第426話―アニメの一般認識が変化する―

「お兄さん、あーん」


ソファ隣り合わせて座っていた真奈が菓子を素手のまま直につかんで口に入れようとする。

どうするか?選択肢をオープン!


→あーん

食べる気分じゃないんだ。ごめんよ

真奈は世界一で可愛い!!


この流れて断ってもなんやかんやで最終的に食べるのがオチ。で、あるならここは下手に抵抗や否定せずに俺は、おとなしく口を開くことにした。

…さっきの選択肢に意味は無かったな。


「……あっ、口の中についてしまった」


けど想定外なことが発生した。華奢な人差し指と中指も焼き菓子と巻き込まれて口の中に、驚いてしまった俺はすぐ口を開き、真奈は手を引っ込める。


「もぅぐぐっ」


真奈の手作りの沖縄名物である揚げ菓子のサーターアンダギー。

首里しゅり方言の名前でその意味は油で揚げた物と真奈がそう言っていた。

見た目は生姜しょうがみたいだなと思った。実はこの年になってまだサーターアンダギーは食べたことない。

丸ごとが口にあって言葉を喋れないので変わりに唸り声で両手を合わせて謝罪をする。


「ううん。別に気持ち悪いなんて思ってもいないし深いなんて思っていませんよ…少しドキッとしただけ」


あぁー!?どうして気持ち悪いとか不快させたかなと心配していたことを読まれたのかな!この世界で人類最初のニュータイプに覚醒しましたか?

でないと思考を読まれるはずがないのだ。きっと真奈ならファンネルミサイルを搭載した空中を浮遊させ宇宙にいるかのような飛行を可能とした浮遊し、力場を生み出すミノフスキークラフトのガンダムをパイロットになって駆けるのだろう。

ガンダムのモビルスーツの設定が緻密で理系が得意な人ほど楽しめる範囲が多いと思う。ともあれ真奈が恥ずかしそうに嬉しそうに綯い交ぜった表情にドキッとしてしまった。意識しないようガンダムを考えていた。


「……真奈、サーターアンダギー美味しかったよ」


「……フフッ、どうして目を逸して味の感想を言うのかな?お兄さんは」


「はい?……真奈もしかして、そういう攻撃してくるとは」


「攻撃?お兄さんに攻撃なんて――そ、そんなこと無いよ。お兄さんを苦しむの喜ぶ趣味なんてないから!!

お兄さんどうしてエッチな事を言うの」


まさか嗜虐心しぎゃくしんを目覚めたのか一瞬そう疑ったけど、聖母のような真奈がそんな特殊な趣味があるわけがなかった。


「お、お兄ちゃん!次はわたしのも食べてください。はい、あーんです」


反対の方向を振り返ると冬雅が手づかみで口に入れようとするのは焼き菓子マカロン。

発祥の地はフランスのイメージがあるがイタリアではないか発祥地の説。


「は、はい」


選択肢オープン?なにそれ美味しいの。

どのみち食べる選択の一択にパターンしかないのだから実質的に選択肢なんて無い。とくに、冬雅が相手では情に訴えられるか策謀を駆使されれば。


(やっぱり事故を起こした真奈みたいに冬雅もするつもりだ!?)


目撃したらアランジして実行に移せるアクティブさには呆れるしかない。

なので少し顔を引いてマカロンだけを食べる。


「あっ!」


「……うん。また上達しているね冬雅。これだと結婚した相手が羨ましくなるレベルだよ」


いつもよりも冬雅を褒めてデレさせようと試みる。これで止まってくれたら――


「そ、そうですか。羨ましいなんて…お兄ちゃんの妻になれるだけでも嬉しいのに。……わたしも、お兄ちゃんと結婚して変わらない日常を過ごせるだけで最高な人生だって嬉しくてたまりません…それだけで幸せです」


「冬雅……」


確かに冬雅と結婚生活を想像したら楽しいのは間違いないだろう。毎日と続けられていた告白が自然と言わなくなっても幸せを真摯に願って想ってくれる相手がいるのは。


「お兄ちゃん?何か言ってくれませんか」


「冬雅…でも、まずはクールダウンしよう。ちょっとテンションがお互いに上がって――」


「スキありです!!」


「っ――!?」


喋っている最中に冬雅はマカロンを口に放り込んできた。それもマカロンと指を直接に伸ばして飛び込んで。


「油断しましたねぇ。お兄ちゃんの行動は知り尽くしています……真奈には敵わないけど」


いくら好きな相手でも冬雅からすれば俺の年齢である男に口に入れるなんて不快極まりないと思うのだが。

手を引いた、その指を唾液がついたまま冬雅は自分の口に入れる。


「……は?はあぁぁぁ!?冬雅それは、いくらなんでも危なくないですか」


つい敬語で突っ込んだ。大の大人である俺が叫ぶのは許してもらいたい。そもそも冬雅に告白される前は異性と付き合った経験が無いので、どうしても

冬雅の蛮行にはない驚きを禁じえない。

天真爛漫なキャラが妖艶ようえんな行動を取れば驚く。冬雅はキャラじゃないけど、作画崩壊とかのレベルだ。もう整理がつかなくて頭の中は滅茶苦茶だ。


「こ、これで間接キスしましたねぇ。

わたしとお兄ちゃんの」


自分の口から指を離して、そう言い出した冬雅であるが雪のような肌は真っ赤に染まっている。よく見れば目頭だって水滴が少しついていたりもした。

その勇気を振り絞り方は絶対に間違っているにもほどがありませんかね?


『冬雅さんと東洋お兄ちゃん…ラブラブを見せつけて何の挑発なのですか』


怒りを沸々と込められたかのような声。俺たちが座る直前にあるテーブルの上にはノートパソコン。それは複数同時にリモート利用で画面が分割の一つ、怒り主は愛称はカナちゃんこと花恋。


『そうだよ!カナカナの言うとおり。イチャラブを見せつけるなんて彼氏がいないボクの煽りか何かなのか!!』


そう憤るのは不死川さん。


『おにいちゃんと冬雅おねえちゃんも自制心どこに置いてきたの?

ねぇ、見ていて困るんだけど』


こめかみを右手で当てて呆然となる比翼。わぁー、わぁーと皆から批判を俺たち受けるのであった。

確かに、画面越しからとはいえイチャラブ見るのは迷惑だ。こればかりは自覚しているので批判をおとなしく受けるのであった。

けど、怒りが静まるのも異常なほど早い。それは俺たちが常習犯的になっているのもあるのだろうけど。


『ここにいる友達に伺いたいことがあるのですがネクスト呪術廻戦って、あったりしますか?』


そう切り出したのは現役大人気アイドル猫塚李澄ねこづかりずむ


『李澄おねえちゃん急にどうしたの?』


『リズムおねえちゃん!?ねぇ、もう一回だけ言ってくれない?』


『李澄おねえちゃんマジうざいよ。それ』


『ご、ごめんなさい』


へこんでいるのでそろそろこれぐらいで許してほしい比翼よ。


『友達が少ない友達のお願いですからね、知恵を出すことにはやぶさかじゃないのでやるけどね』


心からの言葉が届いたのか比翼は微笑んで協力の姿勢を見せた。


『けど社会全体的に広がるようなアニメは、そう無いですよね。鬼滅や呪術廻戦だってアニメやマンガに興味が無い人にも注目されるのって』


主観による分析を述べるのは三好さん。確かに爆発的な人気が出るのってアニメとかラノベオタクにも予想が出来ないんだよなぁ。

あかね書店で生の声とか反応などを普通の人よりも知っているはずの三好さん。


「ネクスト鬼滅は、やめて。そこそこ話題に上がりそうなアニメなら話せると思います。その方向でなら助言はありますけど、それでいいですか?」


解決策を出したのは冬雅。

社会ブームまでは、特化型のオタクやあらゆるジャンルに精通するオタクでも不可能に近いだろう。とくに今期のアニメは始まったばかりだし。


『は、はい。その方向でお願いします』


李澄は洗練された頭を下げてお願いをするのだった。こうしてお勧めが始まるのであった。


『そんなの決まっているじゃない。

スライム倒して300年でしょう!』


胸を張って言い切ったのは香音。

…あれ?おかしいなぁ、香音の声が聞こえたけどパソコン故障したのかな?

深夜枠のアニメを香音が普段から見ているとは思えない。前に俺の部屋にあるラノベを見て顔を顰めていたのを

俺は昨日のように覚えている。

あれは…悲しかった。


『…えっ?カナカナどーしたの。

レベチな会話についてこれない流れじゃないのコレって』


信じられないと不死川さんは言う。


『ふーん、そんなに意外な反応をするんだ?』


『そ、そんなことないよー。ねぇ、皆』


これは助け舟を出せことかな。


「フフッ、香音も好きなんだねぇ。

実はワタシも好きなんだよ。あの世界観と家族愛とか」


周りが困惑気味になっていても真奈だけは平常運転。それが真奈の美点ですからね。…普段は読唇術でもあるのか疑ってしまうレベルなのにときどき、ご都合主義で鈍感な主人公並みな言動をする。


『お、仰る通りです真奈さま!?

女の子どうしで緩めな距離感なんか癒やされて不思議なんです。

それに一話のドラゴンの強者と賢者な雰囲気ある声がカッコよかった』


なんと香音が原作ラノベに熱烈に語っているだと!?ちなみに個人的に1番よかったと述べさせてもらうならオープニング。

スローライフとハイテンションだけどのんびりしている雰囲気が作風に合っている。


「フフッそうなんだ。ワタシ出ているラノベ持っているんだけど。もし興味があったら家にある本を貸すよ。もう既刊すべて読んだから」


さすが真奈を略して、さすマナ。

まさか知っているだけではなく巻数は数十巻もあるのに読んだのか…去年は受験もあって、読む時間があったことに俺はびっくりだよ。


『はい、はーい!次はボクだね。

すばらしきこのせかい』


元気よく手を挙げて言い放ったのは不死川さん。


『『あぁー!』』


まさか、すばらしきこのせかいを見ていたなんて…いや今期のアニメだから普通なのか。

おそらく俺以外の皆は、あまり知らないだろうが2007年にDSゲームとして世に出た。略称すばせか。

このゲームは当時は金銭的な理由で、やったことが無いが面白いと巷で噂を聞いたことがある。あのキングダム・ハーツにソラやリクに邂逅して出てきたぐらいだし。

最初に発売したことは彼女が生まれたばかりになる。ふむ、年の差が余計に感じてしまうなぁ。


『動かざること山の如し…ではでは、二番手せっしゃは晴天をけ』


「それ2021年の大河ドラマ!?」


アニメから脱線して大河ドラマを答えたペネに俺は反射的にツッコミを入れた。まぁ、分かるよ農民から将軍に仕える武士、明治時代では実業家で教育者。今でも渋沢栄一さんが関わった会社は今でも残っており日本を支える企業ですからね。

…本当に脱線したなぁ。ちなみに最近の大河ドラマは必ずと言っていいほど第一話は主人公の幼少期がある。 それに定説を覆され新説を取り入れたりもある。桜田門外の変に銃で発砲のシーンがあった。ちなみに襲撃は前にもあって桜田門外が別に初めてではない。


「お兄ちゃんと一緒に観ていたプリキュアと答えたい所ですけど、わざわざ勧めなくてもいいので外します。

わたしは、髭を剃るですねぇ」


指をあごに当てて可愛く答える冬雅。

タイトルが長いので省略してと、髭を剃るは書籍化する前はカクヨムで活動していた作品。

内容は文学的で、あまり万能向けではないけど社会問題を考えさせられる作品。


『冬雅さんが言うのなら面白かいんだろうね。きっと』


食いついたのは花恋。興味を惹かれた年下の女の子に冬雅は、ぎこちない笑みを浮かべる。


「そうだよ。でも性被害を受けている人には見るのは止めた方が出来ないかな?

とくに比翼は、見るのは駄目だよ」


比翼に忠告してくれたのは素晴らしいよ。でも、比翼がもう俺の部屋から読んでしまったのだ。思ったよりも

トラウマを発作的なことは無かったけど、これは千差万別だから個人による。


『でしたら、どうして冬雅さんは勧めるのですか?聞いた感じでは人を

選ぶような作品にも聞こえるのですが?』


そう。知らない人からすればタイトルで敬遠しがちだが、イメージするような内容ではないし普通にほのぼのしたシーンはある。アニメは少ししか見ていないが読者から意見でなら、ほのぼのしたシーンや前を向こうとするヒロインには応援したくなる。

これだと父親目線だな。うん。


「えへへ、だって年が離れて仲良く生活しているんですよ。イチャイチャなシーンよりも家族の温もりを感じるんです。

いつか、お兄ちゃんと二人でこんな生活していみたいと思って見ていたのです!」


「「………」」


冬雅の力説に俺たちの無言に冬雅は焦り始める。そんな目で見ていたのか冬雅よ。


「俺そもそもニートなんだけどね」


作品を見る前からタイトルで印象を与えて誤解する人もいるが内容は想像よりも違ったりする。冬雅が見た感想が、やや残念なのは人それぞれ捉え方が違うから仕方ないだろう。

その後もアニメの話題で俺たちは、盛り上がってして夕日が暮れるまで語るのであった。

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