第413話―風景が一層と彩ってゆく桜狩り6―

これからも長期の宿泊を継続をするかは、いったん置いておいて必需品や嗜好品などをカバンに詰める。

正式な恋人なのか有耶無耶の人と泊まることを許可よくしてくれたなぁと今を改めて振り返っても、そう思う。

そろそろ向かおうと決めて今すぐに行こうとしたけど玄関で悩みに関することが起きました。

その悩みは、どのくつで行くかをです。ローファーにするかスニーカーか、新型コロナの変異型が未知なのを警戒して外のデートは減っているし日常的な理由での用途ならローファーにしようかと思いましたが、日常もデートに含まれるからスニーカーと、わたしの中で決着つけた。

それはいいのですが、どんな色で行くかですねぇ。一応スニーカーだけなら100足になります。その数を真奈に語ったら多すぎると引かれていて、その後にそれだけあれば悩まないねぇ。いえ、そんなことありません。その逆です。

もし一度でも今日はどんな靴を選ぶかと考えようものなら迷いの坩堝に嵌ります。


(うーん、どれにしよう。これもいいけど可愛くないし。こっちは可愛いけど子供ぽいし…。

わぁー!?シスコンどうかも怪しいお兄ちゃんの好みが分からないよ)


そもそも、お兄ちゃんは本当の妹がいないのでシスコンなのも変な気がするけど今はそれは後回し。

どれにしようか?とそんな単語が頭の中で巡っており、考えをあぐねていました。


(なら発想を変えよう。どれにしたらドキドキしてくれるかとかじゃなくて、今後お兄ちゃんと思い出を築けるに相応しいかを)


別れと門出の季節に合うものに。

でも、そんな著しいイメージなんて人それぞれで統一していなかったと思う。


(他には…お兄ちゃんの中では、わたしが似合う色ではオレンジ色だって言っていたような…確かそう言っていたはず)


そこまで好きな色でもないのだけど、どうして似合うのはもう少し訊いてみよう。


「どうしたの冬雅?」


「ごめんママ。オレンジ色の靴ってどこに閉まっていたかな?」


「それなら知っているぞ。確かここにあったはずだ!少し待ってくれ冬雅」


後ろから待っていたママは疑問が強くなって言葉を発した。

靴と睨めっこしている娘が何をしているのか気にしてしまうのは仕方ない。わたしは、まだ探そうと決めた直後すぐに声を掛けられたので閉まっている探しの靴は知っているかなと訊いてみた。すると、返事したのはママではなくパパ。

玄関から居間に向かうパパ、と思ったら居間ではなく横に曲がる。

物置きとなった部屋であるのかな思いながら待っていると3分ほど経って戻ってきた。


「探しているのは、これでいいか?」


前に突き出したので受け取る。箱に入ったままで開けると橙色の靴が綺麗な状態で入っていた。

わたしが買った覚えがないなぁと思うのは衝動的に買って一度も履いていないからだろうか?


「うん。探してくれて、ありがとうねぇパパ。でも、どうして知っていたの?」


「知っていたじゃないんだ冬雅」


「えっ?というと」


「卒業プレゼントだよ。もしかしたら橙色の靴が欲しいんじゃないかとなぁ」


「…そうなんだねぇ。ありがとうパパ!すごく嬉しいよ」


ここで卒業プレゼントを渡されるとは思いもしなかった。前は捨てられたとか疑心暗鬼に生じるほど話や聞いてもくれないと思っていたのに。


「フフ、言わないでおかないつもりだったけど山脇さんに相談して選んだのよ」


「お兄ちゃんが…!?そうなんだ」


わたしが知らない内にそんな相談があったとは全然そんなこと気づけなかった。パパの膝枕の笑顔を見たけどママの言葉ですぐ苦虫を潰したような表現を浮かべるのでした。

ようやく外に出ると駅まで見送る二人と歩く。他愛のない話を花を咲かせ温もりが含まれる風が髪を撫でる。高校生になってから思っていた…家族と一緒にこうして歩きたかったことを。

駅前に着いて家族団欒の貴重な時間は終わりを迎える。わたしは振り返って涙腺が崩壊しないよう堪えます。


「それじゃあ、行ってきます」


「山脇さんによろしくね。冬雅…道中は気をつけて行くのよ。いってらっしゃい」


「……気を…つけるんだぞ。

そうだ!せっかくなんだ。あんな奴なんか忘れて戻って家族旅行をしようではないか!そうだ、そうすればいいんだ」


「あなた、それは別の機会よ」


引き留めようとするパパをママは穏やかな笑顔で、やんわりとしたツッコミ。その旅行は初めて知ったのだけど、お兄ちゃんの家に到着したら詳しい話をされるのだろうか。

ママが手を小さく振るとパパは渋々とした態度で手を振ります。わたしは二人の愛情を形にして答えようと大きく手を振って行きました。

電車に乗り人混みは増えているなぁと感じながら空いた席に腰を下ろしてスマホを見るとメッセージがたくさんありました。花恋や比翼などから祝福の言葉とスタンプが目にすると涙腺崩壊して車内の中で泣き出しました。

電車の乗り継ぎがあるとはいえ時間は一時間ほどぐらいで目的地に到着しました。ここまで来るまで長く感じながらも心がときめく同時に緊張が走ってきます。深呼吸を数えながら繰り返し――そして、お兄ちゃんの家を入ります。

インターホンではなく頂いた合鍵を使って音を立てないよう気をつけて密かに入ります。深呼吸を繰り返して咄嗟に思いつきました。

もし、居室にわたしが急に現れたら驚いてどんな反応するのだろう?


(お兄ちゃんに驚いている隙に、わたしは抱きついたらドキドキするはずだよねぇ。トドメは告白をしたらどんな反応してくれるのかな?えへへ)


そう考えると楽しみで仕方ないです。さぁ!このドアを開けたら、わたしの悪戯いたずらを受けることになります。ドアノブを押すようにして勢いよく開ける。


「わたしが来たあぁぁ!!

今日は卒業した一段と大人に近づいた峰島冬雅の帰還ですよ。

お兄ちゃん、ずっと大好きです。永遠に愛していま……す……よ……」


リビングに飛び込んだ、わたしが見たのは予想内で予想外なことが起きていました。


「冬雅おかえり…んっ?もしかしなくても合鍵で入ってきたのか」


「…お、お兄ちゃん……どうしてこんなことに?」


「あー…うん。えーと。これは真奈から協力したいと言って…はい」


「ゆ、床ドンなんて…羨ましすぎます。床ドンなんて……」


わたしの視界に飛び込むのは、お兄ちゃんが真奈に床ドンしていたことです。そう、床ドンです。あのラブコメでは必ずと言っていいほど起こるイベントです。仰向けになる人を覆うように迫るようにするアレです!性格から推測すれば九分九厘これを提案したのは真奈で、乗り気ではないお兄ちゃんを理論的または熱意に根負けして行ったのでしょう。

見ているだけでドキドキします。当の本人である真奈は、わたしが乱入して驚いて狼狽しているし。


「それが終わったら、わたしにもやってください。いいですよねぇお兄ちゃん!」


「ちょ、ちょっと待ってほしい。これは……何も思いつかないぃ!!」


わたしの切実なお願いの返事は無く、居室の中心でお兄ちゃんの絶叫が響くのでした。

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