第371話―冬雅のスィンクは後から―

「……うーん…」


元旦の陽光が窓掛けの間から照らされ眠りから目覚める。


「あれ?どうして、お兄ちゃんがいるの……そ、そうです…昨日は…わっああぁぁっ!?」


12月31日に、わたしはお兄ちゃんに告白されてママとパパに付き合いの許されてアオハルな雰囲気になって走り、そのまま家に泊まった。

振り返っても信じられないほど飛躍的に問題がたったの1日で解決という現実があった。


「…お兄ちゃん寝ていて良かった。ドキドキしっぱなしで心の準備が出来ていないから」


ベッドから出よう。今が好機なのは重々に承知だけど離れないと次に耐えそうにないから。

寝顔を見たい!頬をプニプニしたい!頭を起こさない程度にナデナデ!ギュッーとしたい!手を握りたい!…などの煩悩はどうやら昨夜で見た除夜の鐘では108煩悩は消えなかったみたいだ。


「…があっ…あぁぁ」


「お兄ちゃん!?」


振り返ると、お兄ちゃんは苦しそうに唸り声を上げていた。わたしは伸ばした足を引き戻してベッドの上で坐法ざほう、別の呼び方では女の子すわりで身体を揺すてみるが起きる気配がない。


「どうしよう…どうすれば」


悪夢を見ているのは苦痛による汗を見れば明白だ。


「うぅ…」


「お兄ちゃん、わたしがいるよ!」


両手で大きな手を包むように強く握る。咄嗟の判断はというと功を奏した。

「すぅー、すぅー」っと、穏やかな表情と寝息となる。良かった…

そう安堵して手を離すと寝顔がどんどん小さくなると放置していたら悪夢にうなされると思い、わたしは毛布にもぐり今度は片手で握る。


(あれ?もしかして…絡めた方が効果が大きいのかな?)


試しに手の甲に触れるように絡めてみせると効果は覿面てきめん

穏やかな笑みを浮かべていく。


「何を見ているのですか、お兄ちゃん…えへへ、いい初夢を見てくださいねぇ。…あ、あれ心配してついここまで距離が近づいてしまったよ」


すぐ目の前には、お兄ちゃんの顔がある。数歩だけ前に進むだけで触れる距離で下手をするとキスをしても、おかしくない。

…チャンスで今がキスを…ってダメダメだよ。お兄ちゃんが目覚めていないのにお互いのファーストキスをするのって想い出にならないし良くない。

やっぱり、お兄ちゃんとキスをするなら夜景スポットで…そんな事を考えていると目覚めたお兄ちゃんの瞳と見つめ合うのでした。

――そして明日が訪れ1月2日。


「…今日も夢を見れなかった」


どうしてなのか不満を持つが、前向きになって考えたら逆に、お兄ちゃんが隣に寝ているから悪夢を見ずに済んでいる。そう思えば、

初夢なんかに悩んでも仕方ない。

わたしは、お兄ちゃんと同棲しているのだから。

隣を覗くと今日も気持ち良さそうに眠っている。


「今日は、どんな夢を見ているのですか…お兄ちゃんは?」


頭を優しくなでると抵抗もなく頬を緩める。昨日よりもわたしの心は平穏で愛おしさで満たされている。

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