【青い紅茶 バタフライビーティー】

「こんにちは」

 私は明るい足取りでアンティーク古書店に入る。いつも客がいないので、気兼ねなくヨルトに話すことができた。それに、ヨルトはアサトの情報を欲しがっているので情報を提供するのもここへ来る理由の一つとなった。


「今日はどうだった?」

 ヨルトが店の品物のほこりを取る掃除をしながら語り掛けてきた。

「あいかわらず、アサトさんは完璧でスキがない正義の人だと思う。最近、変な奇妙な男が常連客でいるんだけれど、ぐひひ、っていう変人なの。でも、なんで幻のレストランに来たいときに来ることができるのだろう? 石もないのにね」


「その変人は能力がある特別な人間かもしれないな。アサトは、人の記憶を読み取ることができるし、予知能力も持っているし、料理もうまいから完璧なんだよな」


「ヨルトは?」

「俺は予知能力を生かして占いやっているけれど、その力はアサトよりも強いと思うけどな、能力は持って生まれたものだから強くしたいから強くできるものではないしな、才能みたいなものだな」


「まひるちゃんは?」

「あの子は義理の妹なんだ。父の再婚相手の子供だよ」


「国王は再婚したの?」

「国のために再婚したらしい。でも、まひるは俺らと違ってハーフじゃないから、有望株だな。過去や未来に行く力はまひるが持っているらしいし」


「アサトさんとヨルトはハーフになるのか」

「なんで、アサトにだけさんづけ? 俺も一応年上だぞ」

「だって、なんかヨルトって距離を感じないんだよね。年上という感じがあまりしないというか……」


 それを言ったら、アサトさんは距離があるってことみたい。でも、実際2歳離れていたらやっぱりさんづけだよね。


「ハーフっていうのはどこの国でも生きづらいんだよな。髪の毛の色も日本人とは違うし、偏見や誤解も招きやすくてね。でも、俺は日本人として生きていきたいんだ。だから、時の国で生活することは考えていない」


 意外と苦労人なんだな、時の国とのハーフって。ヨルトは日本が好きなんだ。


「夜の王になれるんだったら、将来的には悪くないんじゃない?」

「あの国は人の記憶の力で動いている国だ。俺はそんな国は滅んで構わないと思っている」


 冷静で強い意志を見せたヨルトの顔は凛としていて、勇ましさがあった。


「やっぱり過去や未来の「もしも」を体験する人は、記憶の代償はあるんだよね。無料っていうことろがおかしいとは思うけどさ。アサトさんは記憶をもらっても顔色一つ変えないの」

「アサトはそういう男だよ。心を読めないように閉ざしているからな。多分、同情なんてあいつにはないぞ、冷酷男だからな」

「でも、おいしい料理を作る人はきっと良い人だよ」

「自分の国が良くなってほしいと思っているから時の国の住人には優しいんだよな、ハーフなのにな」

「じゃあ日本のことはどうでもいいってこと?」

「アサトに聞いてみれば? 俺は日本ラブだけどね」


 そんなことを話しながら、ヨルトが素敵なティーカップを取り出した。

「青い紅茶でも飲んでいく?」

「青い紅茶?」

「バタフライビーって言ってさ、青空とか海みたいにきれいな青色なんだ」


 温かいバタフライビーを奥で用意してヨルトがもってきてくれた。

「きれいな色。本当に青空とか海みたい。そういえばアサトさんがゼリーの材料で以前使っていたような気がする」

「それでは、マジックショーを開催します。この青い紅茶にレモン汁を入れると……」

 得意げにヨルトがレモン汁を絞る、すると――

「紫に変わった!!!」


 私は変色する様子を見るのは初めてで一瞬の変色にときめきを感じていた。


「そう、これは人間の心みたいにあっという間に一瞬で変わるんだよな。これはノンカフェインだし、ハーブティーだから心が落ち着くぞ」

「いただきます」


 酸っぱいので、甘党の私は砂糖を多めに入れて飲んでみた。初めての味だ。


「な、結構いけるだろ?」


 ヨルトが机に突っ伏しながら上目遣いでほほ笑んだ。やっぱりきれいな顔立ちだ。美しい紅茶を目の前に美しい人に見つめられた私は、視線を合わせることもできず、視線はずっと紅茶の中だった。


 まさか、兄弟であんなことが起こるなんて、この時は知らなかったんだ。私の心は平和な時間で幸せだったのに。

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