第239話―比翼の生誕日其の伍―

次に遊ぶのは、バランスゲーム。

取説によると長方形の形をした物を三つ並べ上に重ねていき小さなタワーを作り、そこから手先を注意深く骨組みとなる部品を

取っていく。運悪く崩れたらゲームオーバーになり敗北となるのだ。と解釈をする、これで間違っていないはず。


「ふーん、そんな子供みたいなルールで楽しいのかな?」


香音おねえちゃんはピラミッドのようなタワーを見て、つまんなそうに言いました。


「説明を一通り見た感じだと楽しそうな展開になると思うけど?」


穏やかな笑みで茜おねえちゃんは述べます。


「あれ?二人は、このゲームしたこと無いの」


わたしの中では出来る女性の二人。片方が知らなくてももう片方が詳細に言うとイメージがあった。


「うーん、小さい頃は友度が少なかったから遊ぶ機会が少なかったかな?」


「カラオケとかウノとかゲームするけど、基本的に緩くだからなぁ。

け、けど私は知っているけどね!」


香音おねえちゃんは胸を張ってカッコよくそう言いました。腕を組んで髪を舞うように払う姿は美しい!


「きゃあーー!?香音おねえちゃんかっこいい!!」


「えぇー、本当かな?」


「そ、それぐらい知っているわよ。お手本として私が見せるわ」


仕方なく感を隠さず一番槍となった香音おねえちゃんはタワーを崩さないよう引く。

バランスゲームは最初は簡単に取れたのだけど次第に一つ取るのも

困難になっていく。いつ崩れてもおかしくない緊迫した状況と

奇跡的に取れた光景に「おぉー!」と拍手が起きる。そしてタワーを壊したのは香音おねえちゃん。


「・・・・・も、もう一回。次は勝ってみせるわ」


「あっはは、香音おねえちゃん面白い顔をしていたよ」


「経験者だから負けてみたのよ。さぁ、ここからショータイム!」


香音おねえちゃんが、なんだかカッコいいポーズを決めて真奈おねえちゃんのようなセリフを

言います。2回と3回も不思議な

事に香音おねえちゃんがいつも負けてしまう。


「ここまで負けるなんて、あっはは!もう一度やろう」


「フフ、そうですね」


「はっはは、構わないよ香音おねえちゃん」


もしかしたらと思ったけど、やっぱり二人は初心者のようだった。

取る際に、「どれを取ればいいのだろう」と言動に出ていた。

それはともかく、駆け引きや崩れるのが面白く熱中になっていった。ぼやけた黄昏色に照らされた

部屋は暗くなって明かりをつけて

ゲームを続ける。わたしのターンに回り刺激しないよう引いていく。勢いよくとドアが開きタワーは崩れる。


「あっ・・・・・」


「お待たせー。準備できたよ、比翼・・・あれタイミング悪かったかな?」


弾けんばかりの笑顔で入ったのは、天使のような人、冬雅おねえちゃん。いつもなら飛びつくほど尊敬できて大好きなのだけど。


「マジで最悪な登場だよ冬雅おねえちゃん!!」


「えぇぇぇーーー!?ひどいよ」


伝えに来ただけなのに、理不尽な扱いをされて驚かせた。

負けてしまった悔しさで再戦をしようと決意する。いずれは皆でやろうと心で決めました。


――3月23日はバースデーと――

比翼が居室に足を踏み入れると手に持っていたクラッカーを鳴らす。


「「「お誕生日おめでとう」」」


俺と真奈、移山の3人で少しズレで鳴らしたクラッカー。しかし祝福の言葉には情意投合じょういとうごうして異口同音。声はハモって祝うとキョトンとする

比翼の背後からクラッカーの奇襲。


「「「お誕生日おめでとう比翼!」」」


冬雅が二人の分も用意して三好さんと香音の3人で上手く鳴らして

祝福を述べる。ちなみにこれを提案をしたのは冬雅と真奈であった。


「おねえちゃん・・・ありがとう。えへへなんだか皆に祝われると照れるなぁ」


今日で15歳になった比翼は白皙はくせきな頬を赤らめ、照れ笑いで返事をした。

今日の主役である比翼は、飾りつけた部屋を見渡し感嘆の息を吐いたのを見て頑張った甲斐があった。


「わぁー・・・かわいい飾りが多い。これ冬雅おねえちゃんが?」


「ううん。かわいい花は真奈だよ」


「スゴイ!スゴイよ真奈おねえちゃん。ありがとう、嬉しいよ」


「フッフフ、どういたしまして」


諸手もろてを挙げて喜ぶのは用意した側も同じだろう。

それは俺も白い歯を見せる比翼を

見て嬉しさを覚える。

飾られた花々を満足して次に所狭しと並べるテーブルの上座(テーブルの横だけど)を座らせる。

比翼から順で左には同名同姓の俺こと山脇東洋、真奈、三好さん。

比翼の右側からは冬雅、香音、移山。


「この大きなケーキは冬雅おねえちゃんが?」


唐揚げやポテト、マカロニサラダ等がある中央に陣するのはガトーショコラでホールサイズのケーキ。

作った事がないが、とんでもない時間をかかるのを一時間ほどで作り上げた。俺と真奈も手伝ったとはいえ慣れていて冬雅のケーキの

腕は、すっかり俺を超えている。


「うん。そうなの、低糖質化に成功させ、味は落とした分を削がれていない高いレベルの味覚を味わえるようにした。端的に言って美味しく出来ているよ」


「別に言い換えなくても理解できるよ!それに難しくないじゃない」


比翼のツッコミに俺達は、つい吐き出すような笑い方をする。

右手から握る手に力を込められたのを隣の真奈。この行為の意味は

大半が話かあるケースが多い。例外もあるが。


「お兄さん、そろそろ蝋燭ロウソクをつけようよ」


「そうだなぁ。移山、ライターがあったら拝借したいのだが」


「あいよ」


料理に当たって台無しになるので向かいに億劫だけど俺は重力以外に重たくなった腰を上げ、回って

ライターを受け取り真奈に手を繋がられ一日の蓄積した疲労で勢いよく座り手に持ったライターでロウソクを火を灯していく。


「わたし、明かりを消すねぇ」


冬雅は照明器具の光を消す。最後のロウソクに火をつけ、明かりをあるのはロウソクのみの闇と演出を滞りなく進む。俺は適した言葉を紡ぐ。


「さぁ比翼、火を」


「うん・・・フゥー」


パチパチ、拍手する比翼の生誕日せいたんびを俺達は盛大に祝う事に力を入れる。言葉で

確認を取らずとも今の空間がそう強く感じさせる。火が一つも残らす消えると数秒で照明器具で明るくさせた。俺達6人はもう一度、

誕生日おめでとう!と部屋中に響く高い声で言った。


「ありがとう・・・おにいちゃん、おねえちゃん・・・・・こんな祝福をされたことないから。ううっ」


涙は頬からあごまで伝って落ちていく。感涙にむせる比翼に俺達はお互い近くの顔を見合わせ微笑するのだった。

涙を拭う時間を待つと比翼が気を使ったりするので落ち着くまで待ってから食事への流れになる。

俺は周りの表情が暗くないか眺めていると、そんな類の表情をする

人はいなかった。


「どう比翼。私達が考えて作った物は。嬉しかったでしょう!」


「最高だよ香音おねえちゃん!!」


香音の言葉にオレンジジュースを高く掲げたのを気づき香音もグラスを合わせて二人は乾杯した。

さて、冬雅が丹念に作ったガトーショコラは溶けるような甘さに堪能たんのうで多幸感にある俺は次に進むには今だ!と判断して立ち上がる。

まだ食べ終えず談笑していた皆の視線は俺の方へ集まる。


「あー、それじゃあ次にプレゼント渡しに移ろうと思います」


「プレゼント?それって、わたしに」


「ああ。逆に主役ではない以外を医渡すプレゼントって無いと思うよ」


用意したプレゼントを比翼は、口を開けて何をするのだろうと

首を傾げている。もしかすると誕生日プレゼントを渡された経験とか無いのだろうか。それは俺も十二分に痛いほど理解できる。

学生時代で友達がいたけど誕生日に祝うほど親しくない関係で

誕生日のほとんどは家族にイギリス流の誕生日が毎年に行われていた。

だ、だからイギリスではよくある王道な誕生日で寂しくは・・・なかった。


「おにいちゃん?急にフリーズしたけどお腹いたい」


「そ、そんなこと無いよ。

それじゃあプレゼントを持っていくよ」


「あれ?ここには無いの」


「ああ、別の部屋にプレゼントを置いてあるんだ。勘づくられたくなかったからね」


拙い説明に比翼は、こくっと首肯で返した。そして、冬雅は挙手して誰にも指名されたわけではなく

立ち上がる。


「もちろん、わたしや真奈達にもプレゼント用意しているよ」


「えぇーー!?そうなんだ」


驚愕する比翼をリビングから廊下を曲がって中に入り戻っていく。

プレゼントの箱はは2つ。


「最初は俺からだね。比翼これは髪飾りと歴史小説だよ」


「わあぁー、ありがとう。おにいちゃん・・・えっへへ中を開けていいかな」


「ああ、いいよ」


「この髪飾りはすの花・・・」


比翼は瞠目して矯めつ眇めつ眺めて早速と髪を飾る。


「えっへへ、どうかな?似合っている、おにいちゃん」


ピンクの花を髪飾りを光沢感のあるウェーブがかった黒髪につける。似合っているのは当然だ。

一言で伝えるならこれしかないだろう。


「かわいいよ」


「・・・・・う、うん。えぇへへ」


率直な感想にしたけど恋慕をより強くさせてしまったようなぁ・・・

誕生日だから今日だけはいいか。


「ストレートに伝家の宝刀が来ましたね。年下惚れです」


「マジかよ兄者」


「二人とも違うから」


三好さんと移山が俺の言葉にドン引きと呆れがない混ぜになった声音。そして冬雅と真奈と香音は苦笑した。

ちなみに蓮の花言葉は清らかな心。比翼には似合う言葉。


「次は、お兄ちゃんの妹である

わたしの番ですねぇ。わたしが

得意分野で作った物です」


次は冬雅の番となり、デパート袋を比翼に屈託のない笑顔で渡す。


「えーと、何があるのかな?」


「ドレスと過去のトレンドコーデの数々だよ」


「えっ!?あっ、本当だ。

なんだか個性が強く現れるプレゼントだねぇ」


同感だった。女の子なのでオシャレが出来る衣装が多いのは良いことだけどドレスは必要だったかな?


「こほん、次はワタシのターンですねぇ」


「真奈おねえちゃんのプレゼントなーにーかーなー?」


真奈が別の場所へと置いてあるプレゼントを持ってリビングに入り

自信満々と現れた。余程、自信が

あるのは構わないが不安だった。

プレゼントは、きっとゲームかもしれない・・・いやそれはないはず。


「ワタシ個人的に面白いと思ったアクションゲームとPRG、レース、格ゲを個人的に厳選したゲームソフトを贈呈するよ」


(や、やはりか・・・)


頭痛が起きた。ゲーマーなら既に持っているゲームもありスイッチがソフトもあると少々、困る。


「スゴイ・・・ありがとう!」


それでもゲームが好きな比翼は

満面な笑みで感謝をするのだった。そして次のターンは三好さん。


「私の場合は期待しないでねぇ。はい、アカネ書店らしく少女マンガや実用書と参考書をプレゼントするよ」


「わーい、やった!少女マンガがいっぱい!!」


うーん、比翼やはり少女マンガを読みたいんだなぁ。そのうち本屋に連れて買ってあげよう。


「私のは皆とは違う普通なプレゼントになるんだけど、お化粧道具」


香音がプレゼントに選んだのは化粧品の数々であった。そういえばリア充である香音はお化粧が

得意やもしれない。


「へぇー、これが知らない化粧品がいっぱい」


「使い慣れていないでしょうから、私が教えてあげるわよ」


ある意味で真っ当なプレゼントは化粧道具やも。最後に弟の移山。


「俺がプレゼントするは、ノートパソコンだ!」


「それ古くなって使わなくなったものじゃないの?」


「・・・まぁ、使えるし高性能だぞ」


「堂々とスルーされました」


昔のノートパソコンを受け取った比翼は複雑そうな表情をしていた。皆で平らげた食器の山が重なるテーブルに座る。


「あっ、最後にお願いがあるのだけど、おにいちゃん」


「ああ、今日はなんでもするよ!決意は」


「決意はって・・・今日は5月23日が、わたしの誕生日じゃないですか」


告白をする前のように悶える比翼。小さなくおもむろに呼吸から見上げて俺の目を真っ直ぐと見つめる。


「そうだけど?それが他にもあると」


「その、今日はキスの日でもあるんです。わ、わたしにキスしてくれませんか!?」


「よし了解した・・・んっ?もう一度いいかな?」


キスを要求されたようなセリフが幻聴が聞こえた。


「お、お兄ちゃん!?キスは早いから駄目だよ!!」


「お兄さん絶対に禁止!恋人になってからだから!!」


「分かっているよ。二人とも落ち着いてくれえぇぇぇーーー!?」


冬雅と真奈は赤面して立ち上がり

全力で止めようとする。

勢いで返答したのも相まって、妨害しようとするが、そもそも本当にするわけじゃないか。


――忘却の彼方ない記憶と現在――


わたしの15歳になった誕生日が、終わり今は、おにいちゃんと同じベッドで寝ている。


「すぅー。すぅー」


「てへへ、かわいい」


今日は特に疲れたのだろう。それにしてもキスの日だからって

キスしてもらおうとしたのは恥ずかしくて後悔が、わたしの中で襲う。ああぁぁー!?思いだしくない。


(別の事を考えよう。刺激が強い・・・わたしのパパも誕生日は、わたしと同じなんだよね)


亡くなる前にパパは運命だ!と 歓喜していたが、まだ小学生の記録は鮮明に思い出せる。

一緒に誕生日おめでとうと交わした。

パパは、今のわたしを見たら失望するだろうか。


(ううん。きっと、おにいちゃんやおねえちゃん達に出会えた事に喜んでくれているはずだよね。

それで、パパが未来の恋人になるかもしれない、おにいちゃんに

不平不満をぶつけても認めていて「娘を頼むと」言うよね。きっと)


意識が徐々に薄れていく。わたしは深い眠りにつくのでした。

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