第17話 投擲アイテムこそ至高

〜???〜

「この妾が頭を下げて頼もう!妾を其方の義妹いもうとにしてくれ!」

「いや、帰る家が無いからって、いくらなんでも気が引けるだろ・・・」

「なら義姉あねでも良い!おーねーがーいーじゃーー!」

「駄々っ子か!」

「駄々っ子で結構ッ!」

・・・俺達は確かに、G橋を渡っていた。否、渡っていた・・・はずだった。

なのに・・・どうしてこんなに面倒な事になってしまったのだろうか・・・。

〜数時間前〜

異変は、俺達がG橋を渡り始めたと同時に起こり始めた。

「うーん・・・やっぱフツーの橋にしか見えないっスけどね〜。ここ、心スポだって知らない人だったら、全然ビビらないと思うんスけど。」

「確かに。」

もし何かしらにビビったとしても、ここが心霊スポットだという情報を聞かされていない人間が怖がる対象は幽霊ではなく、単純に深すぎる谷底だと思う。それに・・・どちらかというと、霊が出るとしたら橋の上ではなく、自殺者の身体が叩きつけられたはずの谷底に出るはずなのだが・・・。

しかし、その異変が俺達を襲ったのは、ちょうど橋を渡り始めた時だった。

「ゴワワァ」

・・・?妙に冷たく、それでいてどこか生暖かいような、不気味な風が俺達の身体を押し除けて通っていった。

「うわっ!?」

「何だろう?今の風・・・。」

アナベルと桃矢が自身の両腕を押さえて身震いする。

「ォォォォォォ・・・。」

そして次の瞬間、谷底から不気味な声と共に、下半身が透けて見えなくなっている人型の影のようなものが現れた。

「「「ギャーーーッ!!」」」

その姿を視てしまった茉莉、桃矢、アナベルの3人は、驚きのあまり大声を上げて腰を抜かしてしまった。・・・こんな状況で言うのもどうかと思うが、この桃矢の驚き方・・・「HTtalk」(テレビ番組)の大人気企画である「驚キングらんぷり」で毎度乙女チックな驚き方を披露している、芸人の「フジサン」にも負けず劣らずの乙女リアクションだ。テレビ越しに乙女リアクションを観る分にはめちゃくちゃ面白いが、知り合いの乙女リアクションを生で見るのは・・・さすがにドン引き不可避であった。

それはそうと、この影みたいな人型のヤツは・・・やはり悪霊か何かなのたろうか?

「えーと、ドン引きしてるところ悪いんスけど・・・どうするんスか、この影みたいなヤツ。」

「あ、そういえばいたな・・・そんなヤツ。」

「ォォォォォォァァァ・・・」

・・・何を言ってるかよく分からないが、とりあえず怒っているという事は何となくわかった。ゴメンネ、そっちまで気が回らなかったんだ(棒)。

「つーか華。お前、全然リアクションしてねーけど・・・慣れてんのか?」

「そーゆーセンパイもノーリアクションっスけどね。まあアタシは慣れてるっていうよりも、生きている人間の怖さを知ってるだけっスから・・・。」

「まあ、お嬢・・・だもんな。」

「そーゆー事っスよ。で、センパイは?もしかして霊感強くて、元から霊視できてたりするんスか?」

ギクッ。・・・こんな話題振るんじゃなかった。どうしよう。すぐに猫菜の事を隠すための言い訳もといカバーストーリーを考えなくては・・・。

「・・・いや、ホラゲーに出てくるガチモンの化け物が怖すぎて、リアルのヤツがまだマシに見えるっつーか・・・単にホラー耐性がついただけだろ。」

「ガチのやつより怖いって・・・そのゲーム、ヤバすぎないスか?」

よし。自然な流れで話を霊視の話からホラゲーの話に移すことができた。これで猫菜の事をわざわざ隠そうと焦る必要も無いだろう。

「ォォォォォォ!!」

3人が腰を抜かしてビビりまくってる中、影の方は空気を読んで待っていてくれていたようにフワフワと浮いていたが・・・。とうとう痺れを切らしたのだろうか。短く叫び声をあげてすぐに橋の上へと降り立ち、フラフラとよろめきながら俺の方へと向かってきた。

「ォォォォォォ・・・」

「とりあえず・・・逃げるか。」

「そっスね。」

「茉莉!桃矢!アナベル!いつまでもヘタれこんでないで、早く逃g・・・」

「もういないっスけど」

「逃げやがったなアイツら!!」

いや、逃がそうとしていた俺が言うのもどうかと思うけど!奴ら、俺達がグダグダと幽霊を待たせてまで駄弁っている間に逃げやがったとは・・・。それにしても、桃矢とアナベルはともかく、茉莉まで逃げてしまうなんて。多少天然だがしっかりものである茉莉でも、恐怖には抗えなかったという事か・・・。

「・・・取り残されたのはアタシ達の方だったみたいっスね。」

「せやな」

さて、俺と華だけが無事に取り残されている事が発覚したところで・・・。逃げるか。

「タス・・・ケ・・・テ・・・。ガァァァッ!!」

ハイ、定番台詞頂きましたー。・・・やっぱり悪霊じゃねーか。

そしてその台詞と同時に、黒い影は橋の上以外のこの辺り一帯を深い霧で覆い尽くし、空を緋く染め上げた。

「あ、逃げられないやつだな、これ。」

「そっスねー。演出的に。」

ゲームでよくある、ボス戦の時にボスが専用のマップを一時的に創ってしまうアレ・・・俺達は今、アレを現実世界で味わってしまっているようである。・・・まあ、どーせこんな演出をしたところで、まともな結末にはならないのだろうが(コメディ小説だから)。

しかし当の本人は、妙にこの状況に慣れている俺達に戸惑いを隠しきれていなかった。威嚇のつもりだったのだろうか?残念ながら、その威嚇が通じる相手はもうすでにここから逃げていってしまったようだが。ここにいるのは、武力をもって人間の本物の怖さと対峙し続ける父親達の姿を見て育ってきた華と、猫菜の存在を知った時から、非科学的な存在を「確かにそこに存在するもの」として信じるようになり、その他の事には慣れっ子な俺だけだ。

「華。」

「何スか?」

「ちょっと霧ん中突っ込んで行ってみ?」

「ああ、アレを確かめるんスね。」

「そそ。戻ってくるってアレを。」

「オーケーっス。」

俺はG山駅への帰り道だったはずの深い霧がかかった道を指差すと、華はその道を突っ走っていった。

「ォォォ?」

黒い影は物珍しそうに首を傾げて、華が突き進んで行った道と反対の道を視た。そして・・・

「あー、やっぱダメっスねぇ。」

やはり反対側の橋から、華がこの橋の上へと戻ってきてしまった。黒い影が物珍しそうに華を見ていたのは、「え、こういう状況に慣れてるなら、どーせオチくらい知ってるでしょ?何でわざわざ行ったの?」とでも思ったからだったのだろうか。

まあ、そんな事はどうでも良い。状況から察するに今やるべき事は、この黒い影と和解するか、黒い影を何とかして破壊する事だろう。しかし、太陽の光が無い夜に、しかも、この黒い影によって時空が何かを歪められて空を赤く染められ、さらに脱出不可能な橋の上に孤立した状態で日光を用いて影を消す事など不可の極みである。つまり、「どこぞのギャングスターとなった少年が、影の中を移動して口から対象となるライターを再点火した者とそれを見たものに矢を突き刺そうとする霊体を撃破した時のような戦い方」はできないという事である。

しかし・・・何もこいつの弱点が、黒いサバス(先程の答え合わせ)と同じと決まったわけでは無い。何とかして勝機を見出さなくては。

「さて、どうする?華。コイツ相手に人間と同じような喧嘩ができるとは思えないけどな。」

「ま、それなりに殴り合ってりゃ、いつか弱点は見つかるんじゃないスか?」

「それもそうだな。じゃ・・・」

「久々っスね。1年ぶりくらいっスかぁ。」

「ああ。」

〜1年前〜

「お前、これ以上近づいたらコイツがどうなるか分かってんのかァ!?」

「に、兄さん・・・!」

時は夜、場所は休日の工事現場。目の前には首元にナイフを突き立てられている茉莉と誘拐犯。

この日、俺と茉莉と華は少し遠くの公園に遊びに行っていたのだが・・・茉莉が植物園を見に行っている間に、誘拐犯にさらわれたしまったのである。そしてその茉莉の中学の生徒手帳を見て家へと連絡してきた犯人は身代金を要求してきたのだが・・・生憎、母はまだ俺達が幼い頃に離婚したらしいし、親父もその時はいつも通り、出張中だった。というわけで、俺と華・・・そして、華が連れてきた「精鋭の構成員チンピラ」数人で茉莉の救出作戦を決行する事にしたのである。

「吐き気を催す邪悪っつーのは・・・何も知らない無知なる者や、か弱い者を自分の利益のためだけに利用する事だと、大好きな漫画作品の単行本とそのアニメから教わった。今のテメーは・・・まさにソレだよなぁ。誘拐犯さんよぉ。」

「誘拐犯。アンタの名は知らねぇっすけど、颯月組組長の娘であり最高幹部として、ここでアンタを断罪させてもらうっスよ。」

「オ、オメエら!これ以上近づくとマジに殺すぞ!」

「ああ・・・そうっスかッ!!」

「だが!ブッ殺されるのは、俺達の攻撃を味わうテメーの方だッ!」

「例のアレ、持ってきてるっスよね!?」

「ああ!!任せときな!!」

俺はそう言って、予めポケットに忍ばせておいた例の卵爆弾を取り出し、

WRYYYYYYYウリィィィィィィ!」

誘拐犯の顔面目掛けて投擲した。

「フン!」

「に、兄さぁぁぁぁぁぁぁん!?」

しかし、それに気づいた誘拐犯は当然、茉莉を盾にして卵爆弾の攻撃を防ごうとする。

「ハッ(嘲笑)。やっぱその程度の思考しかできないんじゃ、アタシらを止める事なんざ、到底無理っスね。戦いの中では、常識に囚われちゃダメっスよ。」

「そうだな。」

「ナッ・・・!?」

俺がニヤリと頬を緩めた瞬間、茉莉の顔面目掛けて飛んでいた卵は、どういう訳か突如、回転の影響を受けて上へと飛んでいき、茉莉の頭部をかすめていった。そして次の瞬間、茉莉を盾にしていた誘拐犯の顔が卵の殻の中に仕込んでいたジョロキア入りのソースと同じ色の真っ赤に染まり、表情はくしゃくしゃにされた新聞紙のように乱れた。

「ホァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

両手で顔やら首やら、死の激辛ソースが付着した部分を掻き毟る誘拐犯。茉莉はその隙を見て逃げ出してきた。

「「アリーヴェデルチさよならだ!」」

決めポーズと決め台詞で誘拐犯を嘲笑う俺達の元に、茉莉が駆け寄ってきた。

「兄さんっ!市原先輩っ!ひぐっ・・・怖かったです・・・!」

「茉莉・・・良かった。茉莉。お前の事は、俺がいくら傷ついても、誰かから恨まれたとしても、俺が命に代えてでも守ってみせるからな。大切な妹の存在は・・・俺自身の命よりも尊いんだ。」

「・・・!」

俺が雰囲気で言ってしまったこの台詞が茉莉の耳に入った瞬間、茉莉は、まだ俺が記憶を失っていない古き日の言葉を思い出した。

「(・・・兄さんの言葉・・・『茉莉。大切なお前の事は、兄ちゃんが先生に怒られても、虐めっ子達に仕返しされても・・・命に代えてでも守ってみせるからな。』って。・・・あの時の記憶はまだ戻ってないみたいだけど・・・やっぱり、昔と全然変わらない・・・!)兄さん!兄さん!兄さぁん!うわあああああああああん!!」

「ハイハイ、ヨスヨス。・・・ま、そーゆー事だ。俺がいる限り、お前の身の安全は保証されたも同然って事だ。安心しろ、茉莉。」

「兄さん!兄さん・・・!」

俺は抱きついてくる茉莉の頭を撫でて、茉莉が落ち着くまでその動作を続けた。

その後、誘拐犯は伏兵として潜んでいた颯月組の構成員によって取り押さえられ、そのまま警察へと突き出された。事情聴取の後、俺達はまたいつもの日常へと戻ったが・・・俺と茉莉、そして華は、一躍学校内で時の人となった。茉莉はお姫様、華は戦乙女ヴァルキリー、俺は勇者サマなんて呼ばれたっけ。・・・さすがに中二病すぎる愛称だとは当時から思っていたが・・・正直、比喩を活かした褒め言葉としては満更でもなかった。

〜回想シーン終了〜

「1年ぶりに・・・勇者サマと戦乙女の再来だな。」

「その渾名で呼ばれてた時は、そう呼ばれる度にめっちゃハズかったっスね〜・・・ま、状況的には間違ってなかったんだと思うっスけど。」

「世界が違えば・・・だけどな。ま、少なくともこの状況において、この黒い影をなんとかしない限り、俺達はこの橋から脱出できない。そうと決まれば・・・やる事はひとつだな。よいしょっ!」

そう言って俺は、華を抱きかかえた。

「そっスね。やる事はひt・・・え、ちょっと待っ、何してるんスか!?」

「いや、投げる物が何も無かったから。お前が俺の無敵誘導投擲で黒い影に凸って、テキトーにブチかましてくれれば」

「え、ちょ、バカなんスか!?」

「えー、どーせお前、武器くらい持ってるだろ?つーわけで、そおおおおおおおおい!!」

俺は軽い華を両手で頭上に掲げ、そのまま黒い影に向かってブン投げた。

「ナァーーーーーッ!?」

「ォォォ!?」

黒い影が、飛んでくる華を打ち落とそうと、その長い手で手刀を構える。

「チッ!仕方ないっスね!!」

しかし、もちろん心霊スポット・・・それ以前に、夜間、外を出歩く際に華ともあろう人間が何も持たずにいる訳が無い。一応、一般人として生活してはいるが、立場的には颯月組組長の娘なのだ。いつ身柄を狙われるかもわからない以上、護身用の武器くらいはいつも持ち歩いている。そして今日は・・・

「喰らうっス!!ホラホラホラァ!ホラホラホラホラホラホラァ!!」

腰にぶら下げている鞘に納めていた警棒を取り出し、連続で突き攻撃を繰り出した。銀のアレ顔負けの突き攻撃に黒い影は驚きと戸惑いを抑えられず、防御態勢に入る間もなく、モロに華の警棒ラッシュを喰らった。

「ゴォォァッ!!」

「あの世へ行きやがれーッ!」

「ォォォォォォォォォォォォ・・・!」

そして至近距離まで接近した華は、続けて警棒で連続した突き&叩きのコンボを黒い影に浴びせる。一度体制を立て直し、今度は何とか防御できている黒い影だが、ものの数秒でガードブレイク寸前まで追い込まれているようだ。

しかしそこで、黒い影は何を思ったのか守りを捨てて、警棒を持っている華の右手首目掛けて掴みかかってきた。「そいっ!」

華はこれを見事、華麗に回避。

「いいカンしてるっスねッ!」

「ォォ!?」

思い切った掴みに失敗した黒い影は、思わず前のめりになったままヨロけてしまった。そして、そのヨロけたところに、華は全力のショルダータックルを喰らわせる。

「オァァァ!」

当然の事ながら、ノーガードでそれを受けた黒い影はたまらず転倒してしまった。

「おお!ナイス、華!」

「どうっスか!アタシのコンボ!」

「バトルもの顔負けすぎてちょっとビビった」

しかし、まだ安心はできない。何せ、相手は邪気の塊なのだから。

「ォォォ・・・」

「あ、やっぱこんなもんじゃダメっスか〜。」

「でも、どうすりゃいいんだろうな・・・。」

「ォォ・・・タスケ・・・テ・・・」

あれだけブチのめしてもダメとなると・・・やっぱり、「助け」れば良いのだろうか?でも、この状況で出来る事はそれなりに限られてきてしまう。

「・・・良いこと考えた。」

「?何スk・・・」

「WRYYYYYYY!!」

そこで俺が思いついたのは・・・捨て身の懐中電灯(スイッチ入ったまま)投擲攻撃であった。

・・・「華より先にソッチを投げた方が良い」?

いや、ダメだろ。重くないタイプだから攻撃力皆無だし。

「ォォ!?」

懐中電灯から照射される強い光が、黒い影の目のとなっている部分らしきところを強く刺激する。黒い影は、思わずその光に目をやられ、両手で顔を隠す。

「今だッ!」

「え、ちょ、何する気っスか・・・」

「ぎゅっ!!」

「ォァッ!?」

俺はその隙に、倒れている黒い影の横に座り込み、思い切って黒い影を抱きしめた。

「ォォォ!?」

当然、黒い影は抜け出そうとしてもがく。しかし俺は少しでも「助ける」という選択肢そのものに近づくため、その身体から手を離さず、より強く抱きしめた。

「すまねーな、突然攻撃しちまって。だが・・・俺は、お前が何でこの空間に俺達を閉じ込めたか分からなかった。だから、敵だと思っちまったんだ。手を貸して欲しいっつーなら、出来る範囲でなら手伝う。お前らみたいな奴に詳しい知り合い(猫菜)もいるんだ。だから・・・一旦落ち着いてくれないか?」

霊に「助ける」とか言うと、ほぼ100%取り憑かれると言われているが・・・この状況ではなりふり構っていられない。それに、いくら異空間に吹き飛ばされたからとはいえ、いきなり攻撃してしまった俺にも少しは非がある。

「ォォ・・・」

「そうだ。落ち着くんだ。ゆっくりと、その邪気を抑えてくれ・・・。」

「ォォォ・・・」

だんだんと黒い影から殺気が消えていく。そこで俺はほくそ笑み、華にウィンクする。

「今だッ!れ!」

「はいっス!!」

「ォッ!?」

黒い影は俺に抱きしめられている現状を確認しつつ、必死に上を見上げる。そこには、不敵な笑みを浮かべた俺と、警棒を構えた華の姿があった。

「フフッ。『ゾッ』としたみたいっスね。」

「ォ・・・」

華は俺に捕まったままの黒い影に向けて警棒を突き立て、

「ホラホラホラ!ホラホラホラホラホラホラァ!ホラホラホラホラホラホラァ!!」

警棒で連続突きを繰り出して、黒い影が纏っている邪気を消し飛ばした。

「ォォォォォォォォォォォォッ!?」

「センパイ!」

「ああ!」

俺は地面に寝転がって悶えている黒い影の上に馬乗りになり、そこから、

「WRYYYYYYY!!」

一発一発のパンチが時速50kmを超えると自負しているラッシュで、黒い影をボコボコに殴りまくった。ちなみに時速50kmというのは、ボクサーのパンチのトップスピードとほぼ同じ速さである。生身で時速50kmなら速いものだろう。

「ブベベベベベベベベベベベァ!!」

「吹っ飛べェェェェェェェ!!」

「ブォァッ!!」

そして、全力の一撃を喰らった黒い影は、みるみるその禍々しい邪気を失っていった。

「邪気が・・・」

「浄化されてるのか・・・?」

そして、完全に黒い邪気が消え去り、周りの景色も徐々に戻り切った後には・・・

「う、う〜ん?」

禍々しい邪気に纏わりつかれていたらしき、着物を着た黒い影の本体となっていたらしき幼女が姿を現した。

「な、何じゃ?其方ら・・・それに何故、妾は生きておる・・・?」

「「うわぁ古風なロリっ子」」

幼女は不思議そうにこちらを視認しながら、首を傾げる。

「ろり・・・何じゃ?」

「『ロリっ子』。幼女とか、幼く見える女の人の事っスよ。」

「・・・で、何じゃ?其方ら。妾を助けたつもりか?」

幼女はジト目でこちらを見る。

「一応、黒い影に囚われてたみたいだから・・・。」

「というか、アタシらが生きて元の日常に帰るためにやった行動の結果が、結果としてアンタを助ける事になっただけっスよ。」

「フン。随分と浮世の空気も久しぶりな気がするのぅ。前より空気が重い気がするが、まあ良い。・・・其方ら。妾の話を少しばかり聞いていくが良い。」

・・・何だ?ただのかまってちゃんなのか?

「良いけどよ。ここ、車道だから。歩道で話そうぜ?」

「車道?ああ、馬車でも通るのかの?」

「自動車っスけど。」

「じどうしゃ?」

「ほら、見てみ。アレだ。」

俺は幼女と華の手を引いて歩道へ戻り、偶然通りかかった黒塗りのの車を指した。

「ほきゃあああああ!?目(ライトが目に見えたらしい)が光っとるぞ!?しかもアレ、馬車より速いんじゃないかの!?何じゃあれ!?金属の馬!?」

「「・・・ガチか、これ。」」

俺達はこの幼女をただの古風or中二病な現代人の亡霊とばかり思っていたが・・・この幼女・・・本当にずっと昔に死んだ女の子の霊かもしれない。

「に、兄さーん!」

「来兎クン!華ちゃん!」

「皆ー!」

そして、この黒塗りの車を茉莉が手配してくれていた颯月組の車と教えられた俺達は、とりあえず3人で車に乗り込み、この幼女の話を聞く事になった。

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