第 七 章 1
「海、おまえ顔真っ青だぞ」
顔を合わせるなり、晶に眉をひそめられてしまう。
「あんまり寝てないから。この間ありがとね。レスキュー代金、うちに請求しといて」
晶の正一捜索は、徒労に終わっていた。
「そんなのいいよ。それよりおまえほんとに大丈夫なのか」
「やだ、もしかしてクマとか浮いちゃってる?」
「おい海」
笑って返したら、晶はちょっと怒った顔で言って、あたしの袖を掴んだ。
そうだよね。あたし、晶に泣きついてたもんね。
「ごめん。でもほんとに大丈夫。マシン組んでたら徹夜になっちゃっただけだから」
「それなら、いいんだけどよ……」
「あいつのことでとか、そういうんじゃなから」
正確に言ったらあいつも関係しているけど、晶が心配してくれている点は大丈夫。
肉体的には、今すぐにでも
「今夜はちゃんと寝るよ。っていうか寝まくってやる。でもこのレースが終わるまでは、そんなこと言ってられないでしょ」
HRCミニバイク選手権第7戦、
世界へと続く、スカラシップの座をかけた戦いが、今日決する。
レースの前に、改めてポイントラインキングをチェックして、あたしは目を見張った。
なんと、悠真、久真、岩代さん、そして哲求くんの四人が同一ポイントで並んでいたんだ。このレースの勝者がチャンピオンを獲得し、人生を変えるチャンスを手にする。
「大切なレースだからね。レースが終わるまでは、気合入れていくよ」
「それは、わかるけどよ……」
「ほんとにありがとうね、晶」
あたし、晶にいくつ借りを作っただろう。
「心配かけちゃったよね……でも本当に大丈夫だから。あたしを信じて」
お腹に力を込めて、あたしは告げる。
わかった、と晶は肩を大きく上下させる。
「まぁそれに、レースに関しては、海には悪いけど
「上等」
あたしたちは
「ポディウムで会おう」なんて
「晶、待って」
あたしは呼び止める。
「これ、渡しとく」
晶は差し出されたそれに目を落とし、はっと顔を上げ、見開いた目を向けてくる。
「森屋のノート。あたしたちが知りたかったこと、書いてあるから」
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