お前らのせいで俺はロクに眠れていないんですが

最上 莉駒

シーズン1 ラブ<コメ

プロローグ 眠ったままの時

〜2015年・4月のとある日〜

俺は、今月から高校一年生になる「坂下さかした 来兎らいと」だ。生まれてから4年後に両親が離婚し、母親が家を出て行ってしまって以降、中二の妹と共に、男手一つで育てられてきた・・・らしい。 あの事故が起こっていなければ、俺は特に目立つ特徴も無い、ただの青年だったのだが・・・その事故こそが、俺の運命を大きく狂わせるきっかけとなったのだ。

〜回想 約2年前〜

「ニャー!ミャー!」

とある日の4時間目、教科は先生の都合により自習。一体どこから来たのだろうか。小さな黒猫が学校の木の枝に伏せたまま動けなくなっている。

「ねえ、どうするの!?」

「先生呼んでこようぜぇ!?」

「いやでも、せっかくの自習が・・・。」

「んな事言ってられないだろう!?」

教室内では騒ぎが起こっている。クラスのみんなは色々と回りくどい方法を考えているらしいが・・・。この教室がある場所は3階。飛び乗ればギリギリ自力で助けられる距離のはず。

「・・・俺、行ってみるよ。」

「え!?オイ、やめろよ!」

「無理だって!」

「さすがに危ねえよ!」

「来兎!」

当然、クラス中から制止を受けた。しかし、

「みゃー・・・」

風が吹くたびに揺れ動く枝に怯える黒猫の鳴き声は、俺に友人達の制止を振り切らせ、その身体を震える猫の元へと飛び込ませた。

「うおおおおおお!!今助けるぞ!猫!!」

「みゃみゃっ!?」

俺は窓枠を乗り越えて外へと飛び出した勢いで、黒猫が伏せている枝の前を横切ると同時にその猫を抱き抱え、そのまま仰向けに地面へと落ちていった。

「ドタンッ!!」

黒猫は俺が抱き抱えたままだったため無傷だったが、俺の方は、猫を守るために両手を使ってしまっていたがために、そのまま受け身も取れずに後頭部から地面に落下してしまった。

「来兎ーーー!」

「大変だ!!」

「先生!!来兎がぁーー!!」

・・・俺が意識を取り戻したのは、それから十数時間で経った後だった。

〜翌朝〜

目覚めると、俺はどこかの病院のベッドで眠っていた。体感では3日近く眠っていたはずなのに、まだ眠い。

「・・・うおおおおっ!!来兎!!起きたかー!!パパ心配したぞ!」

「兄さん!ああ・・・良かった!!」

「・・・?」

ベッドのすぐ側には父親を名乗る30代半ばくらいの大男と、妹を名乗る美少女が立っていた。俺は確か、学校で猫を助けるために窓から落ちて・・・。という事は、俺の意識が戻った事が嬉しいのか?何故が目を覚まして嬉しいんだ・・・?

「あのー・・・」

「どうしたんだ?来兎?」

「兄さん?」

「・・・あなた達は誰なんですか・・・?俺の・・・何なんですか・・・?」

〜回想終了〜

その後、退院しても俺は後遺症(とても眠くなりやすくなるとかいうクソみたいなデバフ)を理由にしばらく学校を休み、色々とアルバムやら何やらを見せてもらったり、心に刻まれた思い出がありそうな場所に連れて行ってもらったりした。しかし、そこで何をしたかは思い出せても、どうしても「身近な人間」が深く関わる記憶だけが思い出せない。俺はどんな人と友達で、どんな人とどんな事をしたんだ?

そして何も思い出せないまま、俺は「新しいクラスメート」として再度学校へ行き、かつて幼馴染や友人だったらしき人達にいろいろ支えてもらって、何とか、記憶を失う前に仲が良かったらしい人達が多く志望している高校へと進学する事ができた。

何だかんだあったが、こうして今に至る。俺は未だに記憶を失う前の人間関係に関しては何も思い出せないまま、高校一年生の春を迎えた。

一応、友人曰く、「関わり方は前と少し違うけど、やっぱり来兎君は来兎君だね」と言われるまでには面影が残っているらしい。それ故かは分からないが、やはり家族だったらしい2人や、かつての幼馴染やら友人やらを名乗る人とは、不思議と話しやすいものであった。そして、誰よりも・・・妹の「茉莉まつり」が、一番話しやすい人であった。

「・・・。」

とりあえず俺はこんな調子であるため、大学に行く予定は無い。よって、高校生活は眠って過ごそうと思う。

具体的にどういう事かというと、後遺症のせいだ他人よりも少しばかり多くの睡眠が必要なため、正直、一般的な高校生の部活やら趣味やらをやっていては、家での睡眠時間がバリクソ足りないのである。本当は学校でもずっと寝ていたいが・・・先生に失礼な態度をとるのはさすがにマズいと思い、授業中は避け、それ以外の休み時間やら放課後やらを全て眠りに使う事にした。

さあ、夢溢れる学校生活の始まりだ。文字通り、夢の溢れる・・・。

zzz...

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