第379話―新作品を書くが思いつかない題名―

今日から冬雅と真奈の二人との同居生活が始まった。いつまで宿泊するかは不明で両人の主張は一日でも長くいると嬉しそうに言う。

ちゃんと同意を頂いているようだが、だからって泊まることをよく許してくれたものだ。二人じゃなければ容易に信じられない話、

逆説的に考えれば恋愛となれば積極的で手段を講じる。

そのような性格を考慮していれば、こんな事態が起きる前に俺は気づくべきであった。


「お目覚めですか?凛々しい目が合っていますので、お目覚めですねぇ!

おはようございます。いい天気ですねぇ、お兄ちゃん」


俺の部屋でお客様のために買った布団を敷いて寝ていたが目覚めると冬雅と一緒に寝ていたみたいだ。

…すっかり客用の布団は彼女達

が泊まった場合に俺が使うようになってしまった。


「え、えっ、えぇぇ!?

ふ、冬雅…どうして?隣に」


「……その、近くにお兄ちゃんがいるのに一緒に寝ないのは寂しかったもん。

心が強くそうするべきだって従ったのです」


花が咲くような照れた笑顔に癒やされながら俺は説明した意味を考える。


「ダメだ、やっぱり分からない」


俺はそう応えたが本当はその動機は理解していた。今まで通りになり相思相愛だと再確認してから

前以上に積極的で…恥じらうようになった。その威力は絶大的。


「えへへ、本当かな?」


「冬雅もうこれぐらいにしてあげて。お兄さん朝から災難でしたねぇ。おはよう」


「ああ、おはよう真奈…って!?」


「えっ?どうしたの」


入り口ドアの前に立つ真奈は困惑する。そっぽを向く俺の代わりに根拠がないが冬雅が応えそうだと気がした。


「真奈その、この位置だと…

下着が見えるよ」


「えっ……きゃああああ!!?」


白、記憶を消去しようとするが人の記憶をスマホやゲームのように簡単には消えない。

女の子のパンツを見て学んだのは、現実はラッキーとはではなく

自分を罰してほしいという懺悔ざんげだった。

トラブルがあったが変な空気にならず朝の食事は賑やかだった。


(いや、そもそもこんなイレギュラーが発生しても受け入れて日常と感じてしまうのが可笑しいんだよなぁ)


「お兄さん、お兄さん。卵焼きを入れるのであーんをお願い」


袖を優しく引っ張り純粋な願望を口にすると実行に移る。


「……んー」


この年になると「あーん」はなんとなく恥ずかしいのだ。個人差あり。


「どう?」


咀嚼する。作ったのは俺なんだが、そういう意味で言っていないのだろう。おそらく嬉しいかを訊いている。


「なんだか照れると言いますか、嬉しいよ」


「フフッ本当に嬉しい。もう一口」


「ど、どうしてなのかな。お兄ちゃんと真奈がまるで夫婦歴が長い高度なイチャイチャしている」


どんなイチャイチャなの!?っと冬雅のおののく言葉に心で突っ込む。

正午が過ぎてからは、俺はソファーに座り執筆していた。


(妄想して書いていたものだけど、最高の作品に完成度。

これを投稿などしたら面白いはず)


だが妄想に書き綴らしたそれを二人に確認を取らなければ。

世に発表したい一心で俺は、二人が勉強する炬燵こたつのある方へ歩く。


「二人とも実は――」


俺は冬雅と真奈の二人をモデルにしたヒロインに理想なシチュエーションを書いて作品を出していいかを懇願した。

冬雅と真奈の返答は明るかった。


「もちろんだよ、お兄ちゃん。

えへへ、わたしとイチャイチャしたいなんて考えてくれたんだねぇ」


「う、うん。お兄さんの視点から見たワタシ達…」


快諾してくれた。それはともかく、二人とも俺が書いた妄想ノートの存在に照れるのだった。

あーれー?おかしいなぁ、普通なら気味悪がられる覚悟はしていたのに。

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