第78話 どんなホテル?

 清掃バイトが最も嫌がる清掃場所『風呂場』である。

 トイレより嫌なのだ。

 各部屋の小さなシャワールームも不愉快なのに、大浴場など論外‼


 男湯…考えただけで気持ち悪い。

 女湯…汚い、なんなら男湯より汚い。


 月に2~3回は回って来る当番制である。


 足腰も辛いのだ…排水溝、ホント汚い、謎のネバネバ、体毛、触りたくもねぇ‼

 歯ブラシとかカミソリとか置きっ放しにするなバカ共‼

 そして女性はなぜパンティを置いていくのか?

 捨てるならゴミ箱にお願いします。

 忘れてるのか? 臭いから置いてくのか? 謎である。


 ラブホ時代から慣れてるからね、今さら驚かないのさ…

 ゾワッとしたのは、そんなことじゃないんだ…。


「なんか浮いてんな…」

 浴槽にゴミが浮いている。

「後で取るか…」

 排水溝の鉄の蓋を20枚ほどめくって、排水溝の蓋を外してネットを交換する。

「ホント汚ねぇな…」

 ネットに溜まった毛とネバネバ…と黒いナニカ…。

「虫?」

 数百匹の蚊。

「えっ? まさか?」

 浴槽に浮いてるゴミ…ではない。

 全部、蚊である。

「何これ?」

 蚊である。


 ホテルのスタッフが網を持って湯船の蚊を浚う…。

 そして僕に聞く

「どこから入ったんでしょうね? 客が窓開けるんですかね?」

「いや…浴槽上の換気口…アレ動かしっぱなしでしょ、水蒸気が歪んだ排気口に水溜まりになるでしょ、そこに蚊が卵産んで、還った蚊がメスは繁殖後血を吸いにいくけど、オスは死にますから…死骸が湯に浮くってことじゃまいですか? 中の排気管、老朽化してんじゃないですか? 相当、水溜まってると思いますよ」

「あ~……在り得そうですね」

 スタッフがズボンを脱いで湯船に入って網を泳がす。


 排水溝に蚊が貯まるってことは…客が洗面器で掬って流しているわけだ…。


 そんなホテルある?


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