第240話―孤独を忘れた山脇東洋―

何か飲みたい。

喉の渇きで飲料水が無性に欲しくなり側で眠る比翼を起こさないよう気をつけて出る。


「ふわぁー・・・・・」


眠たい。思ったよりも早く起きたのかもしれない。リビングに入って、まず先にするのは壁掛け時計

の針を見ることだった。


(うわぁー、なんて時間に起きたんだ。3時って・・・二度寝するかしない判断しないといけない時間じゃないか。いや、逆に今から眠れば早く起きれるか)


目覚めて真に馬鹿らしい事で考えて結論に至る。取り敢えず、喉の渇きを満たしたら寝よう。

俺は冷蔵庫の麦茶を飲み、そのまま部屋に戻りベッドに眠りにつく・・・・・。


「おにいちゃん大好き」


仰向けと首は横に寝ていた俺は誰かが上に乗っているのを感じて瞼を開く。それに頬には柔らかい何かが当たっている。


「・・・・・マジですか」


その正体は比翼。柔らかいのは比翼の横顔によるものだった。

少し生えてきた髭が痛かったのか

「うーん」と唸り声を出す。すぐに離れないと。それにしても比翼は

上で気持ちが良さそうに横になって眠っている。ここまで懐かれて光栄の極みと感動するよりも距離が近すぎる。少し動けば比翼の口が頬に当たる危険がある。


(なんとしても頬にキスは避けないと)


かなり軽い比翼を起こさず、ゆっくりと動かし最初の位置に戻すことに神経を研ぎ澄ます。


(あれ?背中とか押しているだけだけど・・・触っているからアウトな気がしてきた)


もちろん胸には触っていない。

全幅の信頼をする比翼を裏切る行為にもなるし。

定位置に戻すことに数十分ほど費やした。さて、二度寝もとい三度寝しようと試みたが夢世界にいけない。

衝撃だったのかすっかり眠気がないのに眠たい矛盾、

そしてリビングに下りた。


「・・・・・ふわぁー」


久しぶりにしていたソファーで寝ることにした。


「起きろ兄者」


眠りについて、弟に起こされた。

嘘でしょう、カーテンの隙間から明かりがないからして遅い時間じゃないか。


「寝るなら上で寝たほうがいいぞ。後で比翼が騒ぐことになる」


もしかして起こしたのは、それが理由なんじゃあ・・・・・ともかく忠告はありがたいが。


「たまには、ここで寝かせてくれぇ〜」


経緯を説明するのが惰眠を貪りたい欲に屈した俺は脱力感のある

返事をする。


「おう、分かった」


すぐに受け入れるんだね。別にいいけど。三度寝から四度寝をする。


「・・・眠れないから起きる!」


妨害を続けられ俺は今度こそ起床することにした。

ベランダ逢瀬――違った挨拶に冬雅は、流石さすがというのか疑問を抱いて質問をされた。

素直に答えたら冬雅はこう言った。

「もし困っているならベランダを超えて、わたしの膝で寝ませんか?」

もちろんフリーズした。起動するまでかなり時間を要した。

衝撃なのは、それぐらいで今日も比翼に勉強を教えて休みに一緒に遊んだ。そして時間は20時、午後8時に俺と比翼、移山の三人は

少し遅めの夕食。

比翼がいるが血縁関係など共有する時間と思いよりは底辺と考えている。つまりは実の家族とか血などというこだわリない。家族団欒だんらんとしていると。


「おにいちゃんブランコのような動きをしているけど眠たいの?」


「えっ?あっ、ああ。かなり眠たいかな」


今日のメニューは、ツナ缶を使ったパスタ料理と味噌汁。

どうやら比翼に声を掛けて俺は船を漕いでいたようだ。前後に揺れる姿をブランコか・・・小説の描写に使おうと俺は考えた。


「兄者あんなところで寝るからだぞ」


「そうだな」


「おにいちゃん!今日は5月28日で花火の日。今から花火を見よう!」


隣に座る比翼は決意に固めた笑顔で元気が溢れる声高に言った。


「えーと、突然の宣言に戸惑ってしまったが急にどうしたの?」


5月28日が花火の日なんて初耳で

脈絡のないセリフに二重の意味で分からない。


「食後に一緒に見ようと思っていたの。テレビの画面にだけど」


「ああ、PS4で花火の動画を見るのか」


「うん!そういうわけでいいよねぇ」


花が開花するような満面な笑みで言った。


「持ちの論。いいよ」


「いいぞ」


俺と移山は快諾した。比翼は「やった」と小さく歓喜してコントローラーで操作する。食事中に操作

は、どうなんだろうと思ったが

言わないでおこう。比翼が選んだのは秋田県、大曲おおまがりの花火大会にした。

ランキングで一位になっている有名な場所だと比翼が言った。

へぇー、詳しいなぁと俺は感心して思った。もしかして事前に調べてくれたのかと。


「おにいちゃん、いつか一緒に花火大会に行こうねぇ」


「今年は難しいだろうけど。

何年になるか分からないけど絶対に行こう!」


約束を交わす。大人になって裏に何かあるのか感じ読もうとしていたことがあった。裏表のない純粋な約束をする比翼に郷愁感を抱きあの頃を思い出すのだった。


「に、しても約束を果たすときは比翼はどうなるのかな」


「「・・・・・」」


ボソリと呟いた移山。プライベートでは思った事をすぐ口に出す。

比翼は不登校の扱いになるか分からないが中学生。そして卒業も現実的に考えないといけない。

高校に通わせる考えているが、家出少女をかくまい性的な目で見ていると社会はそう判断さるるのだろう。その時になって

俺は何を判断して比翼は、どうするのか遠くない一年後に不安を募らせていく、快晴の天気が次第にくもっていくように。

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