第347話―暗闇の小雪3―

こうして花恋とペネと猫塚さんの三人で向かう先は水族館。並木道を出て雑踏する街を歩く。


「うわぁー、どうしよう。複数で遊びに行くなんてリア充過ぎませんか!私なんだか怖くなりましたよ…あっ、でもワクワクする」


不安よりも楽しさが上の言動を見せる猫塚さんははしゃいでいた。

複数で遊びに行く事態が、まさにリア充だと呟きには十分と理解はしてもいるが不確かでもあった。

いつも家が賑やかになっていてリア充という定義はいつも更新されている。

一般的な概念のリア充をそもそも違う意味で考察して独特な定義を持っていた。

彼女達と出会ってからはリア充とは何なのか哲学的な考察して、結局は哲学という明確的な答えを見つけずに至っていく。リア充だと感じていたものが当たり前になってもいた。


「あはは、すごい緊張しているみたいだね猫塚は。普通だよ、こんなの……あれ、普通なのかなコレって??」


俺から左隣に小首を傾げる花恋。


「そう萎縮しなくともいいのですよ。もう友達ではないですか猫塚」


俺の背後に振り返っていないから表情が分からないが淑やかな笑みを浮かべているのだろうペネ。

それにしても左右と後ろにいたら軽い包囲網みたいだ。


「そ、そうですか。えっへへ、友達か…友達かぁ。ありがとう花恋ちゃん!ペネちゃん!」


本人は雷に打たれるぐらいに響いたようで、頬を桜色に染めていて恋に浮かべるものに近かった。

なんだか目頭が熱くなってきたなぁ。どうしてだろうか、感動かな。


「あはは……それで兄これから、どうすればいいかな?近い歳の友達なんていないから何を話せばいいのか分からないよ」


耳元に近づいて囁く声量で耳打ちをする。猫塚さんは俺の事をあにと親しみを込めて呼ぶ。なぜ様々な呼ばれるのだろうか俺は。客観的に見ても兄属性とか高そうにもないのは甲斐性が無いのに。


「いつもの猫塚さんでいいと思うよ。きっとそれで話が弾むはずだから」


「は?なんて高度な要求を兄は求めるのですか。そんな簡単に解決したら悩まないから。もう少し考えるようにして…ほし…い!」


「上手く行くと思うのだけど…」


無理に勇気を振り絞れても氷のように固く緊張して失敗するかもしれない。年が離れている俺に対しては緊張などしなかった、それともアイドルとして年上と話すのが多いから年が近い人と話すのが苦手意識を持っているのか。

尋ねようにもデリケートな部分を踏み込むには信頼関係など足りないだろうから問うことが出来なかった。

猫塚さんは相槌を打ちながらも仲良くしようとする姿勢、助け舟を出しながら注力していたら水族館の前に着いていた。

体感時計では半分しか進んでいなかったのではないか疑うほど感覚だった。


「水族館なんて何年ぶりだろう?」


水族館の入り口の門を見上げる花恋は郷愁を抱いて呟いていた。


「わたくしは初めて訪れます」


お嬢様は水族館に足を踏み入れた事が無かったようだ。だとすれば幼い子供のように無邪気な姿があるかもしれない。


「プライベートで行くと雰囲気がやっぱり違って心の奥からワァーって起きて入るのが楽しみ」


高揚感によるものか言葉には理路整然がなく曖昧ながらも言いたい事は分かっていた。時間帯は昼間だったりにも関わらず人が多くなかったので列に並ばず済んで中へと入る。


「これが水族館なのですね……」


大水槽で多種多様の魚が泳いでいる方へ碧眼を大きく見開いて圧巻するペネ。その感動は俺は小さい時に過ぎっていた。それは花恋も猫塚さんも去来するものは近い忘却があって感動してきるペネに

過去にあった在ったであろう自分に重ねて思い出をみているようだった。


「わたくしの家に飼育している魚の数とサイズよりも凄い…」


「まさか家と比較していたのか」


どれほど豪邸に住まわれているか存じないが、水族館よりもスケールがある水槽があるかものかとツッコミそうになった。


「ねぇ、サファイアってもしかしなくともお金持ちなの?発言とか価値観とかヤバいし」


そう耳を囁いて訊くのは花恋。

隣で聞こえていた猫塚さんも耳をそばだてるように俺の言葉を聞こうとして見ている。


「はっきりとした言葉じゃないけど、そう言っていたよ。ブルジョワでも奢ってもらおうとかしないようにね」


「そんな小狡い事をしないよ。

でも腑に落ちたかな、振る舞いとか鮮麗さが隠せていないし」


お金のトラブルなど起こさないよう釘を刺しておこうと冗談交じりに言うと迷わずに否定をした。

もし利己的な思惑があったら表面に出ると思う。一切そういう邪な心がないのは美徳でなかなか出来るものではないと思った。

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