第331話―ポジティブなJKによる瓦全で定期的な告白8―

「お兄さん家に着いたらワタシが美味しい料理を作ってあげるねぇ。腕は上達したって今日は味わってもらうからねぇ!」


俺の手を引いて歩いてくれる真奈は普段よりも優しくしてくれる。

冬雅の話題を避けて…今日の冬雅は一変していた。冷たくされただけでこんなにも無気力になるなんて。


「そ、そそっ、そこッぉぉぉ!!

なっ、何を手を繋いで歩いているの。いや、恋人を否定しているけど隠したい気持ちは分かるけど。それを見せられたら無理!

そんなわけで、どういう事なのか説明義務はあると思ってしまうの。それで…えーと……」


こんな饒舌なセリフをするのは彼女しか思い当たらない。広岡花恋ひろおかかな、今日も制服で帰路に就こうとして見掛けたのだろう。

言葉が途絶えてしまったのは彼女が俺の見上げた顔を見て心配そうにけど疑問符を浮かべて小首を傾げた。


「うん。ワタシがなんとかする。

それで、今日はこんな調子だから別の日にお兄さんを遊んでくれたら」


数分前、心配で駆けつけた真奈の手を繋いでから遅れてやって来た香音と三好さんにも心配させてしまった。


「よく分からないけど。それじゃあ私も送ってあげることでいいよね」


「それは…うん。もちろん」


逡巡していた真奈は迷ったが断るよりもお願いすることにした。

そして広岡さんとエンカウントしたとなれば住宅街で俺の家にたどり着くのにそんなに掛からなかった。


「これが、東洋の家ですか…」


見上げて顔を輝かせる広岡さん。


「年甲斐もなく騒いでしまったかな…広岡さん俺達はこれで、それじゃあ」


「ま、待って!?何を中に入ろうとカギをカバンから出したんだけど!?どういうこと」


「ちょ、ちょっと暮らしているというのか…そういうわけで」


真奈よ。そういうわけでは足りないと思うのだけど。広岡さんは納得するはずがなく反論する。


「な、なんだか聞きたくないんだけど…もしかして二人で住んでいるの」


「「………」」


「この無言はイエス…私も行く!」


奔流が流れるごとく広岡さんも俺の家に上がるのだった。手洗いを入念にしてからリビングへ。

そこで根掘り葉掘りと落ち込んでいる理由を訊いてきたので

答える事にした。淫行で捕まった事や2度と会えない事情など伝えずに。


「ふーん、苦しかったんだね。

よし、よし」


「広岡さん!?俺は大人なのだけど」


「何それっ、受けるんだけど」


いや、受けないし。本人も受けていないと思うのだけど。


「お、お兄さんの頭をなでなでたいのに…ワタシも!」


羨ましそうにした真奈も俺の頭をなでなでを始める。…うん、ナニコレっ!?これこそナニコレだよ。

ようやく開放され、脱力になる雑談をして何時間が経過して真奈は料理を作り始めた。


「ねぇ、東洋?マジで真剣な話なんだけど真奈さんの事、大好きだったりしないの。……同棲だし」


真奈がキッチンに忙しく動いているのをチラッと見る広岡さんは

声のトーンを落として尋ねる。

今まで思い切った行動が出来なかったようだ。


「…大好きだよ。真奈の事は」


けど、冬雅にそこまで冷たくされても順位は揺るがなかった。

それでも真奈を一番だと断言できないのは俺が納得していない証なのかもしれない。


「うわぁ、この人スーパーリア充な発言をしたよ!」


引いているのと、好奇心が窺えるリアクションに俺は少し苦笑が出来るようになった。そして

真奈の夕食が出来上がる。

からあげとキャベツとリンゴなど入れたサラダとしじみの味噌汁。

俺と真奈は隣に座り、正面に座るのは広岡さんで斜向かいの位置が真奈。


「聞いてばかりで心苦しくなってきたのですが…二人って実の兄妹じゃないのに、どうしてお兄さんなゆて呼んじゃうの?」


「え、えーと、お兄さんシスコンで有名だから…喜ぶかな思って呼んでいたら、すっかりワタシの中でお兄さんになっていたの」


「へぇー、何を言っているか分からねぇー」


「えぇーーー!?」


でしょうね。そこにたどり着くのが普通におかしいのだから真奈、

けど至極真っ当な発言をしている彼女は数倍は常識を破壊する人。


「それじゃあ、東洋お兄ちゃん」


「その呼び方はやめてくれえぇーー!」


「ど、どうしてなのおぉぉーー!?」


話の進み具合は雨嵐のごとく。

夜が遅く女の子を一人で歩かせるには少々、無慈悲なので俺と真奈は一緒に見送りに行く。

先に靴を履き終えた広岡さんは、

ドアを開けて待っている。


「ねぇ、真奈さん。改めて自己紹介しようよ」


最後のあたりで説明した広岡さん。真奈は靴を履き終えた所で小首を傾げるが万人が受ける笑みを見せた。


「そうだねぇ。ワタシの名前は広岡真奈ひろおかまな、よろしくねぇ」


「私の名は広岡花恋ひろおかかなだよ。かれんと書いてかな呼ぶ」


二人は友好の握手をする。さすが令和のハーレム王女の真奈さんだ。

心を読まれたと思わないが真奈は俺の方へ振り向き意味深な笑みを浮かべていた。怖い真奈と呼びまして略してこわマナ。

秋夜しゅうやの外は、日が出ている頃よりも寒々しくなっていた。

もはや流れるように真奈と手を握り歩いていると反対の方から不満そうにする広岡さん。


「うわぁー、寒いなぁ。温めないと苦しいなぁ〜。どうしたものか?あれれぇ?東洋お兄ちゃん手を空いているけどこれはアレですか!?ほら、握ってやるから

言うことに従えって!俺様系で行くんですか、もしかして。

分かっています、そんなの似合わないのは。けどそんなみっともない姿は私の前だけにしてよねぇ。

そんなわけで手を握ります!」


暴走列車超えて無限むげん列車みたいに止まらずの間断なき言葉に俺と真奈は苦笑する。

広岡さんは手を本当に繋ごうとするのを俺は、引っ込めて回避する。


「えっ……」


「いえ、これは違います。そのまま手を握るのは危険ですから。

手袋を着用しますから待っていて」


「うわぁー、びっくりした。嫌われたのかって思ったよ」


「お兄さんが誰かを嫌いになるの滅多にないから心配しなくていいよ」


「真奈さんの信頼がすごすぎる!」


他愛のない話に花を咲かし歩き続ける。街灯が少なくなると自然に暗闇が広がり寂しく感じさせるのだが二人に手を繋いだ状態では

孤独を感じるには難儀だろう。

住宅街けど大半は謎のコントを始める強制イベントが発生したが。

ともかく広岡さんは足を止まると笑顔を作り見上げる。


「ここで、お別れです。また明日」


「ここでいいのかい広岡さん?」


「うん、見つかると面倒でしょう」


それはそうだけど、いいのだろうか。


「心配しないで近いから。ほらバイバイ!」


「そんなに言うなら…」


背中を押され少しよろめく。広岡さんはそう言うが心配だな。


「本当に平気、カナちゃん」


どうやら真奈はカナちゃんと初の愛称。あらゆる男女を落としてきたモテモテ真奈であるセリフその威力は……


「本当に平気ですって」


皆無でありました。お疲れ様でした。


「危なくなったら叫んでねぇ。それと怖くなったら走ってねぇ」


そもそも天然属性である真奈が、狙っているわけではないので全然、想定外とか話ではなかった。


「もういいよ。ほら、彼氏とイチャイチャして抱きつく。ほら、」


「ま、待って!?カナちゃんワタシには早いよ…まだ」


比喩表現ではなくリアルに背中を押された真奈だったが、人差し指をついばむようにして挙動不審。


「ねぇ、東洋お兄ちゃん?」


「んっ?」


「私の事は次に会ったら名字はなし!下の名前で読むこと。またあだ名で、バイバイ!」


唖然となった。何度も促しても帰ろうとしなかったためか広岡さんは走って帰っていく…とりあえず

次もいつものように呼ぶのは決定。

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