シーズン2 焼け石にマグマ

第16話 心霊スポットに行こう

〜7月11日・午後3時30分 皆光学園・1年D組〜

いつもの高校のいつもの教室。今日もいつも通りに授業とホームルームが終わり、解散の号令がかけられる。解放された時間の始まりを告げる太陽の光が窓から差し込む中、これまたいつも通り、アナベルと猫菜が、寝ている俺を起こしてくれた。(良い子はホームルームで寝ちゃダメだぞ)

「来兎!起きてぇー!」

「来兎君。そろそろ起きる時間よ。」

「・・・ああ、おはよう・・・zzz」

「寝るなーー!!」

「いくら後遺症が残ってるからって、自力で帰るくらいできるでしょう・・・?」

「いいや、限界だ寝るね!」

俺が再び机に伏そうとしたその瞬間だった。

「仕方ないわね・・・。『寝子のツケ払い』。(テレパシー)」

俺が目を瞑っているにもかかわらず、真っ暗なはずの視界が真っ白に輝き出したのだ。

「・・・っ!!」

「今、ちょっとした術をあなたかけて、1時間分の眠気を強制的に抑え込ませてもらったわ。・・・ただし封じ込めた分・・・今後1時間、本来なら感じるはずだった分の睡魔は、ちょうどその効果が切れる1時間後、一気に襲いかかってくるから・・・帰ったらいつ寝落ちしても良いように、ベッドにでもスタンバイしておきなさい。(テレパシー)」

「後でツケが回ってくるやつか。・・・とりま、ありがとう。(テレパシー)」

俺はテレパシーで猫菜に感謝を伝えると、2人と一緒に、リュックサックを持って教室を出ていった。

〜午後9時 自宅・自室〜

「テンテテケテンテンテンテンテン♪」

・・・耳元で喧しく着信音が鳴り響く。

「・・・んあ?」

家に帰った後、猫菜の忠告通りにベッドへダイブした俺は、そのまましばらく長い昼寝をしてしまっていたようだ。そして今、クソうるさい着信音で再び目が覚めたところであった。目を開け、枕元にあったスマホを起動して画面に表示されている応答ボタンとスピーカーボタンを押すと、スピーカーから、聞き慣れた元気な声が聞こえてきた。

「もしもしーー!!来兎!」

「・・・何だ・・・?」

「今すぐ玄関に来て!」

「ハァ?」

「華ちゃんと桃矢も来てるよ!」

「だからどうした・・・。」

「みんなで行きたいところがあるの!あっ!今、茉莉ちゃんも来た!」

「今から行くのか・・・?こんな時間から・・・?どこに?茉莉も・・・?」

そういえば、時期はもう初夏だ。急激な温度上昇のせいでみんな血迷っているのだろうか。頭を冷やせ。お気を確かに。まだ間に合うぞ。

「実は今日、キミと一緒に帰った直後のアナベルクンから連絡をもらってね。」

どうでもいいけど、文字に起こすと「トムヤムクン」みたいだな・・・(「クン」しか合ってないけど)。

「それで、その桃矢さんから連絡をもらった私と市原先輩も、せっかくだからってついていくことにしたの。よかったら兄さんも一緒に来てほしいな。」

「ふぁぁ・・・珍しくアクティブだな、茉莉。」

「うん!夜のお出かけって・・・ちょっとワクワクするんだ・・・!」

「愛しの妹ちゃんが来て欲しいって言ってるんスよ?ほら、早く支度して出てきてくださいっス。」

「あ、これ行かなきゃいけない流れ?」

「もちのロンだよっ!」

「はぁ・・・。」

・・・まあ、いくら茉莉がいるとはいえ、確かにこのメンバーで心スポは不安だな・・・。それに何より、パーティの人数が奇数になってしまうのは少し危ないとは思うが、それよりも、茉莉を変態(桃矢)と一緒に行かせる方が、奇数の呪いなんかよりもずっと危ない気がする(友人への熱い風評被害)。それに、珍しくこんなテンションになった茉莉が来て欲しいと言っているのだ。ちょっとばかり眠くたって、これは兄として行ってやるべきなのではないかと思った俺は・・・早速、パジャマから私服に着替えて玄関へと向かった。

「しょ〜がね〜なぁッ」

「あっ!来てくれたんだね、兄さん。さ、行こ!」

「茉莉ちゃん、今日は珍しくアクティブだね!」

あ、ちょ、それ俺が数十行くらい前に言ったセリフ・・・。2回も同じことを書かせないでくれ。

「そんな茉莉たんも可愛いなぁ」

「「「テラキモス(笑)」」」

「まさか茉莉たん以外の全員から総攻撃を食らうとは思ってなかったよ」

逆に何故、茉莉以外からの攻撃を受けないと思ったのか・・・。

「そういえば皆、ライトかそれの代わりになるもの持ってきたっスか?アタシはスマホと予備の懐中電灯を持ってきたんスけど・・・。」

「俺はスマホだけだな。」

「私はスマホと小型ライトを持ってきました!」

「僕もスマホと小型ライトかな。」

「あたしはスマホと光るスーパーボール!」

いや、どうして小型ライトでも懐中電灯でもなく、光るスーパーボールを持って来たんだ・・・。フツーに懐中電灯でいいだろ・・・。

「よーし!じゃあ早速、今日の心スポ、『G橋』へ・・・出発ー!」

こうして俺達は電車でDI駅を介してDI市営地下鉄に乗り、G橋付近のYM駅へと向かった。

〜午後10時 G山駅〜

「よーし!着いたね!」

「着きましたね・・・!ドキドキ」

「着いたねぇ・・・。」

「「「はぁ〜。」」」

「何でみんなして着いた宣言してるんスか」

「「「地味に怖いので気を紛らわせたいです」」」

「「なぜ来た」」

・・・とか言ってる俺も、決して怖くないわけでは無い。場所が場所であるだけに色々とガチである事は確かだし、俺個人で言えば、こういうオカルト的な事が関係する時は、猫菜がいるといないでは安心感に天と地ほどの差がある。それに、ただの参加者である茉莉と桃矢はともかく、発案者のアナベルまでこのザマとは・・・。茉莉も、今回は展開的にこれまた珍しくネタ枠もといアホの子かもしれないし・・・これは俺と華がしっかりしないと・・・。このパーティー、もうダメかもしれない。

「えーと、とりあえず行こうぜ?まだここ、駅だし。」

「そうっスよ。ビビるのはG橋に着いてからで良いじゃないスか。」

「今更だけどすっごく怖くなってきたよ・・・何で心霊スポットなんかに行こうとしたんだろ・・・。」

「「「「こっちが聞きたい」」」」

「・・・でも、ここまで来たんだ。今更引き返せるかい?それに、茉莉たんの前で僕がこれ以上情けない姿を晒すわけにはいかないね!しっかりしないと!」

「カッコつけてる感溢れるセリフを吐いてもらってるところに水を差すような事を言うようで悪いけど、つまりお前はただ、吊り橋効果で茉莉を惚れさせようとしてるだけって事でおk?」

「・・・おk(なぜバレたし)」

そんな事だろうと思った。つーか、バレるに決まってるだろ。

「・・・でも確かに、せっかく来たんですから、この怖さを逆に楽しまなきゃですね(汗)!」

「そうそう。いいぞ、茉莉。その意気だ。じゃ、今度こそ行こうじゃねーか。例の橋によ。」

・・・ひと目見ただけで「あー、やせ我慢してるなー」と分かる程に茉莉の笑顔は引きつっていたが、ここではあえて触れずに、俺は、一足先に歩き出した華を追って橋へと向かおうとした。

「・・・っ!」

「!?」

その直後、俺の左手に強い負荷を感じた。驚いた俺がすぐに自身の左手を確認すると、そこには・・・小刻みに震えながら俺の左手を握っている茉莉の両手があった。・・・やっぱやせ我慢できてねーんじゃねーか。変にカッコつけずに、怖いものは怖いと言ってくれれば、手くらいは握ってやるのに。

「無理すんな。楽しみだけど怖いんだよな、うん。お兄ちゃんの手をしっかり握ってなさい」

「うんっ。」

「うおおおおおおおおおん(悲哀)」

そして、自身の両手で俺の左手を握り、さらにその左腕に身体を密着させる茉莉と、それをやられている側の俺を見つめては突然泣き出す桃矢。・・・あーもうメチャクチャだよ。

・・・やはり先が思いやられる。心霊現象とかお化けだとかそういうやつ以前に、生きている人間である俺達自身が何かやらかしてしまわないか不安で仕方がない。自分も含めて、このパーティーメンバー全員から目を離してはいけなさそうだ・・・。何が悲しくて、夜中にこんなところに来てまで生きている人間(しかも友人)の行動に目を光らせているんだか・・・。

などと考えながら少し虚しくなっていた俺は、左腕に密着している茉莉の温もりを感じながら、G橋まで歩いて数十分の道を、幽霊よりも生きている人間によるアクシデントに気をつけながら、進んでいくのだった。

〜午後10時20分 G橋付近〜

「え、えーと、じゃあ早速、ここの橋について説明しよーと思いまーす!『このG橋は、有名な自殺の名所として知られている橋であり、自殺防止のために柵が建てられたにもかかわらず、橋の脇から飛び降りる人が続出しているらしい、また、橋の下のKT渓谷には、遺留品とみられる物が散乱しているとの噂が・・・」

アナベルが声を張り上げて、その後、事前に調べてきたらしいネットの記事を淡々と読み上げていく。・・・そして、話が進んでいくにつれて、左腕に密着する茉莉の胸の感触がより強く、やわらかくなっていった・・・。

「おい、茉莉?」

「な、何ぃ・・・?」

「π乙が当たってるけど」

「当たっちゃだめ・・・かな・・・?」

「いや、当たっててもいいならいいんだけどさ」

「そう?なら・・・このままにしてたいな。少しでも多く兄さんにくっついてる方が安心できるから・・・。」

「・・・そすか。」

・・・しょ、しょ〜がね〜なぁッ。ま、まあ、茉莉が怖いって言うなら・・・これは兄として当然の事をしているまでだよな。背徳感なんか感じてはいけないよな。うん。(建前)

・・・本音は・・・お察しの通りです。大変申し訳ございませんでした。いくら相手が妹でもさすがに照れます。

〜G橋〜

俺達は一通りアナベルの説明を聞いた後、橋の上を歩いて何往復かすることにした。観光スポットであるOB城へと続く道でもあるため、日中は割と交通量が多いのだが・・・。流石にこの時間ともなると、通る車もだいぶ少なくなっている。・・・ただの橋のはずなのに、雰囲気が出すぎているあたりが少し気になるが、そういう不気味な雰囲気も心霊スポットの醍醐味なのだろうと思う。さすがに橋の上という何も無い場所に限ってアクシデントが起こるなんて事は無いだろう。そんな事よりも、茉莉が・・・。早く渡り切って、茉莉にはもう少し離れてもらわないと・・・。桃矢と華からの視線が痛いのだ。

「・・・やっぱり怖いけど・・・そろそろ行こ!みんな!」

「そうだね・・・。」

「兄さん、まだちょっとぎゅってさせて・・・。」

「しょ〜がね〜なぁッ」

「相変わらずラブラブっスね〜。さ、早く行くっスよ。」

・・・こうして俺は「猫菜じゃあるまいし、こんな状況で霊的なアクシデントが起こる事なんて無いだろう」・・・と、身近な人物の存在から何も学んでいないようなナメた事を思いながら、橋の上へと足を踏み入れた。しかし・・・この時期時の俺はまだ知らなかった。ガチの心霊スポットがいかに危ない場所かという事を。(尚、シリアス展開は訪れない模様)

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