第19話 華の別荘に行こう その1

〜7月18日・午後2時 学校・校門前〜

「「夏休みどぅえええええええええいっ!!!」」

俺とアナベルは校門前でハイタッチをして、一学期の終了を喜んだ。

そう。長く苦しい戦いもとい長い一学期から解放されて、俺達には明日から、待ちに待った夏休みが訪れるのである。

「ふふっ。皆、開放感に溢れてるわね。」

「そりゃそーだろ!夏休みといえば!山で緑と戯れるも良し!海やプールで涼を感じるも良し!家でアニメの水着回を愉しむも良し!暑さと宿題を除けば、1年の中である意味一番のビッグイベントとも言える時期だ!」

「そーだよ!こうして来兎と過ごす夏も何回目かなー!今年もいっぱい遊ばないとね!!来兎!」

「ああ!そうだな!」

まあ、俺にとってはギリ3回目なんだけどな・・・(ただし実質2回。1回目・・・中二の時はまだ入院中で、夏という夏を過ごせていなかったのだ。)。そういえば、俺が入院している時も・・・当時、まだ猫菜とは知り合っていなかったが、それ以外の皆は何とか俺の記憶を取り戻そうと奮闘してくれていたっけ。もちろん、アナベルも。・・・今の俺が、記憶を失う前の俺にもし何か言えるのならば、俺は間違いなく、「こんなに素晴らしい友達をつくってくれていてくれてありがとう」と言うだろう。

・・・って、俺はまた過去の自分のことを他人のように思ってしまっていたようだ。どちらも同じ「俺」なのに。でも、そういう意味では・・・記憶を失う前の俺は、一部分を今の俺に引き継いで「死亡した」ともとれるのだろうか。難しい話である。

・・・まあ、今はそんな事で頭を悩ませている場合では無い。記憶喪失前の俺の分まで、今の俺がこの夏休みを楽しみまくってやるぜッ!それに今年は例年に比べて、全体的に宿題が若干少ないらしい。もうこれは・・・運命が俺達に「遊べ」と言っているようなものだろう。

〜7月19日・午前8時 颯月組事務所〜

というわけでその翌朝、華の直属部下数名によって、俺、茉莉、アナベル、猫菜、桃矢、咲(人間形態)、秦、そして家主である華は2台の黒塗りの車に乗せられ、幼い頃に華が父親(組長)に誕生日プレゼントとしてねだったら、あっさりと買ってもらえたという華の別荘へと連れて行ってもらった。

〜午前10時 GT温泉郷付近の別荘地・華の別荘付近〜

事務所を出て2時間後。俺達を乗せた2台の車は、GT温泉郷付近の山中に位置する別荘地で一際目立つ豪邸の前で停車した。そして家主である華は俺達よりも一足先に降車し、別荘にかかっている二重の鍵を開けて、扉を開きっぱなしの状態にして俺達全員の降車を待っていた。

「「「「「うわぁ」」」」」

「うおお・・・これはたまげたのぅ。現代では徳川家や天皇家でなくてもこんな家を持てるのか。また『じぇねれーしょんぎゃっぷ』とやらを感じてしまったわ。」

「(確かに、私の世界に構築している社以外でここまで大きい建物を生で見るのは久しぶりね・・・)」

「ようこそ。ここがアタシの別荘っス!掃除とか人数分の布団の準備とか手配しといたんで、テキトーに使ってくれていいっスよ〜。ささ、入って、入って。」

「これ、組長さんじゃなくて華の所有物なんだよな・・・?」

「そうっス。ちなみにその時、ここからちょっと離れた小さめな山もプレゼントしてもらったんスよ。よかったら後でそっちにも案内するんで、とりあえず今は別荘の中で休んでてくれっス。」

「底知れねーな、颯月組・・・。」

「ですね・・・。」

一体、どこでそんな金を手に入れているのだろうか。颯月組は武力をもって悪を消す団体・・・俗に言う腐れ野郎と呼ばれる一部の政治家やお偉いの暗殺で稼いだ金や、麻薬密売人を消した際に遺された金を奪っている・・・くらいしか考えられないが・・・資金源の真相やいかに。

〜華の別荘・リビング〜

華はここまで送ってくれた構成員に、3日後、再び迎えにくるように言って帰した。

「「「「「うおおおおー!」」」」」

華の別荘は北欧風の造りで風通しが良く、白く染められた木が豊富に使われている家内は、ただでさえ風通しが良い室内の清涼感に拍車をかけている。

「さすがに立派ね・・・さてと、早速、最寄りの神社探しをしないと(猫間神社勢にとってはワープホールだから)。」

「ボクも手伝う。」

「ありがとう、咲。」

猫菜と咲は早速地図を開いて、付近の神社を探し始めた。

「茉莉たん!二階行こう!」

「はいっ!桃矢さん!アナベルさんと兄さんも行きましょう!」

「おう!!」

「うんっ!」

「あ、ちょ、勝手に行ったら危ないっスよ!」

その一方で童心にかえった俺、茉莉、桃矢、アナベルの4人は、大はしゃぎで二階へと向かい、それを追うように、華も二階へと向かった(俺は童心がまだデフォルトだった時の記憶が無いため、実質、童心にかえると言うよりかは、「童心を初めて体感した」という方が正しいかもしれない。)。

「や、やっぱり外国風の建物はまだ慣れないのぅ・・・。」

そしてリビングのど真ん中で1人、秦は、また新しい系統の外国風建築に戸惑っていた。秦がまだ現代に適応しきれていないのは分かっている。これから少しずつ経験を積んで、秦にも、いつか自然体で現代を楽しむことができる日が来たらいいなと思う今日この頃であった。

〜午後1時 華の別荘・リビング〜

「さて。お昼(ご飯)も済んだところで・・・アタシから、皆に話があるっス。」

「?何だ?」

「どーしたんだろ。」

茉莉と華による絶品カレーライスが振る舞われてから数分後。突如、華がガチトーンで話を始めた。

「誰か見てるかもしれないっスけど、ここの別荘、小さい物置もあるんスよ。で、アタシ、さっき様子を見てみたんスけど・・・作られてたんスよ。」

「何が作られてたのかしら?」

「スズメバチの巣」

物置・・・そういえば、奥にそんなものがありそうな扉はあったが・・・まさか、あの中にそんなものがあったのは。

「よぅし殲滅戦だッ!!蜂の巣ごとブッ飛ばすような殺虫スプレー持って来ぉい!」

「僕も行くよ。愛する茉莉たんがそのハチに刺されたら困るしネッ!」

そして、その話を聞くなり俺と桃矢は、華が大量に買い置きしてあるという殺虫スプレーの山の中から蜂特攻タイプのものを選んで手に取り、物置の鍵を開けるために連れてきた華も交えた隊列を組んで物置の扉前へと向かった。

〜華の別荘・物置前〜

「いいっスね?素人じゃどうにもできないレベルだと思ったら、すぐ出てくるんスよ。アタシと茉莉はここで待ってるんで。あと、扉は一応、少し開けとくっス。室内に殺虫剤が充満すると良くないんでね。中に物は何も入ってないんで、テキトーに暴れちゃってくださいっス。」

「怪我だけはしないでください、兄さん!」

「2人とも!がんばってねっ!」

「まあ任せとけって!アナベルは知ってると思うけど、俺はかつて家中に沸いたGを殲滅した事があるんだ。危険度は少し上がるだろうけど、相手は所詮虫だ。今回は戦力も2倍なんだし、スズメバチの巣なんざ軽くブッ壊してやんよ!」

「茉莉たんと僕達の平穏のために・・・スズメバチ達には悪いけど、ここで命を終えてもらおう!」

「「いざ、突撃ィィィィィィーーーー!!」」

こうして俺と桃矢は、バトル漫画のキャラクターさながらの覚悟を決めて殺虫スプレーを構え、物置内へと突入した。

〜同時刻・書斎(猫菜視点)〜

「・・・」

「・・・」

「・・・」

この「秦」という娘・・・なぜさっきから私達の神社チェックをジロジロ見ているのかしら・・・?来兎君や華ちゃんからの話を聞く限り、380年くらい前に自殺しかけたものの、死の直前で負の感情の塊に囚われて身体の時が停止した後、来兎君と華ちゃんによって現代に復活した女の子らしいけれど・・・その娘から、ただならぬ視線を感じる・・・。

「なあ、其方ら・・・名を『猫菜』と『咲』と言ったかのぅ。」

「ええ。そうだけれど?」

「・・・どーしたの?」

秦ちゃんは突然話しかけてきたかと思うと、着物の中から扇子を取り出し、こちらに突き出して言った。

「この家の中に妾達しかいなくなった今じゃから聞くが、其方ら・・・人間ではないな?何者じゃ?」

なっ!?見抜かれた!?来兎君が私達のことを言った・・・?いや、来兎君に限って事があるわけ無い!・・・これがいわゆる、「なぜバレたし」というやつなのかしら・・・。

「な、なぜそんなことを思うのかしら?」

「そんなもの、気配でわかるわ。妾がこの時代に存在する理由が霊的な存在に取り込まれていたから・・・というものである以上、身近にいる存在が霊的なものかそうではないかくらい、気配から簡単に感じとれるのじゃ。・・・とはいっても、其方らから邪悪なものは感じ取れないがのぅ。」

これは・・・もうさすがに誤魔化せないわね。ここまでバレているなら、今更隠しようも無いし。それに、どうせ記憶処理しても、すぐにまた感づきそうな気もする。

「・・・ふぅ。耳も尻尾も隠して、完璧に人間の姿になっていたのけれど・・・まさかそれでもバレるなんてね。」

「猫菜さまの術、見破られたの、何気に初めて。秦ちゃん、すごい。」

「ふっ。どんなものじゃ!(ポンッ)」

秦ちゃんはドヤ顔をしながらこちらを向き、無い(笑)胸を右手で叩いた。

「・・・何か失礼な事を考えられている気がするのじゃが」

「そんな事ないわよ。(ぽよーん)」

私はそう言いつつ、遠回しに、考えていた事を伝えるように自身の胸を叩く。

「ぐぬぬぬぬ・・・何じゃこの敗北感は・・・。」

神術を見破られた分の仕返しとしてマウントを取りに行ったのだから、それくらい悔しい顔をしてもらわないと困るわ。もっと悔しがるが良い(キャラ崩壊)

「猫菜さま、意外と子供っぽい・・・(テレパシー)」

「初対面の神に向かってドヤ顔した罰よ。(テレパシー)」

そして私達の正体に関する話が続いたのち、私と咲、続いて秦ちゃんも、蜂と奮闘する来兎君達のところへと向かった。

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