ここはどこ…?

 僕は森へと歩き始めた。お父さんとお母さんに会いに行くんだ。そう決めたんだ。だからこそ僕はいくんだ。森に続く細い道を歩いていくと、やがて水が流れていく音とともに古い橋が見えてくる。お母さんはこの音をせせらぎの音と言っていた。その音は僕をいつも慰めてくれるんだ。


「大丈夫、君ならできるさ」


 そう言ってくれる気がするんだ。橋の上に立ち、浅い谷の下に流れる川に向かって話しかけた。


「やあ、おはよう。いい朝だね。」


 彼は何も答えてはくれやしない。そりゃそうだとも。生き物ではないからね。


「今日からお父さんとお母さんを探しにいくんだ。だからここに帰ってくる時は、お母さんもお父さんも一緒に連れてくるからね!」


 そう、いつかお母さんとお父さんとまた3人でここに来るんだ。かつて両親と仲良く歩いた散歩道を一人で歩き出す。見慣れた景色を眺めながら。


 どれだけの時間歩いたのだろう、気づくと知らない道に出ていた。少し景色を見すぎていたみたい。戻ろうと後ろを向いた。だけど…


「あれ…道が…」


 今まで歩いてきたはずの道がなく、あったのは木々と湖だった。明らかにおかしい。だがこれで中に入って迷子になればそれこそ意味がなくなってしまう。どうしよう…そう思った。すると大きな音とともに風が強く吹いてきた。


「えっ!?」


  ズザザーッ‼︎


 思わず振り向いた。そこには2つの人影。一人はピアスに薄緑の短髪の男性、もう一人が横髪を三つ編みで後ろに留めたスーパーロングの眼鏡の女性。驚きの声を漏らす僕をはっと彼らは見た。細身の男性が驚いた様子を見せる。


「やっば!?何でこんなところに一般人が!?」


 隣の女性は落ち着いていた。


「アイツは私がやる。その子をお願い。」


「オッケー」


 そう言った男性は僕に近づいて、


「手ェ離すなよ〜…!」


 そう言った彼は強引に僕の手を取り、地面を蹴った。

 一気に空高く飛び上がる。


「うわぁあぁあぁぁぁぁぁあ!?」


 一気に飛び上がり地面が遥か下に見える。


「ほら、歩けよ」


「はっ!はい…」


 さっき彼らが飛んできた逆方向に歩く。

 彼は僕の反応を見て笑っている様だ。

 僕にはそんな余裕はない。

 とっ…とにかくおろしてえぇぇぇぇぇ!!!


「名前はなんつーの?お前。」


「えっ、あっ、えっと…、です…」


「あ??」


「えっ、えっと…」


「オッケー、とりあえずここにいろよ。」


 ついた所は木でできた小屋で、扉は見た目よりも軽いみたい。中にはいると、机を囲む様に椅子がいくつかある。


「んじゃー、すぐ戻るからな。」


 そう言った途端、行ってしまった。

 名前違うんだけどな…


 それからは、適当に椅子に座って待っていた。

 十分くらいだろうか、外からズサッと音が二回聞こえた。

 扉が開いて入ってきた二人。


「よっ、いいこにしてたか?」

「さっきは、ごめんなさいね、ルックさん。」


だっ…だから名前…!


「は、はい。全然!」


だけど、言えずじまい。


「そう、よかった。」


 そう言うと、椅子を奥からだし座った二人。

 二人とも首を傾げた様子で僕に問いかけた。


「ルックさん、あなたはどこからきたのかしら?一人でいたけど、どこから入ってきたの?」


「僕は、キリルの町にいました。両親を探していて森を歩いていて、気づいたらここに…」


「キリル…ルーズ知ってる?」

「俺地理苦手〜」

「はぁ…本当使えない…」

「んだよ〜!ひでえなぁ〜」

「はぁ…リムに聞くしかないわね。」


「あっ!ちょっと待ってください!」


 近くの街の地図を持ってたんだった。

 それを見せたらわかってくれるかも!

 たしかリュックのポケットに入れていたはず…あった!


「これ、ぼくが住んでいた所の近くの地図です!」


 驚いてこっちを見る二人、僕が差し出すと、興味津々で見始めていたが、やがて顔を見合わせ、地図を返してくれた。


「ここは…」

「みたことねえなぁ…」


 二人とも声を困っている様だった。

 そんな状況が数分続いた。

 僕はこの状況を返すため、名前を聞いた。


「俺はルーズ・エリィ。だぜ。」

「私は、”The blue sky”の幹部のメアリー・クロウ。この剣を見たらわかると思うけど、をやっているわ。ちなみにルーズも同じギルドの幹部よ。」


「ぎ、ぎる…?魔道士…?剣士…???」


「…何も知らないの?」

「おいおい、なにも知らないってどんなサブロッドだよ…」

「あら、文字読めないのによくそんな言葉を…」

「うるせー、俺だって勉強してんだよ!」


 思わず苦笑いが出る。

 でも…まず…ここは…


「すいません、ここって…」


「あぁ、そうよね。ここはリブネスの湖の………あ…」

「ん?どーしたメアリー。」

「リブネスの噂よ。あの人攫いの妖精がいるとかなんとかの。」

「そんな噂俺聞いたことねーよ?」

「ルーズは興味ないからでしょう?ギルド内放送あったわよ。」

「ゲゲっ…」

 苦い顔を浮かべるルーズさん。


「僕、その人攫いに…?」


 そんなの聞いたことない。

 もう僕の頭は、パンクし始めていた。


「いや、今はわからない。でもその可能性は高いわね。その証拠に…」


 メアリーさんはルーズさんの方向を見た。


「Come out to face me.」


 ルーズさんはいきなり何かを唱えた。

 すると、僕の横に現れたのは、体の後ろに体より大きな羽がついた10cmほどの女の子が飛んでいた。


「ひぁっ!?」

「え!?」


 うろたえる女の子。

 僕は次から次へと驚くことが出できて、もう混乱しはじめていた。


「いつからこの子についてきていたの?」


「えっ…えっと……」


 その女の子に厳しい目を向ける二人。

 女の子は落ち着きを取り戻し、話し始める。


「森を歩いてる彼を見つけて、見ない顔だなぁって思ってついてきただけなんです…」


「本当なの?こんな勝手に主人契約までして。」


「ぎくっ…」


「こいつ閉じ込めるか?」

「えぇ」

「オーケー、Kage.」


「えぇっ!うそっ!?やだっ!許してぇっ!」


 ルーズさんが唱えると女の子の周りに檻がサラサラとできていく。

 一体何を言っているのか僕には分からなかった。

 なんだかクラクラする…意識がだんだん遠のいてるいるような…


 …バタン!


 メアリーさんとルーズさんの慌てる声が聞こえる。

 だけど、体が動かな…い…

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