第25話 伝説の水着回 後編

〜DI市民プール・プールサイド〜

ん?茉莉と猫菜が3人組の男達と話している・・・。知り合いだろうか?いや、それにしては大人っぽい気が・・・。様子を伺ってみるか。

「ねえいいじゃ〜ん。ちょっと遊ぶくらいさ〜。」

「そ〜そ〜。あっちにオモシレー友達もいるしね〜。」

テンプレキターーー!!「水着での個別行動=ナンパフラグ」だとは分かっていた!分かっていたが!・・・ええい!まあいい!起こってしまったものは仕方がない。もう少し様子を伺うとしよう・・・。

「ねー?いいでしょ〜?」

「「だが断る」」

「「「ナニィィィィィィィィィッ!?」」」

「聞こえないんですか?『だが断る』と言ったんです。」

「早く消えて頂戴。私達は行くところがあるの。」

「そんな事言わずに〜。」

「ね?行こ?決定〜。」

「ホラホラ、こっちこっち〜。」

「『消えて』と言っているでしょう?貴方達の耳と頭はロクに機能していないのかしら?」

「嫌ですって!」

「いいから来いっつってんだよ!」

「早くしろ!」

茉莉と猫菜が腕を掴まれる。

「ひひひ・・・肌スベスベじゃねえか・・・。」

「くぅ〜!この胸、早く揉みしだきてぇ・・・あー、もう無理だ!我慢できねぇ!」

男の中の1人が猫菜の胸に左手を伸ばす。

「チィッ!!喰らえ!!」

しかし、その手が猫菜の胸に触れる事は無かった。

俺の手から、すぐそこに落ちていたゴムボールが猛スピードで投げられる。そして1秒もしないうちに、その男の左手へとヒットした。

「あ?何だ?このボール・・・?」

WRYYYYYYYウリィィィィィィィィィ!」

「え・・・」

「おおーっと身体が滑ったァ!!」

「のわーーーっ!?」

そして俺は次の瞬間、全力でその男に向かって突進し、渾身のショルダータックルでプール内へとその男を吹っ飛ばした。

「な、何すんだお前!」

「あ、スンマセーン。この2人、俺の連れなんで、手、どいてくれませんか?」

「ア?何だお前。」

「うるせぇよ。男に用はねーんだ。失せろ。」

「あら、来てくれたのね。私達だけでも何とかできたのだけれど・・・ありがとう。」

「それにしても兄さん、方法は相変わらずだね・・・」

「方法?何の事だ?身体が滑っただけだぞ?」

「「「HA☆HA☆HA☆」」」

俺は男達の顔と茉莉の顔をチラチラと交互に見ながらとぼけてみた。

「は?兄だか何だか知らねーが、俺達はこの2人に用があんだよ。野郎に用なんざ無えっつーの。」

「きしょいんだよ!痛い目見てーのか!?」

セリフから伺える精神年齢がわんぱく小学生とほぼ同レベルで、同じ人間として残念になってくる。コイツらだけ、世紀末を生きているのだろうかと本気で疑えるレベルだ。

「・・・っ!?き、しょい・・・?」俺が男達から浴びせられる罵声を白目で聞き流していると、突如、真横からおぞましい殺気を感じた。

「兄さんが」

「ア?何だ?お前も、お前の兄貴だか何だか知らんがコイツに言ってやれよ。ついてくるなって。」

「兄さんが・・・?おいテメーら・・・。」

茉莉の口調と目つきが変わる。

「な、なあ・・・何かヤバくないか!?」

「あらあら・・・貴方達、茉莉ちゃんのタブーに触れちゃったみたいね。この娘、極度のブラコンなのよ?・・・その極度に愛している兄を貶されたら、ブチギレるのは当然よね。」

「ひ、ひぃ・・・!?」

「いま私の兄さんの事なんつった!」

次の瞬間、茉莉の髪の毛が逆立ち、憤怒の表情が髪で隠れていた横からも露わになる。

「お、落ち着いて!謝るからさ、ね!?」

「あ、用事思い出した!俺達、もう帰らないと・・・」

「逃げようとするんじゃあないッ!!」

「「「ヒィィィ!!」」」

そして、茉莉の貫禄に負けて逃げようとする男達を、茉莉が鬼の形相で追いかける。そのまま、茉莉と男達の姿は屋内へと休憩所の方へと消えていってしまった。・・・茉莉のあんな顔を見たのは初めてだ。アイツ、俺がちょっと貶されるだけであそこまで怒ってくれるなんて・・・。俺がアイツにそれほどまでの恩を売ったことなんてあったか・・・?まあいいや。とにかく追いかけないと・・・。

「猫菜!(テレパシー)」

「ええ。分かっているわ。『誘導千里眼』!(テレパシー)」

ちなみに、「誘導千里眼」とは、文字通り、対象が今、どこにいるかが分かるという、猫菜をはじめとした何体かの神が持つらしいチートパワーの事ある。もっと簡単に説明すると、「GPS位置情報通知システムの上位互換」といったところだろうか。

「見つけた!行きましょう、来兎君!」

「ああ!」

〜DI市民プール・男子便所(茉莉視点)(ナレーション無し)〜

「た、助けてくれぇ・・・」

「男子便所だろうとお構い無しかよ、この娘・・・!」

「ほんっとうにごめん!お前にとって兄貴がそこまで大切な存在だとは思ってなかったんだよ!(モハメド☆平謝り)」

「・・・私の兄さんにケチつけてムカつかせたヤツぁ何モンだろーーーとゆるさねえ!兄さんよりもテメーらの方がデケー竿(意味深な方)を持ってるだとォ?」

「「「そ、そんな事誰も言ってねぇ」」」

「確かに聞いたぞコラーーーーーッ!」

「「「アッー♂」」」

〜DI市民プール・プールサイド〜

「ドゴドゴドゴドドォン!!バゴォン!!」

「「!!?」」

祭りが向かった方から轟音が聞こえる。俺と猫菜は「まさか」と思いながら茉莉を追って、男子トイレへと向かった。しかし、俺達が男子トイレへと到着する前に茉莉が最も近い男子トイレから帰ってきた。

「あれ、茉莉?あのチャラ男軍団ほどうしたんだ?」

「テキトーにあしらったら逃げちゃったよ?」

「・・・マジ?」

「そんなわけ無いでしょう。茉莉ちゃんがブチギレた時の『あしらう』がどれだけのものなのかは、大体想像がつくわ。今頃、男子便所の中は大惨事でしょうね。(テレパシー)」

「ああ・・・やっぱそういう感じだよな・・・(テレパシー)」

そして俺と猫菜はテレパシーで、お互いにうなづいている絵文字を送りあった。

「兄さん!」

「?何だ?」

「何度も言うけど、私は兄さんの事が大好き。だから、兄さんを冗談でも無く貶す人は許さないし、許せない。別に、兄さんが人気者になって欲しいとか、そういう自分勝手な事を思ってるわけじゃないよ。そうじゃなくて・・・。兄さんは、私の大切な家族であり、恩人でもある人だから・・・誰にもバカにされたくないんだ。見苦しいところを見せちゃってごめんね、兄さん。」

「いや、いいんだ。俺のために怒ってくれてありがとう。」

俺は茉莉の頭を撫でる。

「兄さん・・・!ぎゅっ!」

「うわっ!?」

茉莉は、俺に向けて満面の笑みを浮かべたと思うと、思い切り抱きついてきた。

「えへへ・・・大好きです!兄さん!」

「あ、ああ・・・。そりゃ結構なんだけどさ。茉莉サーン?当たってますよー。もしもーし。」

「兄妹だからそういうの気にしてないよ?兄さん、もしかして・・・意識してくれてる?」

「いや、そーゆー事じゃなくて。周りの視線が痛いから。」

そして気がつけば、周りの客からは「リア充爆発しろ」と言わんばかりの鋭い視線が注がれていた。

「ふふっ。見せつけてくれるじゃない。」

それに続いて、猫菜も茶化し始める。

「猫菜テメー!傍観者かっ!傍観者でいるつもりかっ!止めさせろ!一旦、茉莉を引き離せッ!」

「だが断る(キャラ崩壊)」

「ダメだこいつら、早く何とかしないと・・・。」

俺は周りからの痛い視線と、柔らかな茉莉の胸、そして猫菜のジト目を同時に味わいながら、華達が待っていた席へと戻ってきた。

(・・・あの時は散々嫌がったフリをしていましたが、正直、茉莉の胸は満更でも無かったです。ハイ。ホント、スンマセン。)

「しかしだなあ。」

「ええ、そうね。茉莉ちゃん。」

「?どうしたの?兄さん。」

「「あの音はやりすぎた音、アカン。オーケー?」」

「OH・・・I'msorryすみません・・・。」

「発音良いなオイ」

そして俺達は、少し冷めてしまった焼きそばやたこ焼きを食べて腹を満たし、その後もしばらく、このDI市民プールで、飽きるまで遊び尽くすのであった。

〜午後1時30分 DI駅前・カフェ「ノーブルコーヒー」〜

「いや、飽きるの早っ!!」

ここに来るまでDI市民プールから約20分・・・。それを差し引くと、あれからあまり時間が経たないままDI市民プールを出て行ってしまった事になる。

「まあ、あの人数じゃ仕方がないわね・・・。」

あの茉莉&猫菜ナンパ事件の時ですらかなりの人数がいたのに、俺達が昼食を済ませている間に人数がさらに3割くらい増えてしまい、結局、ロクに遊ぶことが出来ないまま時間だけが過ぎていってしまったのだ。

「・・・でも、私は兄さんに水着姿を見せられたので満足です!」

妹よ、何を言っているんだ。

「あたしも、みんなと一緒に遊べて楽しかったよ!」

「ま、そうっスね!」

「私も、猫菜さまと一緒に滑るウォータースライダー、楽しかった。大満足。」

うんうん。楽しき事は良き事かな。

「僕も茉莉たんの水着姿を見れて満足だよ」

オイ、最後の最後に何て事を言ってくれるんだ。せっかく平和的にオトせそうだったのに。

・・・やれやれ。何はともあれ、皆が良かったなら俺も安心だ。

「兄さんは・・・楽しかったですか?」

茉莉は首を傾げながら俺に聞いた。

・・・俺の答えは、もちろん一つである。

「YES!I WAS!」

〜午後5時〜

そして俺達は結局、街中でしばらく遊んだ後、解散して各々帰宅する事になった。

というのも、ゲーセンで遊んでいる最中、プールでの疲れが出たのか、俺が何度も立ち寝してしまいそうになっていたからである。皆には気を遣わせてしまったかと思うと、少し申し訳ない気持ちになる。しかし、俺が寝そうになるくらい疲れているという事は・・・後遺症がある俺よりは幾分かマシだろうが、皆もそれなりに疲れているという事だ。家に着いた時には、俺は当然といえば当然だが、茉莉と秦も、リビングのソファーへと直行してそこでへたれてしまった。

遊んだのはあんなに短い時間なのに、ここまで疲れるとは・・・しばらくぶりのプールで、ブランクがあったのだろうか(俺は後遺症があるため、現在、水泳の授業には参加させてもらえていないのである)。慣れない事はするものではないな。それにしても・・・。

茉莉の胸、やわらかかったな・・・。




・・・誰だ。今、「シスコン」という言葉を脳裏に思い浮かべたのは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます