第244話―主役の誕生日はハーレムになるのがお約束エンド―
「それじゃあ。冬雅に変な気を起こすんじゃないわよ!真奈様を赤くさせた変態」
「香音はそう嫉妬しているだけだから気にしないでくたさいね。
失礼します」
「茜それ勘違いよ!?」
靴を履き終えた三好さんと香音は別れを告げて、
「お兄さんが楽しめたなら嬉しいかな。じゃあねぇ」
「ああ。十二分に楽しめたよ。真奈、また遊ぶの楽しみにしているよ」
三人は帰っていく。真奈の姿が見えなくなるまで門の前で冬雅と比翼は手を振り続けた。
なかなか会えない寂しさから別れを惜しんでいるのが推測しなくても魂に伝わっている。
「戻りましょうか、お兄ちゃん」
「ああ。そうだな」
「もしかして冬雅おねえちゃんも?」
「うん。まだ時間的に怪しまれないから大丈夫だよ」
ちなみに冬雅の格好は男装している。隣の家が実家なので、再び変装またはコスプレをしていた。
けど、その美声で正体か分かると思う。
喩えるなら声優さんの熱狂的なファンが声を間違えるに等しいほど。
ちなみに絶対にファンなら間違わないと喩えた俺だがエンディング
でキャストが別の人だったのは今年で
賑やかだったリビング。余韻が残っていたが比翼は元気だったが疲れたのかソファーで腰掛けた俺の膝の上で寝息を立てている。
(ふわぁー、なんだか俺も眠くなってきたなぁ。寝ると昼夜チェンジライフになるなぁ)
冬雅は微笑を浮かべて愛おしそうに比翼を眺め、移山はスマホをポチポチと押している。おそらくグラブルだろう。
そして居室は
「久しぶりに、わたしとお兄ちゃんの二人きりですねぇ」
「二人が残っているけどね」
「そうですけど今は話をしているのは目の前にいる、お兄ちゃんとこんなに近くにいるとドキドキ感が増します」
「そ、そうなのか。冬雅ほどほどに」
「えぇー、善処します」
これは善処しないで、いつもの勢いで行く顔だ。全力全開で告白を
されるのだろうなぁ、ロマンチックな空気になったら少し警戒しておこう。
「うっぅぅ、落ち着く。
なんだか、わたしの家みたいに寛げるんだって改めて気づくよ」
伸びをしても目立っていない。言葉を濁すが、そんな動作すると主張するところが。ソファー深く
(本当に我が家みたいに。
俺も冬雅が家にいるの違和感やお客様じゃなく、暮らしているのが当たり前になっている)
冬雅との関係をどう説明をすればいいのか俺にも、よく分からなくなってきている。
(隣に住んでいて、告白を断って恋心を冷めるまで根気よく傷つかないよう気をつけているだけ。
では心はそれを否定している)
ずっと隣にいてくれて笑顔を絶やさない愛おしい人・・・なんて・・・・・思っている。勘違いしている、そんなの幻影じゃないか。
「お兄ちゃん、わたしがいるよ。ずっとだよ」
自分の考えを整理をしていると、何を思ったのか冬雅は俺の頭を優しく
「えーと、冬雅これは?」
「悲観そうにしていたので、気づいたら手が動いていました。
お、思ったよりもいいですねぇ。お兄ちゃんをなでるの斬新で!えっへへ、よしよし。いいこ、いいこ」
「わ、分かった。お陰で元気になれた!だから、もう平気だよ」
「お兄ちゃん、かわいいよーー」
警戒心はあったが、熟考したのが原因だったのだろう。俺は、冬雅にされるままに頭を撫で続けられる。悲しいことに喜んている
俺がいるから色々と手遅れだと思う。
どれほど経ったか、満足した冬雅は手を離して背筋を真っ直ぐ座り直し前方のテレビ(今はニュース)を見ていた。
「んぅー、」
比翼が膝の上で寝返りする。落下しそうになり引き戻す。危機一髪だった。
「それじゃあ俺は比翼を運んでいくよ」
俺は比翼を起こさないよう細心の注意で立ち上がり、背と
「運ぶ?・・・・・そ、それ!?おお、お、お姫様だっこしている!!」
「えっ?ああ、そうか。お姫様だっこになるか。これだと」
「無自覚だった!!お兄ちゃんどんどん天然が進化して行っているよ!」
今は比翼を二階に運ばないと、腕力が平均ほどでは軽い比翼であっても苦しくなって維持は困難になる。
羨望の眼差しには、なんでもない。早く二階に運びベッドをゆっくりと寝かせる。俺は軋み音がどうしても鳴るが唸り声もなく安堵してドアを閉める。
よし、任務完了した俺は居室に戻ろうと――
「わぁー!?あ、足が・・・
冬雅が階段の近くの壁に体重を預けペタン座りをする。
横目を数度チラッと、独白と棒読みのアピール・・・疑いもなく演技を始めた美少女に俺はつい苦笑してしまった。
「あっ、そこにいるのはお兄ちゃん!わたしをお姫様だっこで運んでください」
しかし俺の苦笑を気にせず両手を伸ばしてきた。
「その行動力には、ある意味スゴイと思うよ。はい、引っ張るよ」
伸ばした手を掴んで優しく引っ張る。冬雅は反論をしたそうに口を開くが出るのは言葉ではなく
諦念のため息。どうして、そんな演技をしたのか数分前を振り返れば思い至る。お姫様だっこに憧れる目をしていたら。とくに冬雅が
思い浮かんだら、行動に移るのが速い。
「あ、ありがとう。お兄ちゃん」
立ち上がらせ手を離すと「あっ・・・」名残惜しそうにして、上目遣いで求めてきている。
そ、そんな顔をされても困るのだけど。なんとか話題を変えようと気持ちを伝えようと頭をよぎる。
「少し無茶をしたんだと思うけど冬雅・・・俺の誕生日ために来てくれて改め感謝するよ、ありがとう」
真っ直ぐ見上げ瞳を少し見開き驚きの色。すぐ目を細めて優しそうに微笑む。
「お兄ちゃんから真っ直ぐ感謝されると照れますねぇ。ですけど、
お兄ちゃんのためなら火の中、水の中でも行く所存です!
大事な誕生日を祝いたい。
それに逢って愛を伝えたいですから」
意気揚々と意思表明をした。もはや俺の中では冬雅が告白するのが
常識になって来ている。いずれは
終わるかもしれないと考えても。
おそらく今の冬雅は恥ずかしさを噛み締め告白をするのが、大きな変化を
熱烈な好意を言葉と瞳を向けられ
別世界に召喚された気持ちになる。そんな告白を続けられ俺の鼓動は聞こえるぐらいに高鳴っている。
「冬雅・・・・・今から俺が言うのは世迷言だと思ってほしい」
「?キョトンとさせる発言ですけど、うん!いいよ何でも言ってみて。わたし的には告白で返して
ほしいかな・・・なんて」
「優しくて眩しい冬雅を俺は見ていて好きに・・・いや、大好きになっていた」
「・・・・・へっ?」
「聞えないなら何度も言ってやるよ。俺は冬雅の真っ直ぐな気持ちや頑張りを見て大好きになったんだ」
「わ、分かったよ。分かったから終了お兄ちゃん。わ、わたし心臓が爆発しそうになっていて整理とかさせてほしいよ」
「ああ、分かった」
いつものように声音で返事し、冬雅は反転して深呼吸を始める。
こんな反応をするとは。誕生日だから少しは虚飾や隠す発言ではなく去来する思いのまま伝えたい。
必然そんなことをして
「・・・お兄ちゃんは、わたしが・・・大好きなんですよねぇ」
背にして顔を見せずに長い髪を背中を覆うまである冬雅は僅かに声を小さく言った。
「そう、だね。俺は冬雅を大好きだ。たぶん、この気持ちは変わらないと思う」
「わぁー!?・・・そ、そうなんだ。
お、お兄ちゃん今から飛びつくので受け止める準備をしてください!」
「よし分かっ・・・た?
あれ、おかしくないかな冬雅さん!?」
飛びつくのに準備。それは心の意味に受け取れなかった俺は
違和感を覚えて具体的には何をするのか確認しようとする。
冬雅は
「や、やあぁぁぁぁっーー!!」
小さく気合を発すると走る。真っ直ぐと速く廊下を蹴り進む。
そこで先程の違和感の正体が分かった。ああ、全力で飛びつく意味ですかと悟る・・・ど、どうしよう!?
そんな事をしたら倒れてしまうじゃないか。
(そ、そうだ。壁に手をつければ・・・うわあぁぁーー!?ぐわあぁ)
両手を広げて飛びつく冬雅。
まるで、虚構の世界にいるようだと見惚れてしまったのがロスさせてしまう。俺は見事にうつ伏せで倒れる。いってて、何をするんだよ!と怒るのが一般的だが先に冬雅が怪我をしていないか顔だけ上げる。無事だった俺の胸で顔を埋めて表情は分からないが。
「大丈夫だったか冬雅?」
「う、うん。お兄ちゃん勢いまま飛びついて、ごめんなさい。
だ、だ、だ、大好きって面と向かって言われたりしたら・・・ブレーキが壊れて」
「そうか。冬雅はすぐ狂戦士のような部分があることを失念した俺の失態だったなぁ」
「わたし、お兄ちゃんにそう思われていたのですか!?」
「もちろん冗談だよ・・・たぶん」
凶暴ではないが、その余りあるほど行動力には
首が痛くなり顔を上げたまま維持が難しくなり下ろす。視界に入るのは普段は、あまり目にしない天井。
「そ、その。わたしが襲ったみたいになって、ごめんなさい」
そして、冬雅は顔を上げて立ち上がろうと手を廊下に。そして離れていくことに残念のようで安堵するという謎も起きたが追究するのは、やめておこう。
「あっ!」
冬雅が目を大きく見開く。四つん這いの体勢で俺を下から見る冬雅。これは、まるでラブコメ特有イベントであるものだった。普通は男女が逆にするが。
(近い!すごい美少女で可愛いなんて思っている場合じゃないのに。思考や行動が出来ない!?)
「お兄ちゃん・・・」
愛おしそうに声を出さないで。
思考がオーバーヒートするので。
それは冬雅も似た状況でお互い動かないまま見つめ合う。決して
逸らさず静かに。
「・・・お、お兄ちゃん!!これ受け取って」
先に動いたのは冬雅。雪に積もったようの白い頬は鮮明な赤のまま。ショルダーバッグから、日記のような物を胸部に置かれ、冬雅はゆっくり立ち上がる。
「わたしの日記です!」
鼓動が高鳴るまま、俺は胸に置かれた日記を手にする。んっ、日記?
「・・・ああ、プレゼントか。ありがとう大切に使わせてもらうよ」
「・・・そ、その新品じゃなくて使用した日記です」
「んっ?使用した日記、もしかして冬雅の」
「うん・・・はい!」
何故か2回も頷かれ答えた冬雅。
理解したけど理解が出来なかった。普通は親しい人であっても日記を見られたくないのが普通だ。
「受け取っていいのか。せっかく書いたのに俺なんか渡しても」
「ううん。・・・だ、大好きなお兄ちゃんの誕生日プレゼント再復活イベントです」
どうやら誕生日プレゼントは、まだあったようだ。
冬雅が最初の告白して何日後に書き始めたのが文字を追って推測した。
「み、見たわけだけど。本当にいいのか?今なら返すけど」
「だ、大丈夫です。パソコンでコピーしてもう1冊をありますから。な、なんだか裸で見られているようで恥ずかしいです」
「・・・・・・・・・・」
確かに日記には言えない思いやポエムのような事を書きたくなる。心を見られているのと同義に等しく一糸、纏わず裸で見られているのは言い得て妙。
「そ、それじゃあ、わたしはこれで。お兄ちゃん最後に誕生日おめでとうございます。
わたしも追いつけるように頑張ります!」
「意気込んでいるところ悪いけど年齢は追いつけるものじゃないよ」
「体じゃなくて心の意味だよ!お兄ちゃん。また明日」
「ああ、また明日・・・冬雅。そう言うけど玄関まで見送るよ」
「えへへ、早かったですねぇ」
速く退出したかった冬雅は別れを告げたが、それをするのは玄関で。それから俺は日記を読むのはもう少しでいいかと結論。
寝台に横になると誕生日はハーレムみたいになっていないかな?と
自問自答をして、出た答えは考え過ぎだと一蹴しかなかった。
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