第24話 伝説の水着回 前編

〜8月3日・午前10時30分 自宅・リビング〜

「・・・なぁ。茉莉。秦。」

「はい。」

「何じゃ?」

俺は海パンやその他諸々の荷物が入っているリュックサックを持ちながら、茉莉と秦をジト目で見つめる。そして、

「『ちゃんとした水着』を持って行かんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」」

寝起き一番、今日も好調な半ギレ状態でのツッコミで一日がスタートした。

というのも、今、2人が「水着だ」と言い張って持っていこうとしている物が原因なのである。

「茉莉!どうしてそれを着ていこうとした!?」

「さすがにちょっと布面積が小さすぎるかな・・・?ダメ?」

「当たり前だッ!!」

「妾のもダメかのぅ?」

「ダメに決まってんだろ!お前、だって、それ・・・」

「貫頭衣じゃが。」

「せめて同じ貫頭衣でもポンチョ的な水着にしろや!!あるだろ、そういうの!何で原始人スタイルの貫頭衣!?しかもソレ、水着じゃねーし!」

茉莉はマイクロビキニ、秦は原始人が着ているような貫頭衣を持っていこうとしている・・・。今キレずして、いつキレると言うのだ。

「でも、兄さんがそう言うなら仕方ないかぁ。ちゃんとしたやつ、持ってくるね。」

そう言って、茉莉は淡い水色の水着を持ってきた。

「これで良い?」

「本来ならこういうチェックは俺がすべきでは無いんだろうけど・・・。うん。多分大丈夫だと思う。」

「では、妾は・・・夏明けから行く『小学校』とかいう場所で泳ぎの練習(水泳授業の事)に使うから要ると言われて買われた、『すくみず』とやらを着ていくかの。」

「うん。それなら大丈夫だ。2人とも、最初からそっちを持って来いよ・・・。何でボケた?」

俺は半ば呆れながら、玄関口へと向かった。

「オーケーならオーケーで、兄さんを誘惑する分には問題ないと思ってましたし」

「貫頭衣なら貫頭衣で、そっちの方が着やすそうじゃったしのう。」

「・・・。」

俺は黙り込み、拳を握る。

「兄さん?」

「どうした、来兎よ。」

そして、その拳は俺のキレ芸と共に、玄関と外をつなぐ扉を強引に押し開けた。

「このクサレ脳ミソ共がァーーッ!」

〜午前11時10分 DI市民プール〜

「やあ!茉莉たん達!」

「遅かったわね。11時集合じゃなかったかしら?」

「ピンポン(インターホンを鳴らすこと)しようと思ったけど、出なかったから置いて行っちゃったよ・・・?何してたの?」

「悪い悪い。ちょいとモメたもんでな。水着の事で。」

俺達はあの後、何とかして時間に間に合わせようと急いで家を出て行ったものの・・・時すでに遅しだったようである。

「水着!?ら、来兎センパイ・・・。ダメっスよ?そーゆーのは。いくら2人が可愛いからって、水着がちゃんとしてるかどうかを言い訳に、個人的な『お楽しみ』に走るだなんて」

オイ。要らん誤解を招く前にその口を閉じろ。

「何だよ!『お楽しみ』って!?」

「そりゃあ、『変な水着でない事を確かめる』ってのを口実に、茉莉と秦のアウトな水着をジロジロと見る事っスよ?」

「「「ファッ!?」」」

皆の視線が俺の方を向く。

「来兎君・・・?」

「来兎さん、スケベ?」

「来兎クン・・・。(悲哀)」

「来兎・・・。」

OH、何とスピーディーな誤解。

「おい華!変な誤解されてんじゃねーか!やめろや!・・・なあ、茉莉、秦!俺はもっと紳士的だろうそうだろう!?」

「はい!ちょっと誘惑しちゃおうと思ってマイクロビキニを着てみたんですけど、ちゃんと注意してくれました。兄さんは紛れもない紳士です!」

「うむ。来兎が紳士かどうかはともかく、は割とちゃんとしていると思うぞ。」

「地味に俺が以外紳士じゃない的な発言をされた気がするけどスルーしとくよ。」

「・・・ふふっ。確かに、まさかね。やっぱり来兎君はそういうとこ、ちゃんとしているわよね。良かった。・・・むしろ茉莉ちゃんの方があの日以来、積極的になった気がするのは気のせいかしら・・・。」

はぁー。ヒヤヒヤするぜ。まったく。変に含みのある言い方をした華には、後でお仕置きをしなくては。何にしようかな・・・。(結局、後でジュースを奢ってもらった。)

「ん。華さんの別荘の最後の朝、あれは、ちょっとびっくりした。アレって兄妹愛・・・?」

「ーーーーーーーーー!(真っ白なハンカチを噛む桃矢)」

「結局あの日・・・ゆーべはお楽しみだったのー?ねえねえ、どうなの、来兎!茉莉ちゃん!(ニヤニヤ)」

「その話を蒸し返すんじゃあないッ!!」

あの時は茉莉と一緒に「モハメド☆平謝り」したけど、俺は何もしてねーからな!?(まあ、本当に俺は何もしていないのであって、あの抱擁を拒否する事もしなかったが。)

「・・・まあ、あの話はとりあえず置いておきましょう。」

「そうじゃな。『ぷーる』とやら・・・妾も楽しみじゃ!」

「だな。さ、行くぞ!」

こうして俺達は受付で入場料を払った後、ワクワクしながらそれぞれ更衣室へと向かい、着替えを済ませたのであった。

〜DI市民プール・プールサイド〜

「「「「「「「「プールキタァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」」」」」」

そして俺達はすぐに着替えを済ませた後、最高にハイなテンションでプールサイドへと走り出した。

「兄さん!プールサイドをバックにしてみて、この水着・・・どうですかっ!?」

「妾のも、どうじゃ?」

「うん!すごく似合ってる!さすが俺の妹達だ!」

「妾は『義姉あね』じゃっ!」

「まだあったのかよ、その設定。もう諦めろよ。さすがに無理があるだろ。かなり大爆笑テラワロス(棒)。」

「くぃーーーーーーっ!」

秦が軽く地団駄を踏む。

「やれやれ。相変わらずのシスコンね。」

「ん。来兎、妹想い。いいおにーちゃん。」

「そうか?それほどでも・・・あるかもなっ・・・うおお」

「何?下着、ズレてるかしら?」

猫菜は豊満な胸を揺らしながら、下着の位置を整える。

「いやー、猫菜氏、随分と立派なものをお持ちで(笑)」

「軽くセクハラよ、来兎君・・・まあ一応、軽く褒め言葉として受け取っておくわ。」

「ん。猫菜さまのおっぱい、ふわふわ。」

「「ゴファッ」」

そして咲の一言で、俺と桃矢は軽く吹いてしまった。

「咲・・・悪気が無いのは分かっているけど、あまりそういう事は口に出すものでは無いわよ・・・。デリケートな問題なのだから。」

猫菜が溜息をつき、咲の頭を撫でながら軽く叱った。

「ん。以後、気をつける。」

「ねーねー!あたしの水着、どうかな!?」

「ついでにアタシのにもテキトーにコメントくださいっス。ダサかったら予備のに変えるんで。」

「えーと・・・ほうほう。アナベルは金髪が映えるように黒にしたのか。」

「うん!何かカッコいいなーと思って!せっかくの金髪なんだし、フル活用しなきゃだよねっ!」

「で、華は・・・ポンチョスタイルか。これもこれでなかなか・・・。」

「そっスか。ダサくないっスよね?」

「ああ。似合ってるぞ。」

秦が着ようとしていた原始人スタイルのものとは同じ貫頭衣でも雲泥の差だ。

「よし、なら大丈夫っスね!それにしても・・・全員、自分から頼んでいるとはいえ、女性陣の水着に一つ一つコメントを入れている主人公って・・・。」

「うるせー!メタいぞ!細かいことは良いんだよ!」

「女性陣全員の水着を合法的に間近で見ることができて満足だから細かいことは気にするなって事っスか、そうっスかそうっスか」

「変な方向に話を広げるなッ!!」

・・・と、華に対してはこう答えたものの、実際のところ、否定しきれない俺がいる。

だってそうだろ!?茉莉は安定の可愛さだし、猫菜はスタイル抜群だ。アナベルだってあの綺麗な金髪と黒い水着のコンボは目を奪われるものがあるし、華も、夏において比較的不利だと思われる小柄な体型をポンチョで上手く利用していて、それが見事に映えている。秦と咲は今こそ充電期間のようなものだが、将来は有望そうだし、今のままでも、ロリコンからの需要は多いにあると思う。なぜなら、素材が良いから。

・・・それを一度に見る事ができる俺はなんて幸せ者なのだろうと、丁度、今思ってたところだよ!悪いか!?俺だって思春期真っ盛りの男の子だ!仕方ねーだろ(逆ギレ)!・・・お前らが可愛いのが悪いんだよ!

〜DI市民プール プール内〜

そして、俺達はプールに入り、水遊びを遊ぼうと思ったのだが・・・いかんせん人が多く、あまり自由には動けないようであった。

「うーん、人が多いのう。」

「そうですね・・・あんまり自由には動けなさそうです・・・。」

「だな・・・。よし。こうなったら。」

「来兎君?どこに行くのかしら?」

「アレだよ!アレアレ!」

俺はプールサイドの端にある、ウォータースライダーを指さした。

「ウォータースライダーかー!そういえば、あるって言ってたね!行こ!皆!」

「あれ、ケツ痛くならないんスかね・・・?」

「「「「「「「大丈夫だ、問題ない。」」」」」」」

「ダメフラグじゃないっスか」

〜DI市民プール ウォータースライダー〜

俺達は、ウォータースライダーのスタート地点まで、階段を登ってやってきた。下のプールがあれだけ混んでいるのだから、やはりこちらも行列なのだろうと思っていたが・・・やはりそうだったか。

〜5分後〜

よしっ!やっと順番が回ってきた・・・。

そして俺達は、「俺→茉莉→桃矢→華→猫菜&咲→秦&アナベル」の順番で滑る事にした。(なぜ猫菜と咲、秦とアナベルがセットなのかはお察しください)

というわけで・・・

「うおおおおおおおおっ!?」

俺がトップバッターとして、ウォータースライダーを滑る事にした。このスライダーはカーブが多いが故に、俺は身体を横に揺すられながら、半ば目を回したような状態で着水した。

「ぶべがばがばがぼごばべば!」

ここのウォータースライダーは去年も滑ったことがあったが・・・。こんなにキツかったか・・・?と、俺は内心、そんな事を思いながら、着水地点付近で、全員が着水するまで待つ事にした。

〜茉莉の番(茉莉視点)〜

兄さんの次は私です!着水時のラッキースケベを狙って精一杯(違う意味で)滑ります!

「ふゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

こっ、これはっ!思ったより速い!じゅ、重心を・・・コントロールできないッ!

そしてそのまま私は、兄さんの近くで着してラッキースケベを狙うどころか、姿をロクに捕捉する事すらできないまま着水しましたとさ・・・。トホホ・・・。

〜桃矢の番(桃矢視点)〜

次は僕だね。・・・茉莉たんとのラッキースケベに期待(ド変態)。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ダメだ!これはダメだ!滑る事に集中しないと、目が回って・・・

「あああああああああああああ!!」

葛飾 桃矢 再起不能リタイア

〜華の番(華視点)〜

さて、アタシの番っスね。・・スタート地点から3人の滑り具合を見てたっスけど・・・一応、対象年齢6歳以上で子供も滑れるって書いてあるっスし、皆、後者をビビらせようと思って大袈裟に騒いでるだけっスよね。さ、アタシはビビらずに楽しませてもらうとするっスかね。

〜5秒後〜

「うぉぉあああああああああ!?」

何スかこれ!?「子供でも楽しめる」とは一体!?これ、下手すると子供、泣くレベルっスよ!?

「痛っ!」

そしてアタシは、猛烈な勢いを保ったまま、プールへと着水した。ウォータースライダーの勢いが、アタシの身体をプールの水面に勢いよく叩きつける。

・・・これ・・・楽しむには慣れが必要そうっスね・・・。勢いがウォータースライダーってレベルじゃないっス・・・。

市原 華 再起不能リタイア

〜猫菜&咲の番(猫菜視点)〜

「さ、行きましょうか。」

「ん。猫菜さま。」

私は咲を正面に抱き、2人でウォータースライダーに座ったまま対して足を伸ばすような座り方をして、滑り出した。

「・・・!」

これは・・・速いわね。本来の姿が猫の神であるだけに、重心の調整は多少強引にでもできるのだけれど・・・来兎君達は人間。それができなかったから、あんなに騒いでいたのかしら・・・無理もないわね。

そして私達はそのまま何かに騒いだり、何かが起きたりする事も無く、フツーに滑り、フツーに着水した。来兎君達に、「よくフツーに滑ってこれたな」と言いたげな目で見られたけれど・・・。確かに、人間にこのウォータースライダーは少し難しいかもしれないわね。思い、猫の神である事が来兎君と秦ちゃん以外にバレないよう、それとなく表現を濁しながら、自分達が猫である事を何とか誤魔化した。

〜アナベル&秦の番〜(秦視点)〜

「どうしてこうなったっ!?」

「へ?どうしてって・・・秦ちゃん、まだ子供でしょ?だから、おねーちゃんが一緒に・・・。」

「妾は10歳じゃ!ソコの看板を読め!対象年齢は6歳じゃぞ!?それに、大人か子供かといえば、其方もまだ子供ではないか!」

「えー、でも、良いでしょ?」

「良くないわッ!」

「おねーちゃんも秦ちゃんと一緒に滑りたいの!」

「其方は妾の姉じゃなくて、ただの隣人じゃろーが!」

「いいじゃん別に」

「いらり」

しかし結局、妾はアナベルから逃れる事が出来ず、一緒に滑る羽目になってしまった。妾に対して愛情を持って接してくれる事はありがたいと思うが・・・アナベルは少々、スキンシップが激しいからのう・・・いつもヒヤヒヤしとるわ・・・。

〜1分後(来兎視点)〜

結局、アナベルは秦の身体を放すことなく、ウォータースライダーを滑り終えてしまったようだ・・・。アナベルってロリコンだったのか・・・?まあ、男の子的にはそれなりに尊ぶべき光景だったから良しとするが。

さて、次はどうするか・・・2回目のウォータースライダーは首がアカン事になるという理由で、俺も含む全員が却下としているし・・・かといって、プール内は人が多いし・・・。

「あの、兄さん・・・。」

「ん?どした?」

「屋台、見に行かない?・・・お腹減ってきちゃって・・・。」

「ああ、それもそうだな。皆もどうだ?」

「いいんじゃないかしら?私もさっきから、屋台のたこ焼きが気になっていたところよ。」

「ん。特にこの鰹節の香り・・・すき。」

「じゃ、各々ロッカーから財布持ってきて買って来ようぜ。で、あそこのテーブルに集合な。」

そう言って俺は8人で座れる大きな長方形のテーブルを指さした。

「オッケー!何食べよっかなー!」

「妾も楽しみじゃ。」

「茉莉たんの水着姿を見ながら昼ご飯・・・天国かっ!?(真顔)」

「桃矢センパイ、後でツラ貸せっス。」

「オー!ノーッ」

そして俺達は、皆で更衣室のロッカーから財布を取り出し、各々の好きな食べ物を買って昼食を済ませる事にした。

〜午後0時10分 DI市民プール・屋台付近〜

「・・・遅い!」

遅すぎる。プール内は人がごった返しているとはいえ、屋台は特に行列ができている店があるわけでもないのに、遅い。アイツら、どんだけ買っているんだ・・・?いくら何でも腹減らしすぎだろ。・・・ちょっと様子を見てくるとしよう。

俺は場所取りを丁度たこ焼きと焼きそばなどを買って帰ってきた秦、アナベル、華、咲の4人に任せ、まだ帰ってきていない茉莉達の様子を見に行く事にした。

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