第385話―天使と悪魔の抱擁され告白を敢行する―
目の前に広がるのは天使と悪魔だった。
経緯を話そう、朝食を囲んで食べ終えた冬雅が提案すると賛成の声も聞かず即時に取り掛かるは異世界の天使と悪魔の美少女とイチャイチャしてドキドキというものだった。
(どうして、こうなってしまったのか。どんな状況なんだろう)
「えへへ。どうですか、お兄ちゃん?受験勉強やイラストの練習を休憩時間にお兄ちゃんがどんな反応するか想像してドキドキしてくれるかなと想っていたら凄い完成度になったのですよ」
そう力説して喜色満面の冬雅のコスプレは天使をイメージした格好だった。つややかな白髪をしたロングヘアーのウイッグは違和感がない自然で、純白のワンピースドレスと後ろには手作り感がある
けどビッタリと調和が合ってはまっている。
さらに元々が目を逸らしたくなるか呼吸さえ忘れるほど眩しくもあり、それらが総合的に組み合わせると本物の天使のようであった。
「正直に言うとびっくりしたよ。語彙力を死滅させるほど眩しくて…似合っているよ冬雅」
「わぁー、そうですか。やった褒められましたねぇ。ねぇ、ねぇ!お兄ちゃんもし良かったら頭をなでなでしてくれませんか?」
上目遣いの奥には期待の眼差し、頬には仄かに赤らめているのに口元は喜々としていた。
「それぐらいならいくらだって撫でるよ冬雅。むしろ何度もしたいぐらい」
「お兄ちゃん…そ、それじゃあ一つだけ、わがままと言うのかお願いなんだけど…わたしにもお兄ちゃんの頭をなでなでしたいです!」
「それ前にもお願いされなかったと俺の記憶がそう言っている気があるんだけど…まぁ、別に構わないけど」
ここまで頭を撫でたいと顔に出ている冬雅を見ていたら断れず、すぐに快諾した。結局なにがあっても俺は最終的に頷く流れるわけだしなぁ。
「本当ですか!もうさらにお願いがあるんですけど、頭をなでるターンに回ったら告白をするルールも追加がいいです!」
「こ、告白って俺も!?」
もちろんとは応えにくい要求に迷っていたら冬雅は頬を膨らませて不平不満を顕にした…なにかした?
「だって、お兄ちゃんそう言わないと告白しないんだもん。
忘れたのか知らないですけど、毎日だって告白すると宣言して
最近はしないんだもん」
な、なるほど機嫌を損ねたのはそういう。分からなかったのが腑に落ちてスッキリしたけど冬雅らしい理由に俺は苦笑するしかなかった。
「実は思ったよりも難しくて。
前言撤回させてください。これからは可能な範囲で告白するよ」
「わ、分かりました…あまりにも遺憾ですけどお兄ちゃんを無理矢理させると嫌われたくないですし分かりました。
でも罰は受けてもらいます」
「罰って?」
「これです。い、行きます!」
冬雅は両手を左右に広げると、そのまま俺の胸に飛び込んで来るのだった。いわゆるハグである。
腕を背中に回されて離さないと力が込められている。
「その冬雅、これって罰なのか」
「は、はい。そうです。これだけだと毎日のハグになりますけど、わたしの独断で決めた罰は、お兄ちゃんがわたしが離れたくなるまで、ずっと名前を連呼してください」
「れ、連呼?それだけでいいのか」
拍子抜けというのか、思ったよりも難しくなく普通で驚いた。
冬雅は顔を埋めていたのを離れて見上げると頷く。
「はい。満足するまでお願いします」
「ああ、分かったよ…冬雅、冬雅、冬雅、冬雅、冬雅」
「えへへ、えっへへへ幸せです」
原型がないほど蕩けた声、冬雅の小さな手が多幸感によるものか微動だに動いて俺の背中に手を添えるのであった。
「お兄さんイチャイチャのしすぎだとワタシは思います。…終わったらワタシも」
すこぶる静かだったので真奈は傍観していたと思っていたが、これが終われば真奈にもハグするのか…。
あれから100回ほどで冬雅の名前を数えるのをやめて時間が経過して満足したのかハグが終わった。
な、長かった…。
「次は、わたしの番ですね。お兄ちゃんしゃがんでください!」
「あー、そうか。まだ終わっていないのか…はぁー」
いくら甘党の俺でもこれ以上の糖分は控えたい所なのだが暴食化である冬雅はまだ甘さを求めている。
冬雅と視線が合う高さに屈む。
「よし、よーし。お兄ちゃん良い子、良い子」
右手を伸ばして俺の頭を左右をなぞるように撫でた。心地よいのだが――
(俺は子供だったのか?もうこれ、罰ゲームやん)
「お兄ちゃん大好きだよ。今日はドキドキしぱっなしで恥ずかしいですけど心が温かいです。えへへ」
どれだけ羞恥心に耐性があるのやら。太陽の光に燦々と降り注がれる眩しさに癒やされていく。
そして呆然と静かに眺めていた真奈のターンに回る。
真奈の衣装は悪魔であった。コスプレ用だと何故だか悪魔の場合は露出が多いものらしいが袖を通す衣装には露出は多くはない。
どこで売っているのか角と羽に尻尾、スカートの裾が地面に当たるほど長い。これは悪魔というよりも魔女。
「お、お兄さんの体温を感じる。
こうしていると落ち着けて優しい気持ちになっていく…」
すぐに真奈はハグを敢行したのだった。冬雅には持っていない2つの丘陵が触れていて鼓動が高鳴る一方で真奈が言うようにハグしていると、どんなメカニズムがあるのか穏やかになってくる。
「お兄さん…その、大好きです。 ワタシの人生でここまで理解してくれて考えてくれる人なかなかいません。だ、だから…愛しています」
相手の顔を見えないほど密着したハグしている最中で真奈の告白に俺の心は激しく狼狽する。
「真奈…俺も少しだけ同意見」
「フフッ、そうなんですねぇ」
抱擁から開放されると真奈の屈託のない笑顔を向けられて
多幸感に満ちていくのだった。
そして悪魔である真奈は笑顔(天使の微笑み)をいつまでも見てみたいなと漠然的に思うのだった。――ピンポーンとリビングに響き渡る。どうやら来訪する人がいる。
玄関に向かいドアノブを開けたら、よく知っている女の子が二人。
「おにいちゃん、おねぇちゃん久し振りだね、来ちゃいました!」
比翼が手を上げた元気な挨拶に俺と冬雅と真奈で挨拶を返す。
「これがハーレムか…久々だよね。おはよう兄ちゃん!」
白い歯を出して挨拶をする不死川さん。珍しい組み合わせ二人は家に上がり手を細かく洗ってから居室に入るのであった。
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