破壊兵器ジフォード

南雲 皋

隠されたダンジョンの入り口

『ヒューズ! 後ろ!』

 

 放たれた無数の弾丸が光の筋となってヒューズの機体を襲った。

 ノキシーからの声でその攻撃に気付いたヒューズは、咄嗟に近くに転がっていた敵機の残骸を盾代わりにする。

 先ほどヒューズが倒したばかりのその敵機は他の機体と比べて防御力が高く、倒すのに時間がかかった物だった。

 既にヒューズからの攻撃でそれなりに破損していた機体だったが、盾としては機能するレベルの耐久性能を備えていた。


(持って帰りたかったな)


 盾にした機体が壊れる前に、ヒューズは近くの岩陰に身を隠した。

 ようやく一息吐いて確認すると、元敵機だった物は再利用不可能なほどに損傷しており、思わず溜息を吐く。ヒューズは自分の機体には損傷がないことを確認してから、索敵用ドローンを飛ばし狙撃手を探した。


 ノキシーは少し離れた場所で別の機体と戦闘に入っていた。

 彼女の装備する遠距離武器を当てにしていたヒューズは舌打ちをして周囲に転がる残骸を見る。もしまだ使えそうな遠距離武器があれば拝借するつもりだった。

 ヒューズの扱う機体は接近戦特化型である。

 遠距離武器は積んでおらず、攻撃力の高い両手剣のみを装備していた。

 限界まで軽量化された機体は、他の機体よりはるかに素早い行動を可能にしていて、両手剣に似合わぬ速さで繰り出す重い剣撃がヒューズの最大の武器だった。


 ヒューズたちはジフォード乗りと称される流れ者である。

 ジフォードとは機械のパーツを組み合わせて作られた破壊兵器のことを指す。

 ジフォード乗りは単独でダンジョン攻略をすることもあれば、今のヒューズたちのように複数人でグループを組んで行動することもある。


 ダンジョンは操縦士なしで自動運転する野良が作り上げた城砦であり、中には勿論、大量の野良が跋扈していた。

 野良は大抵、機体の見える部分に核コアを備えており、それを破壊することで機能を停止させることが出来る。

 ジフォード乗りは大抵の場合、パーツに傷を付けないように核を破壊し、野良のパーツを自身のジフォードに付け替えたり、パーツを資金源にしたりするのだった。


 今のヒューズは街のギルドで依頼を受けている状態だった。

 ギルドで出会い今回のパートナーとなったノキシーと共に、野良によって最近新しく建造されたダンジョンの入り口を探しにきたのである。

 入り口を見付けるだけで五千ジル(五千ジルあれば最高級パーツが一つ買える)という破格の依頼だった。

 ただ、そんな美味しい話はそうそう転がっていない訳で。

 他のダンジョンであればそれなりに深い階層にいるような野良がその辺をウロウロしているようなところへ来てしまったのである。


 噂では野良が入り口を守っているという話なのだが、その入り口は一向に見えない。

 索敵用ドローンから送られてくる映像を、コックピットのサブ画面で確認する。

 狙撃手はどこへ隠れたのだろう。

 狙撃手を見付けられれば入り口も見付かるような、そんな漠然とした予感がヒューズの中にあった。


 瞬間、映像の端で何かがキラリと光った。

 ズームしていくと、ちょうど機体が一体収まるほどの岩山の窪みに野良がいるのが見えた。野良の構えている武器を見た瞬間、ヒューズの血の気が引いていく。

 狙撃手が構えていたのは、魔石を動力とした高威力のサブマシンガンだった。

 動力が魔石であることにより弾切れが起こらず、ほぼ無限に遠距離から射撃を続けていられる代物であった。

 一般市場に出回ることは殆どなく、ヒューズも実物を見たことは片手で数える程しかない。


(このダンジョン、ヤバすぎだろ?!)


 俺は煙幕を辺りに張ってからノキシーと距離を取り、脚パーツのジェットエンジンを起動させて、狙撃手の上空を目指した。

 なんとか気付かれずに狙撃手を視界に収めた俺は、ジェットエンジンを停止し、自重で狙撃手へ向かって落ちていった。

 両手剣の刃を下に向けて構え、そのままサブマシンガンの銃口を地面に叩きつけるように落下した。

 ヒューズのその攻撃で発射状態になったらしいサブマシンガンが、岩肌を削っていく。弾が自身に当たらないようにしつつ、敵機が腰に装備していたハンドガンを奪い、左肩にあった核に向かって撃ち込んだ。

 野良自体の動きが停止し、俺はサブマシンガンを握る腕をなんとか引き剥がす。

 弾を止めた頃には、岩肌にぽかりと口を開けたダンジョンの入り口が姿を現していた。


「ノキシー、見付けた。入り口だ」

『ホント?! やったー!』

「写真撮ってそっちに戻る。さっさと帰って旨いモン食おうぜ」

『賛成』

「ヤバい武器も見付けたんだ。多分死ぬほど喜ぶぞ、お前」

『何ソレ。まさか魔石関係?』

「どっかにドローン飛ばしてんじゃないだろうな。ビンゴだよ」

『まぁじで?! ホントに何なのこのダンジョン』

「分からん。あんまり近付きたくはないな」

『ハイリターンではあるけどね』

「あいにく俺はそんなに命知らずじゃないんだ」


 俺がドローンで入り口を撮影すると、ダンジョンの奥が一瞬、光ったように見えた。

 確かめるようにもう一度撮ったが、光らない。

 ヒューズは首を傾げながらも、狙撃手の腕からサブマシンガンをもぎ取り、ギルドへ向かって帰還するのだった。

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