第245話―かくしマナ―

5月30日の冬雅と挨拶は、ぎこちなかった。


「お、お兄ちゃん・・・おはよう、ございます」


吹き荒れる勢いはなく、吹かれる風は草花が揺れるか弱さ。

お互い日課としているベランダの談話は初めての事態にあった。


「あ、ああ。おはよう・・・・・ふ、冬・・・雅」


「うん・・・」


俺の誕生日から過ぎて翌日の時間は考えさせるには十分だった。

そうだ、昨日の数々としたのは心が激しく波立つまま伝えたことや、冬雅のタックルで至近距離、

それに日記とか。


「やっぱり、わたしが帰った後には日記をお目通しをいただけました?」


「いや、実はまだ・・・なんだ」


「ハァー、そうですか。お、お兄ちゃん別に見ていいんですよ。

多分だけど、お兄ちゃん気を遣って丁重に扱っていると思います!」


「まぁ、いずれは・・・昨日は俺の誕生日に来てくれてありがとう。

こんなに祝福されたのは初めてだよ」


「お兄ちゃんのためなら当然だよ。今までお世話になっていますし、明るくさせてもらっていますから!」


マスクしていない冬雅は、屈託のない笑みを向ける。

マスクをしていないため距離感には気をつけないといけない。

特に冬雅が両親には聞こえないよう提案したのだから協力したい。

いや、俺もベランダぐらい挨拶や他愛のない話をしたい個人的な理由もあったのが適当。それはそうと話題を逸らそうとした振ったものが広がるとは思わなかった。


「驚いたのは、まさか香音から

手を大事にハンドクリームだったなんて」


「えへへ、良かったですねぇ。

今の時期は肌をいつも以上に気をつけないといけませんからねぇ・・・本当に大事にしてください」


「心得ているよ。冬雅達が悲しそうな顔をさせたくないからなぁ。

自意識過剰な気がするけど」


「別に間違っていないと思うよ。

わたしは、お兄ちゃんが悪くなるの見ていて悲しくなるから・・・真奈達だってそうだって顔を窺えば気づくよ」


「いや、無理しなくていいよ。

俺がよく知っているから」


「いえ、お兄ちゃん何か勘違いしています。言ったことは事実です。それに・・・お、お兄ちゃんには、もっと幸せになってほしいですから」


「・・・・・」


「ほ、ほら!お兄ちゃんも、わたしが大好き・・・・・大好きで大好きな気持ちなわけですから、その逆もあるかな思います!」


「そうなのか・・・」


「お兄ちゃん?・・・・・あっ!」


誕生日では盛大に祝いの言葉に涙腺を最後まで耐えれたのだけど、

いつもの会話をするはずが冬雅の温かさに耐えれなかった。

28歳になって初めて感動して涙を流れていく。俺はいい歳して何をやっているのか自分に叱責したくなるほど恥ずかしい。


「・・・お兄ちゃん、来年も感動させられるよう祝いますねぇ。その年も・・・おばあちゃんになっても」


冬雅は天使のように微笑み言った意味は、これからも祝う言葉だった。その言葉だけで十二分以上の

誕生日プレゼントがあったが、

冬雅なら励ましや豪語した装飾された言葉ではなく誠に有言実行しそうだ。


「ありがとう。けど無理しなくていいから。関係が続いている間までいいよ」


「ふぇ!?か、関係って・・・どんな関係なの?」


「普通に友好的な意味で!」


関係を問われば俺も困るけど、友好的だろう。凄まじいほど曖昧模糊あいむいもこ


「あの、お兄ちゃん!相談したいのだけど大学の件で」


俺と冬雅は度合いによるが恥ずかしい思いをしても立ち直るのは速くなっている。全然、自慢することじゃないけど。


「大学か・・・受験生の相談に力なれるか分からないけど俺なりにアドバイスさせてもらうけど、

悪魔で参考にしてくれ」


「うん。どちらかと言えば、お兄ちゃんと大事な話です。

わたし遠い大学に引っ越し手続きをもし始めたら・・・一緒に同棲してくれませんか?」


「相談というより告白だったぁぁーー!!?」


俺は頭を抱えるポージング反射的にしてしまった。どの方向から見てと告白だ。同棲の誘いをされた俺の答えは、ただ一つ!


「わるい、諸々の問題があるので断らせてもらいます」


「そうですよねぇ。分かっていました」


「気になったけど遠い大学に受験を励むのか?」


「いえ、近くにいい大学があるので、そこに入ろうと考えていました。・・・もし変更したら、お兄ちゃんついてこれるかな確認を」


「そうか。けど、俺といるために行きたくない大学に入るのは、やめてくれ。必ず後悔はするから」


「ご心配させて、すみません。

でも本当にいい大学ですから安心して、お兄ちゃん!」


「なら、いいけど」


「お兄ちゃん、それじゃあ今日はこれで。運命の出会いをしたお兄ちゃん大好きだよ。絶対に

同棲するよう魅力になってみせるよ」


「あ、ああ。勉強や運動を優先に」


その朝、比翼の機嫌は悪かったのは冬雅の会話によるものと想像、難くなかった。

そして5月が過ぎて6月1日。

暖かな陽気は暑さが増した日差し。暑さを感じる時期、冬雅の着る物も変わる。熱中症にならないよう気をつけないといけないのは分かるが俺は冬雅の格好をもう一度と見る。


「お、お兄ちゃん。その色々と視線を感じて恥ずかしいのだけど」


「ご、ごめん」


上はノースリーブとへそが見えるマンガのような極端な薄着のトップス。太腿ふとももが眩しく引力が起きてしまうホットパンツ。露出度の多さに俺は思った。


(その格好するの速すぎじゃないか!?)


いつもよりもドキマギして冬雅と

趣味の話や相談を主にした。

それにしても格好が、ほとんどLISTENERSリスナーズのメインヒロインと負けず劣らずの格好に俺は嘆息した。

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