第410話―風景が一層と彩ってゆく桜狩り3―
最高の思い出を振り返り、様々な思い出を糧にして新たなる新たなる
もはや日本に生まれて知らない人はいないであろう卒業定番のソング
卒業する生徒みんなが合唱の
家族や教諭が穏やかな表情で見守る。
そして卒業証書。生徒ひとり一人と名前を挙げられ体育館の壇上に上がり受け取る。わたしも名前を呼ばれて受け取る。
椅子に戻り、他の生徒たちを後は受け取り眺めるだけになる。
(高校生だから、きっと涙を流すとか胸が熱くなるとか思ったけど。不思議と感動しない)
込み上がるものはあるけど、それが感動と言われたら少し違う。
だとしたら込み上がるのに感動しない?…そうか、これは高揚感です。
いつもと違う日常がこうして変化を
好きだし楽しい思い出がたくさん頭に残っている。
…もしかして、お兄ちゃんがこの場にいないから感動が小さい?
そうなると真奈も涙腺崩壊とか無いのかもしれないと思い隣に視線を感じない程度にチラッと見る。
一瞥した結果は頬に透明な雫が流れていました。
……べ、別にわたしが薄情とかじゃないもん。と誰に言い訳しているのか分からないツッコミを心の中でする。きっと、わたしにわたしが違うと否定しただけだけど。感動の云々を置いて、卒業はそろそろ終わろうとしていた――
「ここに通るのも最後になると思うと寂しくなるよねぇ…なんだか。真奈ハンカチいる?」
「うん、もう大丈夫だよ冬雅。
寂しくなるけど前に進んでいる証だもんねぇ」
結局わたしと一部だけの生徒は泣かず真奈とその多くは感動して泣いていた。体育館を出てから教室に戻って軽い自由時間の流れになった。わたしは平野真奈と三好茜の3人で廊下を目的もなく徘徊していた。
「前に進んでいるですか…普通なら恥ずかしく言えないセリフでも真奈さんだと臆面もなく言えるですよね」
「確かに、真奈いつまでも童心を忘れないからね。あれ?でも童心とは違うような…綺麗とか」
茜の言葉にわたしは頷いて答える。なかなか現代の子供でも稀有なほど謹直な人柄。だからこそ真奈は、お兄ちゃんに惹かれたのだろう。逆にお兄ちゃんも同じで少なくない好意を持っている。
それに趣味嗜好が共通しているのは正直に言って羨ましい。
「…その話題はワタシがいない間にしてほしいのだけど」
「そうですね。真奈さんがいない間にでしたら失敗談や感極って今日の感動して涙とか」
「むぅ、茜なんだか今日は
仲良くケンカしているなぁ。ぼんやり眺めていると真奈と茜は次はわたしの話題に向けられた。
「おそらくクラスの中では冬雅さん以上に成長した人はいないでしょうね」
「へ?わたしですか…」
「昔は返事しても淡々としていて自ら輪に飛び込むことしなければ作るのも拒絶する素振りもあったからねぇ。孤独で昔は不安だったなぁ」
「…ねぇ真奈。そんなに昔では無いと思うのだけど?」
二人の中でのわたしは凄い根暗キャラになっている。た、確かに両親が忙しくて見捨てられたと思ったことはあるし、どうせ友達なんて疲れると思ってさえもいた。
ここまで性格や価値観が大きく変わったのはお兄ちゃんがいたから。
好きな相手と一緒にいて何かが変わったのは自覚はしているけど自分ではどの細かいところまで多く把握していない。訊けば答えてくれるけど、なるべく自分で考えて見つけよう。
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