第286話―短い夏休み期間つづき5―

昨夜は動物園に行き、日が暮れるとそろそろ帰宅の話となるが真奈達が遊び足りないと寂しそうに醸し出され咄嗟に俺はこう言った。

よし!最後に俺の家で遊ぼう!

まったくリア充になった事さえないというのに迂闊にもそんな発言をしてしまったのかと後悔と羞恥で悶そうになりながらも引っ込めるつもりは、くしくも無かった。

そんな中で冬雅と移山の二人以外の人達は絶句や呆れなどそれぞれ反応を示していた。

けど反対する人は一人もいなく、これがリア充というものかな?と何故か琴線に触れるのだった。

家庭のパーティは食事が別に多いとか豪華わけでもないが日常生活では出さない数々を用意し作り奮発したものだ。

そして暮夜ぼやひそかに訪れても今日は時刻を気にせず盛大に楽しんだ。そして夜遅くなり俺は少し反省しながら真奈達を見送る。

最後に真奈を送るつもりが黒のパーカーとジーンズ姿の少年風な格好した不死川さんに捕まり配信を手伝ってとお願いされた。


「・・・んぅー」


上半身を起こして伸びをする俺はいつも添い寝している比翼を起こさないよう気をつけてペッドを出る。

散々な目にあった。俺よりも真奈の方が。基本的に頼まれたら断れないし代わりに俺が断っても真奈が興味を惹かれるゲームタイトルをにやけた顔で言えばすぐに引っ掛かる。これは本格的に将来の不安を覚えずにいられないと感じた。


「おにいちゃん今日は遅かったよねぇ。何をしていたの?」


洗面所で顔を洗おうとしていると背後から比翼が非難の言葉と冷静そうで燃えるような怒りの声音。

まるで不倫を追及されているようだと感じながら振り返る。


「えーと比翼おはよう。昨夜は心配をかけてしまってごめん」


「謝るということは隠蔽いんぺいとかなにかあるの!?ねぇ、おにいちゃん正直に言ってよ」


比翼はゆっくりと近づき服の裾を掴んで縋りつくような上目遣いをされる。


「昨日も説明をしたけど、真奈達を送るだったつもりだったけど、不死川しなずがわさんに捕まってしまって遅くなってしまったんだよ。・・・納得はしてくれていないか」


「当たり前だよ!今度こそ、どこの馬の骨ともわからない女の子なんか名前を出たら気になるんだよ。

おにいちゃんなるべく今日中にその人を会わせてよ」


なるべくと言われても本人の連絡を知らないのに。また真奈に伝えてもらえるよう頼まないといけないのか。


「一週間ぐらいになんとかしてみせるよ比翼」


「絶対だからねぇ!」


「ああ。比翼がいつまでも不安させたくないからね。なんとか急ぐよ」


「きゅ、急にカッコいい事を!?」


責任を感じた俺は解決するため決意している姿に比翼をときめかせることになった。いい加減、俺も女の子をドキッとさせる言動を

改善していかないといけない。

さて、今日は水族館に行こうと冬雅に相談するがさすがに受験もあって悪いかと俺は誘うための用意した言葉を発するのを止める。


「気になったのだけど冬雅はどの大学に進学するか聞いても…いや、やっぱり今のは忘れてくれ。デリカシーが無かった」


「お兄ちゃんとわたしの中だからどんどん来ても構わないよ。

ですけどデリカシー無いとまでは遠慮のしすぎだと思うけど。

わたしが進学するのは、ここから近い大学ですかねぇ。

確か前に伝えたと思いますけど?」


「うろ覚えだけど確かに…もしかしたら心境の変化とかあるかもしない」


「おにいちゃん記憶力が不安になるのだけど病院とか行かない?

わたしが付いていくよ」


隣に座る比翼は納豆を混ぜたご飯を飲み込んでから病院に付き合うといてくれるのは嬉しいが

子供にそれは、それにツッコミどころが多い。


「そうだったら、お兄ちゃん同行しますので予約しておきます!」


「ストップ!二人とも、とりあえず落ち着いてほしい。まだそうだってことになっていないから」


冬雅が予約しようとスマホを取り出したのを俺は制止の声を出す。


「自覚ないようだけどねぇ、おにいちゃんが言い訳みたいな事を言ったじゃない」


「い、言い訳とは?」


「もしかして心境の変化とか云々うんぬん


「な、なるほど。けど本当に平気だから健康だよ。それよりも比翼もしひまだったら一緒に買い物に行かないか?」


なんとか話題を変えようとしてタイミングを見計らっていた誘いをしてしまった。少し動揺とか焦っていたのかな俺は?


「もちろん行く!」


「それじゃあ、わたしも行こうかな?」


「冬雅は悪いけど今日は比翼と二人だけ出掛けようと決めているんだ」


「…そ、そうですか。わたしよりも若いよねぇ。それにかわいいから」


「そ、そういうことじゃなくて冬雅は受験生だから遊んでばかりだと良くないと思っているんだ」


「そ、そういうことだったんですねぇ。よかった…えへへ」


ショックを受けて涙目といつものように振る舞おうとする姿から、

安堵して涙を流れていた。感情が豊かだからこそ喜怒哀楽を読みやすいのだけど哀しい顔は見たくない。とくに冬雅の方は。

すると冬雅は何か疑問を浮かんだのか首を傾げ始める。


「あれ?でしたら比翼も一応は受験生になりますよ。勉強とかは」


当然そうなるか。普通に辿り着く疑問を俺はなんて返せばいいのだろうかと迅速かつ可及的に考察。


「ほ、ほら比翼は冬雅よりも家事をまったくしていないから。

冬雅よりも時間はあるだろうと判断して誘ったんだ。だからこれはデートじゃなくてただの買い物だから」


「そ、そうだよ冬雅おねえちゃん!これはただの買い物だからねぇ。

男女が必ずしも一緒に買い物すればデートになるわけじゃないから」


責めていたはずの比翼が今回は、俺と同じく挙動不審になっていた。


「それはデートだよ。…お兄ちゃんいつか、わたしとデートしてもらえませんか?」


「そ、それはもちろん。はい!」


牡丹雪ぼたんゆきを彷彿とさせる幻想的な冬雅の美貌は微かに赤らめるのはデートを誘う経験が豊富じゃなかっただろう。

初恋相手が俺なだから恥じらいを。と、ともかく冬雅とデートか。

嫉妬心が微かに俺の方へ向けられた気がしたが気のせいだろう。

一応、本当に一応いつもよりもオシャレをして比翼と外に出る。


「おにいちゃんこれとか買って」


大型商業施設で買い物をしていた。カゴに入れられたのはイチゴ味のポッキーが4つほど。


「もしかしてストック分も買うのか。比翼どれだけポッキーを好きなのかってびっくりしたよ」


「ち、違うから!?ほら、おにいちゃんとその弟と一番のライバルの分だよ」


それは俺も含めて移山、冬雅の分ことか。俺は甘党だから好きだけど弟の方は甘党ではないけど。

どちらかといえばビールとおつまみで喜ぶと思う。それはともかく

家庭的で心がほのぼのとなる。


「おにいちゃん?」


「あっ、いやなんでもない。

こういう家族みたいな雰囲気が嬉しいと言うのか…ありがとう比翼」


俺は何を口走っているのか!?そんな恥ずかしい事を言うなんて。

比翼の反応はポカンと口を空いて放心状態。ちょっと感動したのを

言葉をそのまま乗せたのがまずかった。


「う、うん。おにいちゃんの家族として当然だよ・・・・・えーと早く会計を済ませようよ」


「あ、ああ。そうだな」


なかなか目に拝めない比翼の乙女な反応。まるで恋をしているようで――いや違うか、していた。


「お、おにいちゃんってわたしの事を…ううん。なんでもない」


後ろ姿でどんな表情か分からない。

俺が比翼を誘った本当の理由は単純なものだ。

いずれ比翼が家から離れ、どうなるか分からない厳しい現実という日が訪れるまで多くの思い出を作ろうと俺は動いていた。

次に向かうはアパレルショップ、小物屋、本屋などゆっくりと過ごしていたら外の景色は日が傾き黄昏に照らしていた。

満足顔で幸せを噛み締めるようにする比翼の姿を横目で見る。帰り道、人はまだらで夏休みだからだろうか、学生が多く比翼をチラッと声を掛けるか迷うこと多いこと。


「おにいちゃん次も二人でデートしたいかな」


「デートじゃないけど、また二人でこうして出掛けるのも俺も賛成だよ。また、いつか」


「おにいちゃん?」


「いや、なんでもない」


どうしてこうも感慨深くなるものなのか。二人で帰宅すると冬雅が嬉しいそうに出迎えてくれた。

子犬に出迎えられたようで俺はつい頬を緩めてしまい冬雅は俺の変化をすぐに気づき満面な笑みで返す。

恥ずかしいからやめてほしい。

そして今になって靴を脱ごうとして見覚えのある靴を見つける。

これは真奈のだけど、どうしてここにあるのだろうか?

忘れものかなと考えていると。


「あれ?冬雅おねえちゃんこれって真奈おねえちゃんのが」


「あっ、うん。お泊り今日もするって」


「えっ?ま、また俺の家で」


「はあ!?ど、どうして急展開になるのかな、おにいちゃんは!

そろそろラノベ主人公みたいな体質はどうかと思うよ」


「そんな体質なんてないから…と思いたい」


比翼の理不尽な怒りの矛先に、そんなファンタジーな能力は覚醒していないと強く否定は出来なかった。

ラブコメって一周回ってファンタジーだよ。近い体質なので。


「なんですかそれは、まったく。それで真奈おねえちゃんは?」


「お風呂で寛いでいるよ」


「よし、おにいちゃんは今すぐに家に行ってください。わたしが話を解決します」


頼もしいと感じて大人として子供を頼るのは色々と情けなく何かが駄目な気がしたが任せることにした。

冷静に考えれば断る理由がなかった。常識能力が高い比翼なら、追い出すような罵声を吐くようなそんな事を決してしない。

そして時刻は21時、夜風が気持ちいい住宅街を俺は真奈と比翼と一列になって歩いていた。向かう場所は不死川さんの家へ。


「お兄さん比翼と一緒って懐かしいですよねぇ。ワタシ賑やかな空気って苦手意識あったのだけど

友達と意気投合するの楽しい」


「真奈おねえちゃんテンション高めなのはいいけど。わたしのおにいちゃんと…あれ?否定すべき欠点が見つからない」


いや探せばあると思うよ。それはともかく比翼は真奈と話し合いをした結果は不死川さん宅へ行くことへなった。理由を尋ねれば真奈がラインでメッセージでやり取りしたら今夜でもとなったのだ。

お泊りの件は別に反対というわけではなかった。しかしイチャイチャしないと一線を超える事は絶対になしと何故か俺ではなく冬雅と真奈に注意喚起があった。

いやそこは俺だと思いますけどけどね。そんな指摘を心だけに夕食を食べ終えて、またも冬雅は留守番となった。すまない冬雅。

そして到着するは一軒家。真奈がインタホンを押すとすぐにガチャと音と鳴りドアが開く。


「こんばんは二人とも。それで話をした美少女が彼氏の後ろに隠れている」


「わたしは箙瀬比翼えびらせひよ!おにいちゃんの妹でいつかお嫁さんになる女の子。

あっ、あと箙瀬じゃなく比翼と呼び捨てでOKです」


「ええぇーー!?ひ、比翼そんなこと野望を」


宣言にこの中でおそらく驚かないはずの真奈が大きく一番リアクションをしていた。

そして問題発言をしていたが、箙瀬という名字じゃない方へ呼んでもらうよう前もって言った。


「は、初めまして不死川紬しなずがわつむぎ。想像したよりもレベチなんだけど!?」


至極当然そんな名乗りすれば驚く不死川さん。比翼は清々しい表情をしている。俺はまたも気になるのはレベチというギャル語らしき

言葉。こういうときはウィキペディアよりも優れているマナペディア。


「えーとレベチって?」


「レベルが違うという意味だよ。お兄さんの対する気持ちなら、ワタシも比翼とレベチじゃないぐらい強いよ」


「あ、ありがとう」


そう面で好意を向けられると十歳も年下とはいえ照れてしまうのであった。

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