第8話 幼馴染の料理が酷い件について

〜5月26日・午前10時 自宅・玄関〜

体育祭から3週間が経った。そして今日からまた、1週間が始まる月曜日なのだが・・・。

「どわあああああああああ!!寝過ごしたああああああ!!!」

久しぶりの大遅刻である。

茉莉は・・・当然、家にはいない。

「と、とりあえず学校に向かわないと・・・!!」

俺は急いでリュックサックと茉莉が置いて行ってくれたらしき弁当を持ち、学校へと向かった。

〜午前10時40分 皆光学園・校門前〜

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ・・・」

あー走ったぁ・・・。クソ疲れた・・・。

「にゃ〜ん。」

息を切らしながら立ち止まる俺の横を、真っ白な猫が通り抜ける。今すぐモフりたい気持ちは山々だが・・・こんなところで立ち止まっている場合ではない。とりあえず教室に向かわないと・・・。

「じゃあな、白いニャンコ。」

「にゃ〜。」

俺は少し回復したスタミナを全て使って、再び教室へと走りだした。

〜皆光学園・1年D組〜

「サーセン遅刻しましたァーッ!」

「ん・・・?ああ、来兎か。分かった。とりあえず座って、ここからでも授業に参加しなさい。まだ授業は始まったばかりだし、今から参加すればこの時間は欠課にならないからな。」

ふぅ・・・行われている授業の担当が担任で良かった・・・。担任以外の先生だと、教員室に行って学年主任に報告しなきゃいけないんだよな。

・・・俺はそのまま席へと向かい、荷物を机の中に収納して教科書とノートを開いた。

「おはよう、来兎君。」

「また寝過ごしちゃったのー?」

「その通り。何で学校ってこんなに朝早くから始まるんだろうな・・・。」

俺は、アナベルや猫菜と小声で喋りながら授業を受けた。

へ?遅刻したくせに不真面目だって?・・・そこは気にしたら負けだと思え、いいね?(つまりやる気ナシ)。

〜午後0時20分〜

それから俺達は普段通りに授業を受けた後、昼休みに入ってすぐに、3人で昼食を食べるため机をくっつけた。

俺が弁当箱の蓋を開ける。中には茉莉が作ってくれた弁当が入っていた。毎度の事ながら美味そうである。

猫菜もリュックから自作のツナサンドを取り出した。こちらもこちらでオーソドックスな見た目ながら、その見た目こそが絶妙なツナ加減を表す、実に美味しそうなツナサンドである。

そして最後に、アナベルが自作の弁当を取り出し、蓋を開けた。

・・・そして次の瞬間、弁当箱の中からとんでもない殺気を感じた・・・。

「「「・・・」」」

3人の間に沈黙が走る。

「・・・えーと、アナベル?これはどういう事かしら?」

真っ先に口を開いたのは猫菜だ。

「わかんない。茉莉ちゃんと華ちゃんに教わった通りのやり方で料理したはずなんだけど・・・。」

「嘘つけ。」

それでこんなケルベロスに与える生き餌みたいなのができる訳無いだろ。

「何というか・・・不憫ね。」

「あー!もう!何であたしが作るとこんな感じになっちゃうんだろう・・・?」

茉莉と華の力をもってしてもこのザマとは。ここまでヒドいと逆に清々しい気がしてくる。

「でもせっかく作ったんだし、一口くらいは食べなきゃだよね!」

そう言ってアナベルは、箸で小さなハンバーグ(・・・ハンバーグ?ハンバーグなのか?・・・もうよく分からないしハンバーグって事で良いや。)らしきものをつかみ、口に運んだ。

「「うわぁ・・・。(テレパシー)」」

黙り込む俺と猫菜。しかし、2人とも思わず本音がテレパシーで漏れてしまっていた。

「はむっ。むぐむぐ・・・バリッ!ボリッ!ギャァァァァァァァァン!グチャチャチャチャ!!メキ・・・グチョォ・・・」

アナベルの咀嚼音・・・?が聞こえる。果たしてこれを咀嚼音と呼んで良いのかはわからないが、とりあえず咀嚼音という事にしておこう。

こんなんでも、茉莉と華に言われた通り、ちゃんと作ったんだよな?・・・え、本当に、どうしてこうなった?

「ごくん。」

「!!?」

「オイ待て早まるなッ!!」

ええ!?あんなヤバげな咀嚼音を立てまくっていたハンバーグ(?)を飲み込みやがった・・・!?飲み込めるのか、アレ!つーか、飲み込んで良いものなのか!!?

「うっ・・・!!」

ほら言わんこっちゃない。

「「アナベルゥーーッ!!」」

「とりあえず蘇生の準備を・・・!(テレパシー)」

「頼む!(テレパシー)」

頼むとは言ったものの・・・蘇生術?え、そんなにヤバいの?あのハンバーグ(?)。

「・・・。なんか・・・。」

俺と猫菜があたふたしているうちに、アナベルがハンバーグを飲み込んだ後の第一声を発した。

「なんか・・・。」

「なんか!!?」

「どうした!!?」

蘇生の準備はできてるぞ!!(死ぬ前提という失礼極まりない態度)

「なんて言えば良いんだろう・・・。すごい力に目覚めそうな味がするよ・・・。うぷっ」

「「あっ・・・(察し)」」

俺はリュックの中から無言で黒いエチケット袋を取り出し、アナベルに差し出した。

「ありがと、来兎おrrrrrrrrrrr」

「「デスヨネー。」」

「ゲホッゲホッゲホッ!!・・・ごめん、うがいしてくるね・・・。」

「いってらっしゃい。」

「お大事にな、アナベル。」

その後、俺と猫菜はいつも通りに昼食を済ませたが、アナベルは吐いたばかりで食欲が湧かないらしく、その後、何も食べずに昼休みを終えていた。・・・後でチョコパンでも買ってやるとしよう。

〜午後3時30分〜

俺は放課後、アナベルと猫菜に声をかけて途中まで一緒に帰る事にした。

〜午後3時40分 皆光学園・校門前〜

「いやー・・・災難だったな、アナベル。」

「ホントだよ!!自分の事だけどっ!モグモグ・・・(俺が買ってあげたチョコパンを食べる音)。」

「早く、茉莉ちゃんと華ちゃんの同伴無しでも上手に料理を作れる日が来ると良いわね。」

「うん。今はまだ修行不足みたいだけど、頑張ればきっと上手になるよね!」

本人はこう明るく話しているが・・・。修行で解決できるものなのだろうか。アナベルの料理に乞うご期待である(皮肉)。

〜とある日の昼間〜

「アナベルさん、ここはこうやるんですよ。」


「何で豚バラ切り落としを水洗いしようとしてるんスか」


「よーし!あとはこうして・・・!」


「「「できたっ!!!」」」


・・・こんな具合で今日も、茉莉と華の料理教室が我が家で絶賛開催中なのだった。

正直なところ、時間によっては昼寝の邪魔になる事があったが・・・さすにあのアナベルの料理を見ているといつ爆発するか分かったものではないし、しばらく見逃してやる事にした。

頑張れ、アナベル(哀愁)。

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