第361話―執事になりました―

見ないようにしていた悩みに関することが深刻化していた。

それは経済的にね苦しいというもので、預金していた額が速いスピードで減っていた。

真奈達に後先と考えずに金銭を使ったのが大きかったのだろう。

そこに一切の後悔はない、それどころか幸福のために使ったと清々しい気持ちがあるぐらいだ。

そこはともかく、仕事を探さないといけない。


「ハァー、まずはハローワークでも行くとするか」


その日は仕事は見つからなかった。

条件をこだわらず捨てれば、すぐに見つかるのだろうが真奈達といる時間を大幅に減らしたくはない。

翌日も行くことにした。スマホで探してはみたものの見つからず。

やっぱり現実は濡れ手にあわとはいかないようだ。


(クリスマスは乗り切れても来年は貯めておかないと)


すぐに見つけないといけない焦りがあったが条件を変えるつもりがないのだ。


(つ、疲れた…精神的なダメージで)


午後3時、見つからず落ち込んで住宅街を幽霊のような足取りで歩いていると…高級車が通り過ぎ――たと思ったら停車する。


(えっ、急に怖い事をしないでほしいな。変な所で止まるなんて)


俺を襲うような事はしないだろうと横に通り過ぎようと決断すると、車から降りる金髪碧眼の美少女が――。


「お兄様、見てください…

参ります。せっしゃ参上!」


完全に仮面ライダー電王のモモタロスに憑依しての決めボーズを

ペネはした。若干セリフが違うとか指摘するよりも不意をつかれたような驚きでいっぱいだった。


「もう…どこをツッコミをすればいいのか。こんにちは、ペネ今日も自由奔放で楽しそうだね」


「むぅ、お兄様!せっしゃがまるで浪人みたいに自由人だと思われますか。

御所巻ごしょまきしますよ」


「御所巻きって、よくそんな言葉を知っていますね」


御所巻きとは歴史用語で、室町幕府の時代に起きた行為。

諸大名が将軍の決定に異議申し立てるために将軍の住まいに軍勢を使って包囲、そして要求を強引な方法で呑ませる。

ちなみに、その前と後の鎌倉幕府や徳川幕府では起きなかった。


「はい。勉強してきましたので。

もちろん山脇東洋という江戸時代の医者も調べ尽くしましたでござる。

なんでも日本では最初に官許かんきょを得て人体解剖じんたいかいぼうしたとありましたでござります」


「そうキラキラ輝いて言われても反応に困るのだけど」


同姓同名であるけど俺は医者ではなく小説投稿サイトでプロ志望しているだけだ。


「混同するわけないでござるよ。私が来たのは…お兄様に召し抱えるために馳せ参じたのですよ」


屈託のない笑みでペネは発言した。


「……??す、すまない。話がまったく見えないのだけど。どういう――」


「では、お嬢様の代わりに僭越ながら説明をさせていただきます」


運転手から降りてきたのはタキシード姿のおきなさんでした。

懇切丁寧に説明をしてもらい、やっと理解した。どうやら俺をお嬢様の特別執事としてかたわらに仕えないかと話。

なるほど、つまりどういうこと?

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