第404話―初対面のように接する妹と親友2―
普段であるなら却下されるだろう提案に真奈や花恋が異論はなかったようだ。巻き込まれる…その原因が俺にあるので批判する権利はなく条件を呑むしかなかった。
「ご注文は冷たい赤の他人ですか?うーん、なかなか難しいですねぇ」
マッチングアプリでなら執筆のインスピレーションを閃くため質問は頓挫、そんなのしなくても冬雅たちが実体験以上よりも本格的でリアリティな演技をする。
居室でダイニングテーブルを囲むように腰を下ろし、思いついた案をシチュエーションなど行い、議論を交えていた。
こんな方針で進んでいることに不安を覚えながらも早く終わらせようと取り直して提案をすると冬雅が長考を落ちるように没頭して腕を組む。
「東洋お兄ちゃんが望んでいるのは初対面にあるドライな距離感じゃない?恋人が欲しいけど理想の人と似ていなくて相手の人に期待を向けない、気まずい雰囲気?」
手を動かしアメリカ人のようなジェスチャーをして解釈と推測を展開する花恋に冬雅と真奈は感心して頷く。
「わぁー、慧眼だよ花恋。じゃあそれを演技をするため冷たくて、どうでも良さそうに脱力感のある人がやらないといけませんねぇ」
そう発した冬雅。俺が浮かんだだけの提案が採用した流れになっている。
「冬雅さんがドライか女の人ですか…外で走り回る子供か変態キャラならともかく」
「そうだねぇ……ま、待って!?
花恋の認識されている、わたしの存在ってそういう印象なの?」
「フフッ。ワタシの中で冷淡な女性を振る舞えると言ったら冬雅しかいないと思うよカナちゃん」
「…真奈の言葉が素直に喜べないよ。褒められているのか貶されているのかな?わたし」
「真奈さん、それって冬雅さんが冷たい女の子こと?あはは、そんな訳ないよ」
花恋は冗談だと思って突っ込んでいたが、場の空気に感じて事実なんだと悟る。
シチュエーションの設定が定められそこからはスムーズに話が進む。
こうして準備に取り掛かり始まる。俺は脱衣室で普段着から外出用の私服に着替えて冬雅は2階の俺の…共有の部屋で着替える。
先に着替え終わると時間があるのでニュースを頭を空っぽにして眺める。数分が経過して冬雅が居室にドアを開けて入る。
「もしかして山脇…東洋さんでありませんか?」
「そ、そうだけど…」
周囲を見渡して俺を見つけて手を振るという細部を手を抜かない演技に流石だなと思う。もし、いつもなら「お兄ちゃん見つけた!えへへ、こんな所で何をしているの?手を触れる練習を」など羞恥心で言葉にしにくい発言を平然とするような勢いで言うだろう。
座っている冬雅は、言葉遣いや衣装だけでも別人みたいだ。
満面な笑みではなく感情が乏しい。
(なかなかの演技力で)
「ねぇ、早く座って注文を取りましょうよ。えーと、山脇、さん?」
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