第427話―忍耐のゴールデンウィーク―

テレビをつけBGMに俺はソファーに腰を下ろして目の前に置かれた執筆していた。

マルチマスクをこなせる人は世界で2%ほどしかいないとされている。人間は一つのことに注力するのに時間がかかり複数となれば注力散漫する。要すると人間は複数を処理は出来ても全力では発揮は出来ない。次に切り替えっても集中力が発揮するまで時間が

必要で、これを注意残余ちゅういざんよと呼ぶ。それも日常にマルチタスクをしている人ほど注意残余が強くなる。そのメカニズムを知っていながらも俺は複数を処理している。例えば

流れてくる早朝の報道が耳に入っている。

今年のゴールデンウィークは、我慢を強いられるらしい。


(外なんて地獄門の契約書みたいなものだからなぁ…生粋のインドア派としては

我慢を強いられているのはピンとこず家で執筆は出来るのと読書日和が増えて全然なにも苦じゃないから流れる

ニュースも、どこか他人ごとみたいに

俺は聞こえている)


でも報道番組って関心を持っていない情報もあるから一概にすべて見ているなんて滅多にいないから、そんなに

卑下する必要がなかったかな?


「お兄さん、頑張っている所すみません。少し休憩にしてお茶にしませんか?」


真奈の声に首を動かしてテーブルの方へ向くと洋菓子や紅茶が用意されていた。


「ああ。分かった」


俺は、パソコンを閉じると席を立ってダイニングテーブルに進んで椅子に座る。

普段着の上にエプロンを付ける真奈。女性が妬みそうなスタイルの真奈がエプロンすると色気が醸し出しているように感じる。けど聖母のような

慈悲に包まれた笑顔を見ると、それが対極的な魅力にドキッとさせられる。

もう春が過ぎて季節は夏に近づくにある4月29日。午後の3時で、俺は美少女と二人きりで3時のおやつタイムに入る。

社畜時代と好意を向けられず時代の俺が聞いた血涙を流していたんじゃないかなと思える、ほのぼのとした空間。


「まだ高度な菓子に挑むのは難しいと諦めて、確実に成功が出来そうなクッキーを作ってみたのですけど…お兄さんの口に合うか不安で…」


「そんなことないよ。絶対に上手い!

鬼才を超えられし真奈さまなら絶対に美味なはずだよ」


「そ、そうかな…フフッ。お世辞でもべた褒め受けるのは嬉しい。

いつかお兄さんの隣に立ちたいですので」


「もう隣に立っていると思うけどなぁ……あれ?いまさらだけど真奈どうして今日は隣じゃなく正面なんか座っているんだい?」


なにかあれば隣に座るのが当たり前になり過ぎて強い違和感を覚えていた。

どの訊くタイミングで切り出すかを窺っていたが、ここで関連つけて思い出して尋ねることを演じてみた。


「その、お兄さんに…あーん食べさせたくて」


「それなら納得……出来るわけない。

真奈わるいけど――」


「駄目…ですか……」


「………オーケーデス」


不安げに上目遣いには否定という概念は消えていた。ゴールデンウィークで冬雅は家族と、ゆっくり過ごさないといけないと血を吐き出して掠れて弱々しくなった声で昨夜そう言っていた。

もしかしなくても…二人きりの機会を最大限にイチャイチャしようと真奈は

計画を立てているのか?

いや、一瞬よぎったが不器用で天然な真奈が策謀を巡らすのは最も苦手とされる。


「そう言ってくれると信じていました。はい、お兄さん!あーん」


「あ……ん」


せめての抵抗のため間を作って声を発して口に入れたクッキーを咀嚼する。

ふむ、ふむふむ、甘さが口の中に広がって食べ応えがあり美味しい。


「また腕を上げたね。美味しかったよ」


「はい!心から込めた成果が功を奏したのかな。お兄さん、その…隠し味はねぇ、ワタシの愛情なの」


視線だけ小刻みな動いて真っ白な頬は赤らめている。見ている側まで恥ずかしくなってくるのですが真奈さん?


「あ、愛情……」


「フフ…恥ずかしいですけど、やっぱり誰かを想って愛情を注げば美味しくなるよねぇ」


「…えーと、黙秘をします」


高校生だった彼女が卒業して同棲生活でグイグイと来られるのだが。

きっとタイトルをつけるなら、これだろう。まぁ、8割が甘えたり尊敬されているが。


「お兄さん…その今夜の予定なんだけど、お風呂にしますか?献立のリクエスト?それとも、今日はワタシとイチャイチャ……し、しませんか」


これって新妻が言う普遍的なアレかな?かなりアレンジされていて、にいづまか!?なんてツッコミが出来ない。

最後のイチャイチャってなんだろう?もしかして真奈さんは、あ~んがイチャイチャとカウントしていない?

この仮説が当たりなら絶対にイチャイチャを選択しないようにしよう。

18禁な展開は苦手だし。


「そ、そうだね…とりあえず真奈の大学とか聞きたいかな?」


「ワタシの?興味を持ってくれるなんて嬉しいよ、お兄さん」


満面な笑み。守りたい笑顔が、ここにある。それだけ俺は真奈を好きになっているのか。

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