
守先生が諦めたように、服装に関して許可を出した。
麦の宮公園は
休日は子供たちでにぎわう場所であるが、平日の今日は比較的静かな感じだ。
「みんな、こっちこっち~!! ……あれ? 見慣れない顔があるわね」
舞先生が先にビニールシートを広げて、場所取りをしていた。
飲み物もいくつか並んでいて……その中にはアルコールが入ったものも見受けられる。
どうやら今日はもう、そのまま学校に行かずに帰るつもりのようだ。
「初めまして、お嬢さま……メイドなのでこれがお約束、ですよね?」
オリビアがおどける。
その後正式に自己紹介を行い、みんなで昼食をとることになった。
「いや~、それにしても
舞先生が痛快そうな顔で、僕達に告げた。
以前出撃を邪魔されたことがあったため、腹を立てていたことがあったが……今回で完全に
「まあ、自業自得という言葉がこれほど似合うことはないだろうな――うむ。猿渡の不幸でメシがうまい!」
「メシではなく、パンだけどな……いや、旨いのは間違いないぜ!」
ここまで誰も擁護するようなことを言わないのだから、いかに教頭が嫌われていたかがよく分かるというものだ。
「にゃ。あんなやつのことはどうでもいい。それよりも目の前のジャムサンドを食べるべし、食べるべし」
みかんが甘いサンドイッチを、次々と手に取る。
「デザートも兼ねていますので、せめて一人一個は残るように食べてくださいね」
オリビアが慌てて、くぎを刺した。
「おや? 珍しいところで、出会いますね。いったい何をしているのですか?」
一緒に
その中に色とりどりのスパイスが入っていることから、学園祭の材料を買ったのかな? と、推測できるけれども……。
「学校でちょっとトラブルがあって、避難しているの。あなたたちは……荷物持ちの男の子、いなかったの?」
舞先生が二人に問いかける。
「今回は練習を兼ねて、家で作る材料だけを購入したのです。結局スパイスは2種類増やして、8種類で作ることにしました」
咲ちゃんがそれに答えた。
「スパイスを8種類……一体何ができるんだ?」
舞先生と守先生は、彼女たちが何を作るのか知らないため、首をかしげている。
咲ちゃんがスパイスからカレーを作ることを説明すると、僕達同様驚きの表情を見せた。
「なあ、それってそんなに簡単にできるものなのか……俺たちもぜひ、見に行かせてもらいたいのだが、いいか?」
まあ、カレー粉から作るのならまだしも、スパイスからとなれば守先生のこの反応も、納得できる。
咲ちゃんと奏さんは快諾し、今週末が文化祭であることを告げた。
「良かったぜ。舞も俺も、その日はオフだ」
学校の先生は忙しいので、予定の調整が難しい。
どうやら今回行くことに、支障はないようだ。
「模擬店で、どこが一番人気なのかの投票も行います。できれば清き一票をお願いします」
咲ちゃんがさらに説明を加えるが……おそらくこのクラスが、ぶっちぎりになるであろう姿が容易に想像できる。
今日実習であった不幸なことは忘れることにして、今週末を楽しみに待つことにしよう!
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