第39話 長い物には巻かれろ

『ピンクサファイア』というバンドを覚えているだろうか?


 ファンでも何でもないのだが…記憶に残っているのだ。

 なぜか?


 某、音楽番組…司会は大御所女優さん。

 気の強い女優さんである。


「ところで、ピンクサファイアって存在するんですか?Kさん?」

 アナウンサーが女優さんに尋ねた。

 宝石には詳しいという前振りからの質問である。

「ありません」

 キッパリと言い切った…。


 ルビーとサファイアは色の差だけである。

 赤以外は全てサファイアとされるわけで、赤とよべない発色のサファイアは存在する。

 あるのだ…ピンクサファイアは存在する。

 バンドの女の子が、いえ…あります…恐る恐る反論する。

 バンドの由来であるピンクサファイアを亡き者にされたのだ…それは無視できなかったのだろう。

「ありません‼」

 キッと睨む女優さん、そして、これだから貧乏人は…的な目で蔑む。

 スタッフが調べたのだろう、アナウンサーが「えっ…ピンクサファイア存在するそうです」

 ホッとするバンドの女の子。

 その横で悔しそうな顔で「あっそう…あるの」

 その後の空気はブラウン管を通して伝わるほどの険悪なままの番組進行。


 私は、ソレを最後にこのバンドをTVで観ていない。


 それは彼女たちの実力だったのか?

 あるいは…その女優の圧力だったのか?


 ただの視聴者の私には解らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る