第1話 春眠暁を覚えず

〜4月7日・午前7時 自宅・自室〜

「ジーリリリリリリリィ!!」

YG県DI市。とある一軒家の一室で、けたたましく目覚まし時計が鳴り響いた。

「zzz...」

しかし、部屋の主である俺の目は覚めない。・・・無意識でスヌーズボタンを押してしまったようだ。

〜10分後〜

「ジーリリリリリリリィ!!」

スヌーズした目覚まし時計が再び鳴る。

「zzz...」

やはり俺の目は覚めない。再び無意識でスヌーズしてしまったようだ。

〜10分後〜

「ジーリリリリリリリィ!!」

「zzz...」

再びスヌーズ。

〜10分後〜

「ジーリリリリリリリィ!!」

「zzz...」

スヌーズ。

〜10分後〜

以下省略。

〜10分後〜

略。

〜午後2時(さらに6時間後)〜

「どわあああああああああああ!!」

だーーーーっ!!終わったぁぁぁあ!いや、オワタァァァァァ!!何回スヌーズしてるんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁ(42回です)!!入学式で遅刻するとか冗談じゃねーよ!言うならば「固有デバフ」が祟った・・・というやつなんだろうが・・・。こりゃあいろんな意味で「仕方ない」じゃ済まないっ!!大抵の学校では、入学式初日の時点で初期グループ的なものが作られている場合が多い!故に、「入学式休み=ボッチ率超絶アップ」なのである!

・・・どういう事かって?

プロローグに書いた通りの体質になってしまった故に寝坊した俺は、ボッチ率超絶アップとかいうクソみたいなデバフがかかってしまった状態という訳だ。

「テンテケレンテンテンテン♪(着信音)」

?誰からだろうか。電話が・・・。俺はソファに座り、スマホの「応答」ボタンとスピーカーボタンを押した。

「もしもーし?私、入学式の上級生代表の発表が終わったので、そろそろ帰るけど・・・兄さん、入学式出なかったの?」

「へ?あ、ああ・・・。寝過ごしちまったみたいだ・・・。すまんな、心配かけて。つーか、何で知ったんだ」

「父さんに学校から連絡が来たんだって。兄さん、大丈夫?具合悪くない?」

「具合は大丈夫。・・・学校での地位はドン底になった気がするけど。」

「そう?良かったぁ・・・また寝たきりになったらと思うと、心配で・・・。後遺症、早く治ると良いんだけど・・・。」

「治るものなら、な。ふあぁ・・・。じゃ、切るぞー。」

「うん!すぐ帰るね。」

「ハーイ。」

今のは、「茉莉まつり」からの電話だ。茉莉は俺の妹で中学二年生、可憐で博識、そして温和な性格の持ち主・・・一言で言えば『よくできた女の子』である。

それにしても眠い。やっと起きる事が出来たが・・・ホント、この後遺症には困らされるものである。ひとまず今は昼時・・・。茉莉も腹空かして帰ってくるだろうし、飯でも作っといてやるk

〜午後3時〜

「兄さん!起きて!ご飯、冷めちゃうよ!」

ハッ!!いけないいけない、またソファで寝てしまった・・・。

「いやースマンスマン。ついまた寝ちまったよ・・・ふぁぁ」

「もう、兄さんたら・・・。あ、そうだ!さっき連絡もらったんだけど、お隣の『長月さん』・・・(午後)4時くらいから、兄さんの様子見に来てくれるんだって。」

「長月さん・・・?ああ、『アナベル』か。・・・今日は何に付き合わされるんだか。」

「そんな言い方しちゃダメだよ?せっかく、兄さんが間違って寝ちゃわないように見に来てくれてるのに・・・。」

「アイツといるとツッコミ疲れるから余計眠くなるんだよなぁ」

・・・アイツの名は「長月ながつき アナベル」。フランス人の母と日本人の父を持つ幼馴染の金髪美少女だ。ぱいは無いが(オイ)。俺とは3歳の時に、地域の行事で知り合って以来の付き合い・・・らしい。まあ、例の事故があった中二までの「人」が深く関わる出来事の記憶は無いため、俺が知っているのは中二以来のアナベルだけだが。それでもアナベルは、記憶喪失になった俺の記憶を何とか取り戻そうと学校を休んでまで協力してくれたり、学校に復帰してからも色々と教えてもらったりと・・・たくさんお世話にはなった。しかし、いかんせん天然ボケであるため、一緒にいるとツッコミ疲れてしまうというのが難点である。一緒に居て楽しく無いと言えば嘘になるが・・・。

「とりあえず兄さん、早くご飯食べて。冷めないうちに。今日のお昼ご飯はナポリタンだよ!」

ここで茉莉から「早よう飯食え」コール。語り手の語りは邪魔しちゃいけないんだぞープンプン。

俺は椅子に座り、用意されたナポリタンを口に運ぶ。

「むぐむぐむぐ・・・うん!美味い!」

やはり、茉莉の料理は絶品だ。茉莉の料理センスは抜群で、初めて料理に挑戦した時、初心者特有の無茶苦茶なレシピからとんでもない絶品を作り出したという話を記憶喪失直後に父から聞かされた気がする。それ以来、よっぽど食材がヒドくない限り、どんな無茶苦茶なレシピからでも絶品を作ってしまうという特殊能力じみた料理センスを日々惜しみなく発揮している。・・・それにしても、「うん!

美味い!」って。我ながら何というCM臭い言い回し。もっとマシな言葉は選べなかったのだろうかと。

「良かった!」

「ピンポーン。」

そして俺が茉莉のナポリタンを味わっていると、まんまとインターホンが鳴った。マジで空気読めっつーの・・・。せっかくこちらは妹の絶品料理を味わってるってのに・・・。

「はーい。あ、アナベルさん!さあさあ、上がってください。」

茉莉が鍵を開けたようだ。・・・あー、アナベルか。これでセールスマンとかだったらそいつを軽ーくブン殴ってたけど、さすがに友人、しかも女子を殴るのは気が引けるからやめておこう。

「やあやあ!どう!?体調は!あ、これ、今日もらったプリント!テーブルに置いとくよ!」

相変わらず「!」が多いな・・・。眠い時はなかなか心身に応える・・・。

「うぃっす。ありがとな。」

「ううん!どうせお隣さんだし!」

「ありがとうございます、アナベルさん。そうだ!今晩、うちでご飯食べていきませんか?父さんから、今日はアナベルさんのお父さんとお母さん、仕事で帰ってこないって聞いたので・・・。」

「お、いいの!?やったー!いやー!今日はおこげしかないオリジナル炒飯を食べなくて済むんだね!!」

「お前はお前で料理音痴過ぎだろ・・・食べ物で遊ぶんじゃない」

「遊んでないもん!ただ、煮る蒸す焼く炒める揚げる・・・どれをやってもDarkmatter暗黒物質が生成されちゃうだけで」

「『料理=暗黒物質生成』になってる時点で遊んでるのとほぼ同義なんだよなぁ」

つーか何だよ、おこげしかない炒飯て。ただのコゲの塊じゃねえか。

「じゃあ、もう少ししたら夕食作るので、アナベルさん。兄さんをよろしくお願いします。」

「はーい!!」

「さすがにもう眠くないんだけどな」

「まーまーそう言わずにぃ!!一緒にゲームでもやろーよー!」

「・・・ま、たまには良いかもな。」

これまた後遺症のせいであんまりゲームやる時間作れなかったが、俺自身、ゲームは大好きだ。こんな体質でもなければ、俺は今頃ずっとゲーム機やらスマホやらをイジっていた事だろう。

そして俺とアナベルは2時間くらいゲームをして、その後、茉莉の作った夕食を3人で食べた。

〜午後9時〜

「じゃ、あたしはそろそろ帰るよ!明日は学校来れるといいね!」

「ああ。心配かけてすまんな、アナベル。」

「何の!そんなの今更だよ!気にしないで!」

「ホント、スンマセン。」

「今日はありがとうございました、アナベルさん!」

「いいのいいの!それにしてもホント、茉莉ちゃんは良く出来た妹さんだねぇ!一家に一人で欲しいくらいだよ!これは光輝がシスコンになっちゃう気持ちもよくわかるね」

「茉莉は定番家電じゃねーし、逆に妹を可愛いと思わない兄なんてそうそういねーだろ。」

「わかんないよ?ネットとかだと、『妹まぢウザいんだけど』みたいな記事、結構見るし」

「その記事の書き手はギャル男か何かなのか・・・口調やべーな。ま、少なくとも俺は茉莉を自慢の妹だと思っているけど」

俺は茉莉の頭を撫でる。

「えへへ・・・。」

すると茉莉はこちらに頭を寄せ、頬を緩めた。・・・。

「ホントーにそれだけ?異性として意識しちゃったりしないの?」

「うわコイツウゼー。アニメの見過ぎだっつーの」

「あだじだっでがわいいいもうどほじいんだじょー!(あたしだって可愛い妹欲しいんだよー!)」

「頭悪そうな喋り方だなぁ。」

何だこの既視感というか・・・。「〜だじょー」って。

「あはは・・・。」

「じゃ、また明日ね!光輝!」

「ああ。じゃあな。」

「今日は本当に、ありがとうございました!」

アナベルが帰った後、俺はすぐに入浴し、そのまま布団に入った。

明日こそは登校できますように・・・。俺は「ボッチ」となる恐怖に少し怯えながらも、高校生活の始まりに期待を込めて、そのまま意識を夢の中へと飛ばしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます