第40話 運動会 第四戦 みかんVS実

 次は、みかんちゃんとみのるの試合だ。


 どちらも遠距離攻撃を得意とするタイプであるが、みかんちゃんは純遠距離タイプであるのに対し、実は近接戦も得意としている。


 運動場の狭さを考えると、実の方が有利であると言えるのだが……。





「みゃ、負けないにゃ……結城ゆうき久朗くろうの同人誌を作るまでは、死ぬわけにはいかないのにゃ!」





 動機はともかく、モチベーションは十分なようだ。


 ……あと、模擬戦用のステージなので、絶対に死ぬことはないはずだけれども……。





 二人の機体が、通常よりも少し離れた位置で対峙する。





「それでは第四試合、南野みなみのみかん対佐藤実さとうみのるを開始します」


 アナウンスが流れ、試合開始のピストルが鳴り響いた。





 実の機体『シャサール』が二丁拳銃を構え、牽制の攻撃を連発する。


 みかんの機体『トゥルケーゼ』は機動性が低めであるため、次々にヒットするのだが……装甲が厚いため、それほどのダメージにはなっていないようだ。





「反撃するにゃ!」





 腕部に構えられたバズーカから、大型の弾丸が打ち出される。


 実も回避しようとするのだが……その方向にはすでに、ガトリング・ドローンが展開されていた。





「いらっしゃいませ、にゃ!」





 ガトリング・ドローンの連続攻撃が、実にヒットする。


 実は自ら、罠に飛び込んでしまった形になってしまったようだ。


 慌てて離脱する実だが、ドローンは執拗に追いかけ、攻撃を加える。





「くそっ、まずはこちらからどうにかしないとな」


 実が拳銃をドローンに向けて、連続攻撃で撃破していく。





「動きが止まっている……ちゃ~んす、にゃ!」





 更にみかんの追撃で、ドリルビットが実の頭上から襲い掛かる。


 慌てて実が回避しようとするが、ややホーミング性能があるビットが機体を掠め、大きく削られたような跡をつける。


 直接的なダメージこそなかったものの、相当焦りを感じさせられたはずだ。





「遠距離での打ち合いは、とにかく不利だな。一気に飛び込む!」





 実が一気に距離を縮める方向で動き出した。


 ドローンやビットの攻撃をある程度無視してでも、距離を詰めるのが先だと判断したようである。





「にゃ! 接近戦はあまり得意ではないのにゃ!」





 今度はみかんが焦る番だ。


 近づかれてしまうと……。





「行くぞ! 必殺『リベリオン』!!」





 格闘から二丁拳銃の乱射に繋げる、乱舞系の必殺技がみかんを襲う。


 装甲が厚いみかんのトゥルケーゼであるが、さすがにこの攻撃は効いたようで、かなり大きなダメージを受けてしまったようだ。





「距離を離すにゃ……必殺『ショットガン・レジェンド』!」





 みかんが武器を変更し、二丁のショットガンを構えた形状に変身する。


 それを次々とぶっぱなし、実の機体に散弾が叩き込まれる。





「嘘だろ! 近接戦でも、こんな技があるのかよ!」





 たまらず距離をとる実。


 そこに、みかんのガトリング・ドローンが襲い掛かる!





「もう容赦はしない! 徹底的に近接戦で、とどめを刺す!」





 実がダメージ覚悟で、一気にみかんとの距離を詰める。


 ショットガンが機体を掠めるが、完全に無視しているようだ。





「にゃ、まずいにゃあ~!」





 そこまで覚悟を決めた突撃は、みかんも想定していなかったようだ。


 距離を詰められてしまい、実の格闘が突き刺さる。





「決まれ! 奥義『浄火の紋章』!!」





 実の奥義が、みかんに叩き込まれる。


 二丁拳銃と格闘によって、みるみるうちにみかんの機体の装甲が削られていく。





「こうなったら、一か八かにゃ!」





 みかんの方も、覚悟を決めたようだ。





「ドリルビット、水平射出!」





 ドリルビットを自分の機体の方向に向けて、突撃させる。


 その間には当然、実の機体があり……後方からの攻撃に対応しきれず、まともに突き刺さってしまった。





「『ショットガンレジェンド=SスラッグSスタイル』!」





 みかんのショットガンから、散弾ではなく大型の弾丸が発射される。


 たまらず吹き飛ばされ、みかんと実との距離が離された。 





「これで決めるにゃ! 奥義『ガンパレード・ロンド』!」





 みかんが新たな必殺技を放つ。


 ガトリング・ドローンで動きを封じるところまではガンパレード・ダンスと同じであるが、更に上部からはドリルビットが加わり、一層動きを封じる効果が高まっている。





「バズーカ、発射!」


 動きを封じたところに、バズーカの直撃で更なるダメージを与える。





「まだ行くにゃ!」





 更に上部に向けて、巨大なミサイルを発射した。


 その上で距離を詰め、ショットガンと肩のミサイルランチャーを連射し、完全に相手の動きを封じる。





「た~まや~!!」





 巨大なミサイルが、動けなくなっていた実に直撃し、大爆発が起きる。


 爆風が消えた後には、崩れ落ちる実の機体の姿だけが残っていた。





「勝者、南野みかん!」





 これで一年生が、三勝一敗。


 なんと僕たちの方の勝利が、確定してしまった! 





「やったわね! 後は結城の試合だけ……少し気が楽になったでしょ?」





 舞先生が僕たちに笑いかける。


 いよいよ僕の出番……少し緊張するけれども、精一杯頑張ってやってみよう! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る