【炭酸ピーチティー】②

「僕は夢香が大好きだから、ヨルトには渡すつもりはないよ」

 アサトさんが珍しく独占欲丸出し発言をする。珍しい。


「いらねーし」

 あっさり興味ない発言のヨルト。


「ちょっと!! いらないとか私を全否定するのはやめてくれない!!」

 私がムキになってヨルトに絡む。


「だいたいアサトはこいつのどこに魅力を感じているんだ?」

 本当に意地悪発言しかしないヨルトは小学生男子のようだ。


「見ての通り、全てが素晴らしい女性だからね」

 こんなに優しい言葉をかけられたら砂糖のように私は溶けてしまうかもしれない。アサトさんとヨルトは飴とムチのようだ。美少女のミサさんが蚊帳の外になっている不満げな感じが出ていたので、私がミサさんに話題を振ってみる。


「ミサさんは美人だし、やっぱりヨルトは優しいの?」


「とーっても優しいよ、ねぇヨルト」

 ヨルトに寄りかかる。恋人同士の距離だ。見ているこちらが恥ずかしくなりそうだ。ヨルトはミサさんには優しいのか……。ヨルトはまるで天使と悪魔のように二面性を持ち合わせた男なんだな。


「僕たちも仲良しですよね」

 アサトさんがはじめて私の手を握る。

「ラブラブなお兄様と夢香さん」

 ミサさんが私たちを盛り上げようとひとこと放つ。でも、アサトさんって普段こんなに積極的じゃないよね。意地を張っているだけ?


「夢香、今夜、僕の部屋に泊っていかない?」

 アサトさんが意味深発言をする。


「え……?」

 ダメに決まってるのに私は動揺する。


「じゃあミサたちもお泊りしよう」

 ミサさんが便乗してヨルトを誘う。


「何言ってるんだよ」

 ミサの提案に戸惑うヨルト。若干気まずい空気が漂う。


「冗談ですよ、高校生の思いあう異性同士がお泊りなんて不謹慎だからヨルトもだめですよ」

 アサトさんが笑った。本当は笑っていなかったのかもしれない。私はアサトさんの本心を気づけないでいただけなのだ。


「ここでお茶をしたら、僕たちは二人きりでラブラブタイムなので」

 アサトさんが挑発する。今日は何かが変だ。アサトさん少しむきになっているような気がする。


「不謹慎とかいっている傍でなんだよラブラブって」

 ヨルトはいつも通り突っ込みを入れる。


「じゃあ今日はこれで。僕たちは二人っきりで楽しみます」

 アサトさんが立ち上がり、私の手を引いて店を出る。こんなに強引で積極的な人だったかな?


「今日のアサトさん、ちょっと変じゃない?」

 私はいつもの冷静なアサトさんに戻ってほしくて話しかける。

「そうですか?」

 公園で立ち止まって話をする。

「いつも、手をつないだり好きだとか言わないのに、今日に限ってどうして?」

「僕は自信がないんです。夢香の視線の先にヨルトがいると胸がざわつくのです」

 さびしそうなまなざしで私を見つめる。


「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの、ただ話の合う友達という位置づけが心地よくてヨルトのお店に行っていたのは謝ります」

「夢香はヨルトが好きですか?」

「そんなわけないですよ。ありえません」

「きっぱり否定するのですね」

「どこかであなたの心の近くにいるヨルトがうらやましかったのかもしれません、僕らしくもないですよね」


私は、素直に話すことを決意した。アサトさんに申し訳ない気持ちが込み上げてきたから。

「多分アサトさんの言う通りで、いつも私の中にヨルトがいるんです。彼女もいるし、私なんて相手にされていないけれど、一緒にいると心地よくて楽しくて……アサトさんのことは好きですが、ヨルトのほうが多分もっと好きなんです。これ以上嘘はつけません。アサトさん、付き合うという話はなかったことにしてください。私は、アサトさんをはじめてみた時になんて美しい人だと思い、好意を持ちました。しかし、なぜかアサトさんとの間には壁があって心が通わなかったです。アサトさんは完璧すぎて大人ですが、一緒の目線で笑ったりできない。価値観とかそういったものが違うのだと思うのです。本当に私のわがままでごめんなさい。もう、お店のお手伝いも辞めます。さようなら」


 私は、一方的にアサトさんに別れを告げた。多分いつか言おうときっかけを伺っていたのだと思う。私の中ではヨルトといる時間が楽しくて大好きだという確信があって、これ以上作り笑いをしたくなかったのだ。



 アサトさんは美しい男性だからいくらでも代わりになる女性はいるだろう。ヨルトには彼女がいるし、振り向いてもらえないけれど、自分にもアサトさんにも嘘をつきたくない。私は、そのまま振り返らず帰宅した。










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