第402話―リサーチのためにマッチングアプリをする4―
またぞろバカな人が釣れた。
(ふふっ、騙されているとは露とも思わずに。
さーてストレス発散ために
興味本位と軽い気持ちで始めたマッチングアプリは思った以上に楽しい。
気をつけないといけないのもあるが相手を取っ替え引っ替えが現実が可能とする。もし、そんな所業なんかをすれば、たちまち噂が広まってしまい居心地が悪くなってしまう。そのデメリットを取り除いたのがマッチングシステム利用。
私は喫茶店に流れる[パプリカ]をBGMにしてキリマンジャロを啜りながら窓越しから町並みを眺める。
(あの率直な紹介文からして真面目な人でしょうね、間違いない。
これがチャラくて自尊心の塊の人ならウザい自慢話とか長所ばかりで批判的で文字が乱暴になるし)
それで、この人はマッチングアプリで人と遭うのが初めてのようだ。年齢は私よりも2つ上の28歳で趣味は読書やアニメとある。知らないけど聞き手に徹して愛想よく相槌を打ってばいい。
スマホで時間を見てそろそろ時間。
スマホを鏡の代わりにしてチェック…今日もツヤツヤ黒髪ショートボブで清潔感が溢れる雰囲気がある。
喫茶店の出入り口からカランカランと音が鳴り響く。
(あはは。年齢からして、この人よね、私を探してキョロキョロして面白いんだけど。
真面目かは分かんないけど)
噂をすればなんとやら。私は席を立つと猫をかぶるの忘れずに男受けする甘い声を出す。
「あのー、もしかして
「えっ?そうですけど…あ、もしかして『もり』さんですか?」
「はい!もりです。ほら、早く座ってお茶を飲もうよ」
純粋無垢を装って胸を腕に当てさせる。これで、どんな反応するのか楽しみだ。マッチングアプリが初めてなのは反応から察するにマジなんだろう。腕に抱きつく行動をして、山脇は困った顔をした…
えっ、どういうこと!?
「あの、ソーシャルディスタンスを守ってほしいのですが…」
「そ、そうだよね。あははゴメンね」
大抵の男ならこれで落ちるのに…なにこれ。いや、たぶん表情を隠すのが得意なのだ。そうに違いない。
テーブルに座らせてから私は自分の口から際どい話を振ってみせる。
「ねぇ、胸の大きい女の子って好き?なんだか視線を感じるんだよね」
腕を組んで意識させる。フフッ、これで美人でスタイルがいい私に劣情するがいい。取り繕うことなんて不可能で顔をみるみる赤くなって……いない?それどころか驚いたその人は真剣な表情になる。
「そうなのですか!不快な気持ちになるなら場所を返って――」
「やっぱり気の所為だったみたい。あはは、それよりも話をしませんか?ほらお互いもっと知り尽くしたほうが仲良く…な・れ・る」
最後は色ぽく言ってみたが対面に座る山脇は微笑を浮かべて頷く。
露骨にそういう目を向けていると示唆するようにしたのに…手強い。
気を取り直して趣味の話題で相槌を打ち相手を楽しくてさせてイメージを上げてからしかけるとしよう。
「山脇さんの趣味を聞きたいなぁ」
「趣味ですか。いいですよ」
相手の趣味を肯定する戦略にして、数十分が経過する。
「――いいですか?山脇さん、マッチングアプリですか!この人は優しくてカッコイイな思っていたら、とんでもないクズだったのよ。
二股とか三股とか頭のおかしい奴で」
「それは…災難でしたね。もりさんのような素敵な女性を一途にならないんなんて愚かとしか言えませんね」
「でしょう!山脇さんにだけ名前を教えるけど…
鬱憤で溜まっていたストレスを吐いて私は気分がスッキリしていた。
その勢いで名前を教えてあげようと、そんな気分になった。
「えぇ!?い、いいのですか俺なんか名前を教えても…いえ、私なんかに」
まさか、そこで慌てるのか。ハニートラップよりもそれで慌てられると女性として自信が失うし悔しくなる。
「いいんだから!山脇さんって本名でしょ、名前を教えるのは平等になるためだからよ!!」
「理不尽にも怒られてしまうのか」
微苦笑でツッコミするのか…なんだか落ち着いている人だ。あと、スッキリしてから気付いたのは、聞き手になっているのが山脇さんになっていることだった。
思ったよりも楽しくて他愛のない話をしていると窓から殺気を感じた。
「えっ、な、なにあの子は…」
「……
「かな?」
窓越しからしか窺えないが恐ろしいほど顔が整っている女の子だ。
年齢からして女子中高生ほどで、美少女コンテストなんか頭の悪そうな大会で優勝は確実な可愛さだ。
どうして睨まれているのか分からず、その『かな』が店内に入り私たちに向かって進む。その鬼の形相に店員も「いらし―」と言葉を失うほど。
「東洋お兄ちゃん、次は大人の女の子を落とそうとしているのですか?」
目以外は笑って尋ねる女の子に山脇と私はたじろぐ。
「いや、誤解だよ。これは…あとで話をします」
そんな身を縮めたくなる恐怖を受けても、すぐに応えた山脇さん。
さきまで一緒に怯えていたのに!?立ち直るの早くないかな。
「えっ?…妹さん?」
「いえ、断じて違います。強いて言うなら恋人……です」
「こ、恋人!?」
そ、それじゃあ。この人は未成年と付き合っている危ない人なの。
話からして、そうには見えないけど…いや、思い当たる節がある。
私には異性として見ているのか分からない反応を示して、包容力が
やたらと高い。
確定だ――この人はロリコン。
「そ、それじゃあ今日はこれくらいに。失礼します。花恋この事は出来れば二人には――」
「安心してください。しっーーーかりと伝えておきますね」
「理解してくれて…それだけは」
数十歳もかけ離れている女の子に弱腰で懇願している。なんだか、見ていて面白いのだけど、ロリコンなんだよね。その人って。
私は呆然と二人が出ていってから窓をぼんやりと風景を眺める。
「…何だったんだろう今の」
これはマッチングアプリで純粋にパートナーを探す人たちに憂さ晴らしにした罰だろうか。
そうだとすれば反省しよう。もし、あんな殺気がこれからあると想像と悪夢。心を踏み躙る行為はこれくらいにして、今度からストレス発散方法をお酒を浴びるように変えるとしよう。
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