第3話 調理部のアイツ

〜午後6時30分 自宅・リビング〜

「〜。〜!」

「〜。〜。」

・・・?

「ふぁぁ・・・。」

俺は、下の方から聞こえる物音で目を覚ました。今は、(午後)6時半・・・か。何とか、朝まで寝過ごさずには済んだようだ。それにしても・・・茉莉1人にしては物音が大きすぎる気が・・・。誰か来ているのだろうか?

〜自宅・リビング〜

「ふぁぁ・・・おはよう・・・。」

「あっ!起きたんだね。おはよう、兄さん。今ね、市原いちはら先輩が来てるんだ!2人で一緒に晩ご飯作ってるから、もうちょっと待っててね。」

!!?市原って・・・。え、今年で中3だよな?受験生だよな!?・・・先輩らしく振る舞えてるのかなとか心配してたけど、さすがに中3にもなってのこのこと他人ひとに遊びに来ているのはどうかと思うんだけど・・・。

「お〜、久しぶりっスね、せんぱーい。」

「お前・・・これでも受験生だよな・・・?こんなところにいて大丈夫なのか?」

「あー。せんぱい、まーたオッサンみたいな事言ってるっスねー!そんなもん、言うほど大変じゃないっスから〜!・・・多分。」

・・・この気怠げな女の子こそが、俺が前話で言っていた調理部の「アイツ」・・・「市原いちはら はな」だ。

「多分て・・・。ちょ、おま。」

「ま、高校ダメだったらダメだったで、の連中に支えてもらうんで大丈夫っスよ〜。」

・・・ねぇ。」

がこんなんじゃ、も大変だろうに。

「いくらでも、あんまり組の人達に迷惑かけちゃダメですよ・・・?」

「ま、そこはダメだったらの話だから。大丈夫っス。」

「「ええー・・・。」」

「2人して何スかもう!失礼っスねー、プンプン。」

はぁ。こんな調子で大丈夫なんだろうか・・・。他に何か道を考えているわけでも無さそうだし・・・。俺は心配だよ。

〜午後7時 自宅・リビング〜

「ピーンポーン。」

夕食作り真っ最中の茉莉と華は聞こえていないようだが・・・インターホンが鳴った。

「はい。」

俺がインターホンに出ると、受話器の向こう側から、野太くて少し掠れたような・・・ゴツい声が聞こえた。

「すみません。お宅に、『市原 華』という女の子は来ていないでしょうか?」

ああ、組の人か。遅くまで乙です。

さて・・・ここまでの会話で大体察せているかもしれないが、華は、暴力団である「颯月組さつきぐみ」組長の娘なのである。そして今、迎えに来た人は・・・恐らく、幹部の人だ。俺も過去に何度か組長さんや幹部の人達に会っているが、組長さんが言っていたように、「悪事を行うための暴力団ではない」ためか、みんなフランクで良い人達だった。

「ああ、華なら今、キッチンで茉莉と一緒に晩飯作ってますよ。遅くまでお疲れさんです。麦茶、要ります?」

「いえ、お気遣い無く。オレはお嬢のお迎えに参上しただけなので。」

「うぉぉぉぉーーーい!!華!!組の人が迎えに来たぞーー!」

「エー!!せめて作った晩飯食べ終わるまで待ってくれっスー!」

「・・・ふぅ。仕方ありませんね。組長にはオレの方から適当に言い訳しとくんで、なるべく早めにお願いします。」

「もー、何であの組長オッサンはアタシをそこまで家に帰したがるんスかねぇ」

「お前が中三であり受験生であり娘だからだろうが」

「自分の子供・・・ましてや中学生の娘の帰りが何の連絡も無しに遅かったら、それは組長さんじゃなくても心配になりますよ・・・。」

「ちぇっ。・・・ま、ついさっき料理なら作り終えたんで、後は食べるだけなんスけど。」

「というわけで、兄さん。晩ご飯、できたよ。早く食べよう。あ、そうだ・・・お迎えに来たおじさんも、よければ一緒に晩ご飯、食べていきませんか?」

「良いのですか?」

「はい。ご飯はみんなで食べた方が美味しいですし。それに、ずっと玄関先で待たせておくのもどうかと思いますし・・・。」

「それでは、お言葉に甘えて・・・。頂きます。」

こうして俺は、茉莉と華、そして、その華を迎えに来た組の幹部らしき人と一緒に夕食を食べた。

「うおおお!美味いっ!!これやべーな!!」

「うおっ!!これは・・・お嬢と茉莉様が・・・!?」

幹部も納得の美味しさ。今日の料理は、一段と美味く感じた気がする。華も茉莉ほどではないがかなりの料理上手なんだった。なるほど、この2人が協力して作った料理が、逆にマズい訳がない。そして俺達はそのまま、2人の作ってくれた夕食を夢中で食べ尽くした。

〜午後7時30分〜

その後、華は幹部のおじさんに連れられ、真っ黒な車に乗って家へと帰っていった。・・・これで良いのか、受験生よ・・・。まあ、あちらにはあちらの事情があるんだろうし、俺にとやかく言う資格は無いが・・・先輩として、後悔だけはして欲しくないと思った。なんだかんだで、俺だって後輩の事が心配なのだ。

・・・アイツは確か、俺が中二の時に、茉莉の影響で中一の頃から俺が入っていた調理部に入ってきた新入部員だった・・・と、記憶喪失後に聞かされた気がする。少なくとも、俺の記憶喪失直後の時点ではすでに、今のような気怠げな態度だった。組長の娘という事もあってか、かなりの格闘術を会得(おそらく護身用)していて、学年に1人はいる隠れ強キャラ裏番長という印象だったが・・・実際のところ、喧嘩をした事は無いらしい。組長の娘ともなれば、喧嘩の1回や2回、売られていてもおかしくなさそうだが・・・いや、逆に、最近は物騒な世の中だし、小さい頃からニュースか何かで周りの人達は子供ながら組の怖さを知っていたから手を出されなかったのだろうか。うーん・・・。まあ、健やかに過ごすに越した事は無いだろうけど。

〜午後9時 自宅・自室〜

俺はしばらく茉莉と一緒にリビングで話した後、風呂に入り、歯磨きをしてすぐに寝た。・・・良い子ちゃんレベルに早い就寝だが・・・。やはり、後遺症による眠気には逆らえない。というわけで、おやすみなさい。

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