第265話―家デート誤解の果て―
7月中旬になっても雨は続き豪雨と降るのか日常化となる11日。
なかなか外に出る機会も減っていく
家事や遊ぶ時間が増えていく。
「一緒にキッチンに立つと改めて同棲しているんだなぁと感じてしまうなぁ」
「へっ・・・お、お兄ちゃんからそんな言葉が。もしかして一生ここに住んでくれってことですか!
それって告白かな?ううん、告白として受け取りますねぇ。えっへへ」
「気が早いから冬雅」
カレーを加熱して軽く混ぜっていると呟きとして出てきた言葉に
手伝あ冬雅は見逃さなかった。
特性の膨張していく妄想を口早にしてグイグイ来られる。
前にした、うざかわ後輩キャラは
演技しなくてもあったのじゃあないかな?嘆息して思う。
「そ、そうですね。順序がありますよね当然。イチャイチャはいつします?こ、今夜でも心の準備はしています」
「気合を入れている所を悪いけど、そんな予定や準備は無い!
ほらお皿を持ってきて」
「はーい!」
そんなやり取りをしていたら比翼に指摘されて
そして翌日が訪れ脱力感がある目覚めた俺は洗顔してリビングに入る。
「冬雅おはよう」
「おはようございます!お兄ちゃん今日はイタリアン風の
「ふーん、イタリアン風の冷奴か。興味が
「それじゃあ、いただきましょうか」
向かい合う位置に座り朝食。
イタリアン風の冷奴は、豆腐の上にチーズとトマトを掛けられた料理。なるほど見た目のイメージからだったのか。トマトの量と形からして缶詰だろう。
朝食を食べ終えて今度は俺がキッチンに立ち冬雅のお弁当を作る。
「あの、調理の途中ですけどお兄ちゃん話をしてもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
料理をしている際は俺は集中していて特に目まぐるしく動くような
複数を同時に作っているときは。
けど、今は加熱してその間に皿洗いをしているだけ。そう気遣うほど冬雅と長く住んでいる。
「大した事じゃないんだけど今日の夕食をわたしが作らせてください」
「分かった。それで何を作るんだい?」
「そうですね何も決まっていないかな?お兄ちゃんリクエストありませんか?」
冷静に考えなくても夕食を作る事を伝えると一緒に料理名も言うか。
「何でもいいですよ。お兄ちゃん」
「何でもか・・・選ぶ側がかなり困ることを。ポルシチにするか、それとも魚か。うーん?」
高カロリーのカレーにしたから魚にでもするか。ここで魚のカレイと小ジョークを一発でもやろうかなと考えたが、素人がやると
怪我の元になるのが目に見えている。
「それじゃあ・・・
今なら夏が旬で栄養が豊富な鱚が並べていることだろう。
料理や釣り人にも人気が高い魚。主に
個人的には魚料理のバリエーションが多くないので冬雅の腕なら、どんな鱚になるか個人的には興味がある。
満面な笑みで承諾するであろうと思っていたが口を開けたままの絶句。
(あれ?変な事を言っていないよなぁ。うん、振り返ってもそんな発言はなかった。なら、どうして)
驚きと困惑をしたまま硬直。沈黙が流れていくと停止した世界に
迷い込んだ錯覚がした。本当に錯覚なのですぐに頭の隅にゴミを丸めるように追いやる。
とりあえず何か言わないと。
「冬雅?えーと恐ろしいものを見てしまったかなGとか」
「あっ、いえ!そんなこと無いよ。その、お兄ちゃんは、キスがしたいのですか・・・わたしと?」
最後にボソッと何かを言ったようだけど声が小さくて聞き取れなかった。思った反応と違い、慌てている。それに頬を真っ赤に染まり耳までも変化していて、目は斜め下の左右に行ったり来たり。
まとめると原因は不明だが何かが羞恥心で困っていることだった。
「たまには鱚にしたかったのだけど駄目だったか?」
「そ、そんなことないよ。お兄ちゃんとなら・・・待って。ちょっとかなり混乱していて整理させて」
「ああ、ゆっくり深呼吸すれば少しは落ち着くよ」
「はい・・・すぅー、」
何が原因なのか応えれるか、分からないので整理がつくまで待つことにした。せっかくなので俺も
冬雅の反応に考慮に費やすとしよう。
先ずは鱚が食べたいセリフからおかしい反応を示した。やはりGなのだろうかと背後に振り返り見渡すが、いない。隠れるのがフィクションの忍者と遜色がない・・・いや、そこまで知能がないか。
冬雅は、どうだろうと気になり正面のやや下に戻す。
「あ、ああぁ、あのお兄ちゃん嬉しかったですけどキスって経験が?」
落ち着いたはずだと思うけど涙ぐんでいると心が痛くなる。
冬雅には苦しみ耐えているような表情じゃなく笑ってほしい。
けど、経験がなにを指すのか?
食べるにしてはおかしいし、やはり
俺は少し明るくさせようと冬雅を見習って明るく笑ってみせる。
「ああ、ちゃんと本で調べたんだけど思ったよりも上手くいかなくて・・・最後は食べないといけないのかと辟易して食べたのが懐かしい」
まだその時はレシピ本を書かれた材料を一部だけ使って無いのは代用というのやって失敗したことがあった。
さらに失敗は重なり合う。火力を間違い焦げてしまい弟の移山とまずい失敗した鱚を食べることになった。あれは地獄だった。
「食べた・・・・・っー!えええぇぇーー!?そんなことは、でも!なら。
お兄ちゃん!頭の整理をさせてください」
「りょ、了解」
冬雅は後ろを向き、ゆっくりと呼吸を整え始めた。あの冬雅が2回も整えさせるのは一体なんだろう?
「お兄ちゃん・・・再度、確認しますけど・・・・・キキ、キスするのですか?」
背後を振り返り真っ直ぐな眼差しと恋情の並々ならない念があった。
いつもとは違う告白とは画した覚悟を。だからこそ俺は一瞬だけ思考が停止してしまい見惚れていたことに恥ずかしくなって視線を逸らすのは向き合う冬雅に失礼だと
感じて想った事を返さないといけない。
「あ、ああ。やっぱり食べるなら今の時期かなと思ってね。
嫌なら別のにするけど」
「・・・・・そ、そうですか。ううん、嫌じゃないけど心の準備がつかなくて。お兄ちゃんと長くいたらそうなるのは自然ですよねぇ
分かりました。お兄ちゃん!
キスしましょう」
両手を祈りを捧げるように胸の前で組んだ冬雅は上目遣いでそう言った後に目を閉じた。
待っているその姿は、キスを――
ここに来てようやく謎は解けた。
「冬雅・・・その申し訳にくいのだけど誤解していた。お互いに、
俺が言ったのは魚なんだよ」
「さ、魚・・・・・」
ゆっくりと目を開き茫然自失の冬雅。理解をするまで沈黙が流れ
徐々に奇跡的な誤解だと分かっていき恋情とは違う羞恥心の表情になる。
「お、お兄ちゃん!?えーと今のは忘れてください。わたしが勝手に妄想していただけですから。
ぜひ、お願いします」
「あ、ああ。何もなかった夢を見ていた事に」
混乱した心から出てきた言葉に意味がなかった。俺と冬雅は目を逸らして拙くなった語彙力と
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