第7話 波乱!はじまりの体育祭! 後編

〜午後0時30分〜

猫菜の障害物競走から一向に自分や知り合いの出番が無く、しばらくのお暇タイムを寝たりクラスメイト達と話したりして潰しているうちに、いつの間にか昼休みに入っていた。

「えー、これより昼休みとなります。生徒諸君は昼食を食べ、午後への力を充分に蓄えてください。」

実行委員長(先輩)のアナウンスが流れた瞬間、生徒達は一斉にリュックから弁当を取り出す。それに合わせて、茉莉も持ってきた手提げバックから大きな3段重ねの弁当を取り出した。

「じゃーん!これですっ!皆さん、遠慮せずに食べて下さいね。」

そして目の前で、おせち級に豪華な重箱の蓋が開かれた。

「「うおおおおおおおお!!」」

「これは・・・!相変わらず美味しそうね。じゅるり。」

そして蓋が開けられるや否や、俺達はこぞって溢れ出るヨダレを飲み込んだ。

そこは舌舐めずりじゃないのかと思うかもしれないが、残念ながら現実リアルで舌舐めずりする人は割と少ないのだ。・・・というか、いくら美味しそうだからといって、弁当の中身を見た瞬間に皆が下をペロペロし始めたら怖いだろ。

「いやー。アタシは休日を使ってまで、知り合いの出番も大して無いくせになぜかたっぷり時間をとるクソ程テンポ悪い行事体育祭に来た一番の目的がコレっスからね〜。楽しみにしてたかいがあったっスよ。さすが茉莉。」

「オイコラ。その休日を使ってまで来た体育祭クソテンポ以下略の会場で堂々とそんな事を口にしないで差し上げろ。」

・・・確かに、俺も元々は「早く家に帰って茉莉の飯が食いてえ」と思っていたが。

「じゃあいっただっきまーす!!むぐむぐ・・・」

と、そんな事を言っている間にアナベルがいち早く弁当を食べ始めてしまった。そして、口いっぱいに含んだ弁当を咀嚼しつつ、アナベルは頬を抑えながら無邪気な笑顔を見せる。

「ほわぁ・・・美味しい・・・!」

・・・本当なら「オイちょっと待てや食い過ぎだろーが」とツッコんでいるところだが、俺はこの笑顔には弱いのだ。ロクにツッコむ事も出来ず、1段目はアナベルが1人であっという間に平らげてしまった。・・・アナベルは自分の弁当も持って来ていたはずだが・・・。そっちはどうしたんだろうか?

「ぷはー!美味しかったー!満足満足!」

「アナベル・・・お前、自分の弁当はどうしたよ?」

「茉莉ちゃんの極上弁当があるって分かった瞬間に封印しちゃった☆」

「「「「「封印!!?」」」」」

「うん、封印。」

その言葉を聞いた瞬間、その場にいたアナベル以外の全員に沈黙が走った。

「一体、中にはどんなお弁当が入ってたんでしょう・・・?」

「ぜってーロクなもんじゃないっスよ〜。」

「地獄のおやつみたいな感じかしら・・・?」

「はたまた冥界のレーションかもしれないねぇ。」

散々な言われようである。

「あたしのご飯ってそんなにマズい・・・?」

「スマンそれは俺も否定できない」

「ぐはぁ(ハートブレイク)。・・・茉莉ちゃん!!華ちゃああああああああああああん!!今度料理教えてええええええええ!!」

「はぁ・・・そんな事だろうと思ったっスよ。ま、良いっスけど。」

「私達で良ければ喜んで!ふふっ。」

こうして今後、この弁当がきっかけとなって定期的に茉莉と華の料理教室が俺の家で開かれる事になるのであった。

〜午後1時30分〜

その後、俺達は弁当を各々食べ終えて、再び駄弁り始めた。そしてあっという間に時は過ぎていき、気がつけば、俺達の1つ前に行われる競技が終盤に差し掛かっていた。

「そういえば・・・次だね!来兎!」

「ん?ああ・・・それもそうだな。すっかり忘れてたけど。」

「フフッ。来兎クン。君には絶対負けないよ?もし前の人にかなりのリードを広げられていたとしても、必ず追いついて君に勝つ!!」

「それはコッチのセリフだな。イケメンの皮を被った鼻血ブーなんかに負けるかよ!」

「「ぐぐぐぐぐぐぐぐ・・・」」

俺は珍しく、桃矢と試合前からバッチバチの戦闘態勢に入った。ここまでアツくなるのは本当に久しぶりだな・・・。たまにはこういうアツい勝負も悪くない。絶対に勝ってやる!勝ってやるぞオオオオオオーッ!!俺と桃矢は、並々ならぬ覚悟を決めてスタート地点に立った。

「うわー、2人ともアッツいっスね〜。」

「よーし!頑張るぞー!」

「ふふっ。来兎君とアナベルちゃんの走りに期待ね。頑張って、2人とも。」

「兄さーん!頑張ってー!」

猫菜達が俺達の方を向いて応援してくれている。こういうのは素直に嬉しいものだ。絶対に・・・絶対に勝たなくてはッ!・・・そして、隣のレーンで茉莉を凝視しながら鼻血をドバドバ出してる某イケメン君(笑)に関しては・・・もういいや。見なかった事にしよう。

〜来兎VS桃矢〜

俺と桃矢はほぼ同じタイミングでバトンを受け取って走り出した。走るコースは直線、そして現在、順位は3位(俺)と4位(桃矢)。お互い譲らず、抜いて抜かれてを繰り返しながら中間地点を超えた。走る距離は50m。たった10秒足らずで終わる戦いを、こんなに長く感じた事は無い。それだけ集中しているという事なのだろう。

さあ、ラストスパートだ。最後の力を振り絞って、突き放さなくては・・・!

「「うおおおおおおおおおおおお!!」」

しかし、桃矢も同じことを思っていたようだ。俺がラストスパートをかけようと思い切り地面を蹴ると同時に、桃矢も全力のスパートをかけた。

気がつけば、3位と4位だった俺達は、いつの間にかスタート時に1位と2位だったクラスを追い抜かし、今は俺達が1位と2位になっていた。

・・・距離はあと10mくらいだろうか。次の走者がすぐ前に見える。そして、真横には走る桃矢の姿。くそっ!桃矢のスピードがさらに上がっている・・・!このままでは・・・!!

「兄さーん!勝ってーーっ!!」

茉莉の声が聞こえる。俺を応援する声だ。

「茉莉・・・!!悪いな、桃矢。この試合、俺の勝ちみたいだなっ!!!」

「な、なんだってぇ・・・!?」

みるみる力が湧いてくる。これが応援の力というものだろうか。ありがとう、茉莉。・・・後で茉莉に礼を言わないとな。

「うおおおおおおおおお!!」

「なっ!!来兎クン・・・!!」

こうして俺は見事、桃矢より先に14番目の走者へとバトンを引き継ぐ事ができた。

「いよっしゃあああああやったぜええええええfooooooooooooooフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「くっ・・・!!さすが来兎クン。」

桃矢は鼻血を垂らしながら、俺の手を握ろうとした。

「だーーーっ!!お前、鼻血出てるだろ!!手と顔洗ってこいッ!」

「ああごめんごめん。」

まったく・・・。他人の血は触るといろんな病気が伝染うつるかもしれないから、読者の皆様もむやみやたらに他人の血に触るのはやめよう。

その後、俺は17番目に走るアナベルを間近で応援していたが、特に順位は変わらず、16位の人が落としてしまっな3位という順位をそのまま保ち続けて、アナベルの出番は終わった。そしてアンカーでまた1人追い抜かれ、最終的に俺達の所属する1年D組のリレーは、7クラス中4位というビミョーな結果に終わった。ちなみに、桃矢が所属しているA組は2位だった。チッ(舌打ち)。

〜午後2時10分〜

その後、俺達はまたまたブルーシートへと戻り、閉会式までグダグダと駄弁っていた。(体育祭の9割近くグダグダ話して終わった気がするぞ・・・。いいのか、これで・・・。)

そして、何事もなく閉会式と帰りのホームルーム及び点呼は終わり、俺達はその後、何かをする事もなく、そのまま各々自分の家へ帰った。

〜午後8時〜

俺は帰宅直後、手洗いうがいと着替えを済ませ、すぐに自分のベッドに倒れ込み、帰宅して(午後3時15分)から5時間弱、眠り続けた。

「兄さん、起きて。ご飯できたよ。」

そして、茉莉の声によって目を覚ました俺は、すぐに茉莉と一緒に地元のニュースを見ながら晩飯を食べ始めた。

特に何事もなく晩飯を食べ終えた俺達は、その後、1時間半程格闘ゲームで茉莉と対戦した。一瞬たりとも油断できない死闘の末、勝負の結果は・・・。

〜午後10時10分〜

「ふぁぁ・・茉莉、相変わらずこういうの強えよなぁ・・・。」

24戦中6勝18敗。勝率にして、ちょうど25%だ。・・・くそっ。よくよく考えてみれば、俺が茉莉より上手いゲームって、レースゲームしか無かった気が・・・。ええい、ちょっと悔しいが、今はそんな事などどうでも良い(じゃあなぜ話した)。

「ふふっ。私、格ゲーでは絶対に負けたくないんだー。」

久しぶりに茉莉が少し調子に乗っている。・・・穏やかで優しいいつもの茉莉も可愛いが、たまにこうしてちょっとだけ得意げな表情を見せて調子に乗る茉莉も、これまた可愛い。

あれ、茉莉がなんかいつも以上に可愛く見えてきたぞ・・・。いや、確かに茉莉は芸能人並みの美少女だけど・・・(実際、俺が記憶を失う前にスカウトもされているらしいし)。

「ハッ!!」

俺は自分自身の、今まであまり感じた事の無い感情に驚き、思わず声を上げてしまった。

「?兄さん?どうしたの?」

「い、いいや、何でも。」

・・・少なくとも、記憶を失ってからこの感情を何かに対して抱いた事は無い。胸の鼓動が早くなって、頭がボーッとして・・・。これは一体・・・?

「じゃあ、兄さん。お風呂のお湯張っといたから、先に入っていいよ。眠いでしょ?」

「あ、ああ。じゃ、とっとと入ってとっとと寝るわ。おやすみ、茉莉。」

「うん!おやすみ。」

結局、この感情が何なのかよくわからないまま、俺は風呂に入ってベッドに再び倒れ込んだ。

「・・・。」

俺はこの感情について色々考えたが、それが睡魔に拍車をかけ、あっという間に睡魔に呑み込まれてしまった。

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