第499話―タナカまり改造計画―

明日には雨が降るかもしれない。

サファイア家に養子となってから会う頻度を減っていた比翼ひよが家に遊びに訪れる。

そして俺は家の前で比翼がやってくるのを待っており、数十分も過ぎれば無聊をかこつと雲の流れを眺めていた。

小さな雲が集まって群れをなした雲、うろこ雲が漂っていた。

視界の下に高級車が入る。そのまま横切ると思った停車した。

なんだろうと高級車の方へ向けると自動ドアを開いて、そこから飛び降りてきたのは…箙瀬比翼えびらせひよだった。


「フム、出迎えご苦労であるなぁ…

久しぶりだね。おにいちゃん」


「比翼、すごい登場だね」


「スゴイのはサファイア家なんだけどね…おっとっ!わたししたことが、忘れていたぜ。おはよう」


「ああ、おはよう」


なぜか冬雅や真奈の影響またはサファイア家の家訓なのか比翼は挨拶を

こだわる癖がある。

もし二択のうち選択するなら冬雅や真奈の影響が大きいと思う。

人は置かれた環境で人格や能力を大きく左右される。それは子供とか大人など関係なくと持論を持つ。

頭をなでるべきかなと悩んでいたら

高級車は比翼が置いて走り去っていた……あれ?車で行かないの。


「わたしの専属の運転手さんには久し振りにおにいちゃんと歩きたいからと伝えていたからね」


「そうなのか」


顔に出ていたのか比翼は俺の小さな疑問を応えてくれた。

高級車リムジンだと思われる運転手が専属などつけたのかとサファイア家の

待遇に感謝するのと、どれだけ財政や

権力があるのか

畏怖の念を抱くほどの衝撃だった。


「一人だけ…じゃないよね。

冬雅おねえちゃんや真奈おねえちゃんが姿を見えないけど準備中なの?」


視線を巡らして隣に二人がいないことに比翼は首を傾げて訊いてきた。

どうしていつも隣に彼女たちがいることが当然のような認識なのかと反論は…出来ない。

受験が終わって大学生になってから講義はオンラインもほとんどで居られる時間が増えると喜んでいた。

けど、たまには大学を満喫させようと勧めている。

その度に同じ返事だったけど…。


「いや二人には学業とか大学ライフを時間を使ってほしいからね。

冬雅は自宅で講義を受けているよ、同い年と会話もあるとか。

真奈は研究発表とかの学術的なイベントがあるらしいから参加。

参加と言ってもオンラインだけどね」


知っているのはここまでで講義の内容までは聞いていない。


「おねえちゃんたちが…それ、おにいちゃんが大学ライフを強く勧めたんだよね?

わたしは別にいいんだけどアドバイスするなら後で滅茶苦茶などんでん返しというやつが来るよ」


比翼お嬢様は欧米人ごとく肩を竦めてわざわざ忠告した。


「……そうかもしれない」


そう。

そこが心配だった。

冬雅と真奈が一日だけ空いた分の時間を取り戻そうとするのが今年で嫌というほど学んだ。

正直ここまで想ってくれるのは歓欣鼓舞かんきんこぶなのだけど、どういった行動され急距離を取ったり

約束を交わしてしまうのが一種の怯懦きょうだを感じている。


「談笑このへんにしようか。

じゃあ、そろそろ行こうよ!

しなずがわちゃんの家に」

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