仕方なくないゼリー

「仕方のないことなのよ」

 机の前に座ったDが呟く。ゼリーを食べていたBはその方向にちらっと目を向けたが、すぐに逸らした。

「こんなにつらいなら仕方のないことなの」

 言いながら、Dは目の前に置いた紙に無数の点を打っている。Bはゼリーを食べている。

「宿命なのよ」

 Dは紙に渦巻きを書く。

 Bはゼリーに入った桃を取り出そうとして、スプーンをゼリーに差し込んだ。

「なんのことはない、わたしの宿命だったのよ。こんなにつらいのは」

 そう言って、DはBの方を振り返った。

 Bは桃を丁寧に切り取って口に運ぶ。そして、もぐもぐと噛む。

「あなたもそう思わない?」

「これおいしいな」

「やっぱりそうよね。人はつらさを許容した上で生きていくべきなのよ。つらさを拒むのではなく、受け入れなければならない。つらさもわたし達の一部なのだから」

 一気に言うD。Bは今度は桃をよけてゼリーだけを口に運んだ。

「うん、うまい」

 DはしばらくBを見つめたあと、机に向き直った。

 Bはうまいうまいと言いながらゼリーを食べている。

 雨が降っていた。

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