第227話―在宅勤務になった移山パート2―

会社宿泊かホテルを滞在をする弟の移山がゴールデンウィークが

過ぎて来たのか?その疑問を

居室きょしつに移り答えた。


「なるほど、このタイミングなのは道路や電車などの混雑を避けるためか。ともかく移山いざん、夕食を食べるか?」


「いっぱい食べれるヤツで」


「了解」


ソファーでグッタリする弟は、テレビをつけてバラエティを流し目にスマホゲームの複数で行うマルチタスク

これは同時にやる事には器用と少し尊敬されていたが、実は集中力の低下に繋がりミスや不安感などを増やすことになる。


「マルチタスクは、ほどほどに移山」


「・・・・・」


返事はなかった。スマホに夢中か小言がうるさいと感じたか、ともかく帰ってきて懐かしく感じる。


「何を作るの、おにいちゃん」


台所に立つと比翼が、こてこて歩いて訊いてきた。


「家の残り物で作ろうと。そんなわけで冷蔵庫と相談だなぁ」


「ふーん」


少しの好奇心でいる比翼は開けた冷蔵庫を一緒に覗くことになる。

えーと、あるのは玉ねぎや長ネギ、ニンジン、キャベツ、サツマイモだった。高確率で残る食べ物があった。


「少し量がないけどサツマイモご飯と味噌汁になるかな」


「なんだか美味しそう・・・わたしも食べたい」


「こんな時間で多べると太るぞ」


「むっ・・・我慢する」


俺の忠告に比翼は唸った結果そう不詳々々としかめた顔で言った。

いつかは、そんな料理を作るかと俺は考えた。炊飯器にご飯やサツマイモと長ネギと調理酒や塩を入れ早炊きモード。その間に味噌汁をここからは比翼が調理し俺がアドバイスなどする。

出来上がったがご飯が炊き上がるまで移山とな荷を過ごしていたかを話す。もちろんゴールデンウィークや前の日を。


「って、兄者!冬雅が来ないって・・・離婚したのか!?」


「いやそんなはな――」


「離婚じゃなくて、隣に戻っただけだから!

冬雅おねえちゃんは誰も付き合っていない!!」


「うわぁー!?びっくりした。

そうなのか。冗談を言って、ごめん」


滅多に驚かず、磊々落々らいらいらくらくを地で行くような移山が苦笑して謝る。

比翼は移山が引いてしまった事には特に思うことなく理解した事に満足ぎみであった。ちなみに俺はその反応をするんだよなぁと

心の中でツッコミを呟いた。長年、俺という変人の服を身に着けた兄を持つ弟が立ち直るのも早い。


「まぁ冬雅も事情があるから、そこを責めないようになぁ比翼や」


「言われなくても分かっているよ」


移山の言葉に比翼は答えてから嘆息する。どうやら、いちいち五月蝿うるさいと雰囲気に出ている。移山は苦笑してコンビニ袋から安価のお酒カンを出し、プルタブ開けて口に勢いよく流し飲む。


「プハーッ!おいしい」


「うわぁー、おっさんだ」


比翼の冷めた視線に、俺は隣で苦笑するしかない。中学生からしたらそう見られても否定は出来ない。

ちなみに俺は織田信長おだのぶながと同じくお酒は苦手で甘党である。すると移山はカンをローテーブルの上に置いて比翼を見る。


「もうおっさんに決まっている。20代を過ぎたらおっさん、おばさんになる。もう若くないから、

若い時みたいにカラアゲをバクバク食べれなくなってきているしなぁ」


そして兄が変人であれば接触回数が多い弟もその影響下に。

普通にしていたら、気前のいい人に見えるが価値観や結論が色々と

早いと思っている。それは、なかなか帰ってこなくても大きく変わらずで。


「な、なんか、ごめんなさい」


頭を下げて謝罪の言葉をする比翼に移山は温かい笑みを向ける。


「気にすることない。気にしていないから」


「あっ、うん。はい」


比翼は戸惑いながらも頷いて返事をする。ここで、無理して苦笑とか笑顔を作っているなら比翼は

戸惑うことはないだろう。我が弟は根に持たないタイプを通り越して、そもそもが無いと思う。

それは聖人君子という意味ではなくすぐに霧散してしまうことである。例えば普通に嫌な事があれば顔に出るし怒る。とくに昔と今も

する。

話が絶えることなく炊飯器が炊き終えた機械音がリズミカルに鳴る。


(そんなに話をしたのか!?)


7分か8分と思っていたが、けっこう時間が経過していたようだ。

翌日の朝、俺は目覚めてカーテンを開けた。


「・・・冬雅」


「・・・・・」


きっと今日もベランダで待っていると思っていた。ジャンプしたら届く隣の家ベランダ、左右やベランダ自体の大きさも同じで、

建設で男女の幼馴染が挨拶を出来るようにと考えたじゃないのか

思ってしまう。

この2つベランダは、もし接触すれぱ橋になるだろうと空想してしまうほど。いや、そんな事よりも

冬雅と出会えた事が嬉しいと俺は思っていた。冬雅は、ゆっくりとベランダに近づき手摺てすりに手を置く・・・もたれる。


「冬雅?」


「しっー」


人差し指を立て自分の口の前で止める。静かにとジェスチャーでした。

そして空いた左手で来てと動かす。俺はベランダの手すり近づく。お互いギリギリの距離。


「命令したみたいで、ごめんなさい。おはよう、お兄ちゃん」


聞こえないように小声だった。


「冬雅!・・・ああ、おはよう」


「えっへへ、まるで密会みたいでドキドキしますねぇ」


「それは・・・それよりも、冬雅。

寂しくはないか?もし寂しいなら比翼にお願いして遊んでもいいんだよ」


「うわぁー、なんたか懐かしい気遣い。でも平気だよ。

それよりも、お兄ちゃんはわたしがいなくて寂しくありませんでしたか?」


「大丈夫。移山が帰ってきて騒がしいぐらい。それに寂しいなんて

心配しなくていい。俺は、

一人の方が好きだから」


「そうでしたねぇ、愚問だったかな。えーと、お兄ちゃん手を伸ばしてくれませんか?」


「手を?これでいいか」


右手を上に上げる。すると冬雅は首を横に振り「前だよ」と指摘する。そこで何をするのか気づいた

俺は躊躇ためらったが

一瞬だけ。すぐに指示に従い前に伸ばす。


「・・・・・えいっ!」


案の定、勢いよく冬雅は俺のてのひらを合わせてきた。体温や細い指と浮かぶ。不思議と

この掌と掌を合わせているだけなのに繋がりを感じる。冬雅は、俺の瞳を真っ直ぐと向けた。


「お兄ちゃん・・・大好き。

近いのに離れて・・・なかなか、会えない。けど、こうしていれば

近くにいるって物理的にも距離も分からなくなっていく。

ずっと想うほどに、大好きだよ」


「冬雅・・・少しだけなら俺も・・・・・そうだよ」


近くにいるのに迷惑を掛けると考えたら行動に移れずラインで

やりとりしている。昨日のベランダで会ってもここまでしなかった。

話を終わると余韻が残り想いが募っていく。これが恋なのかと思った。


「お兄ちゃん・・・あ、ありがとう」


真っ直ぐ見つめた状態が続けること出来ないのは冬雅。俯き照れを耐えながらお礼を言われた。

手が離れていく。もう少しだけと抵抗感を覚え、そんな自分に軽蔑も覚える。


「お兄ちゃん、それじゃあ。

また」


「ああ、また」


俺と冬雅の今日、朝の挨拶が過ぎていく。今日は冬雅の告白と掌を合わせた事で眠気が霧散した。

一階に降り居間に入ると移山がいた。


「よっ、兄者。比翼はまだ眠っているのか?」


「ああ、ぐっすり眠っているよ。今から料理を作る」


「頼んだぞ〜」


雑感な声を背中に向けられ俺はキッチンにいつものように料理を作り始めた。比翼が起きたのは、

俺が料理をして数分だった。挨拶して俺はあることに気づいてしまった。比翼の目には赤くなっている。もしかすると、俺と冬雅を目にしてショックを受けた比翼は嗚咽を抑えられないほどに――。


(いや、ホラーな悪夢を見ただけ可能性もあるかもしれない。

けど、どちらにしても)


比翼に慰めないといけない。

俺は執筆時間を減らして比翼と遊ぶ時間に使うことにした。

比翼は俺の行動に訝しながらも喜びが強く楽しそうだった。移山は

見ていないアニメや動画を見ると

スマホばかり生活していた。

翌日の日曜。俺は冬雅とベランダで静かに会う。


「お、おはよう。お兄ちゃん元気がないですけど大丈夫?」


いつもの天使の笑みではなく、心配そうにする天使の心配顔。結局は天使になるのが冬雅。

そこまで落ち込んでいないけど俺は落ち込む理由を口にする。


「ああ、落ち込んでいたのは・・・プリキュアが今日も再放送なんだ!」


「あ、あはは。お兄ちゃんらしい・・・かな?元気がない理由は

理解しました。お兄ちゃん、元気だして。よし、よし」


十歳年下の女の子に励まそうと頭をでてきた。大人になってから見たプリキュアシリーズは毎週日曜は欠かさず、時には再放送や前の映画をスマホ等で見ていた。が、こうも毎週日曜で見れない事が長く続くと生活リズム

が狂ったようで落ち着かないのだ。


「ありがとう冬雅。もう大丈夫だから」


羞恥心で、やめてほしいと思いながら顔に出さず感謝の言葉を言う。


「・・・うん。えーと、恥ずかしいのだけど、わたしって・・・ほら、お兄ちゃん大好きですよねぇ?」


本当に恥ずかしそうに頬を赤らめ訊いてきた。とんでもない事を、俺は呆れと嬉しさで笑みが零れた。


「さあ、どうだったかな?」


「お兄ちゃんが大好きなんです!・・・そ、その。お兄ちゃんと一緒にプリキュアや他にも見れないのが悲しいです」


悲観的な冬雅の言葉に俺も同じく思っていた。けど、それは真奈達にも同じ気持ちで下手に賛同は

出来なかった。


「冬雅・・・また一緒に見れるよ」


「ですよねぇ。・・・お兄ちゃん

を愛せて幸せです。バ、バイバイ!」


冬雅は一日と決めていた告白を一方的に伝えた後は、手を振り迅速に去っていく。まだ、さっきの告白や昨日も含めて鮮明に思い出した俺は洗面所で顔を洗う。習慣を

今日も機械的に動かすと余計な事を忘れると思って。少しは心が落ち着き朝食を作りにリビングに入る。

そして昼食には比翼が作ったオムライス。


「プリキュアが見たい・・・です」


「兄者が禁断症状みたいな発言している!?」


「おにいちゃん、わたし二人はプリキュアを見ようと思っていたけど一緒に見ようよ。二人で、長時間で!」


比翼の誘いに俺は悩み断ることにした。気を遣っているのもあるが純粋に見てみたい気持ちが窺えた。しかし見たい気分じゃないなかった。自分の部屋で執筆を一人で黙々とやり続けた俺は窓を見れば夕陽で照らされてく風景。そして、隣家の窓から冬雅が俺の方に見ていたのを視界に入った。


「!!?」


目が会い、冬雅は驚き手を振って去っていった。

珍しい反応だったなぁと感じながら再びリビングに足を向けてドアノブを掴み開ける。テレビの前でゲームに興ずるのは比翼と移山

の二人。コントロールを握り熱中するは無双OROCHI《おろち》3アルティメットであった。


(比翼やっぱり好きだなぁ)


無双ゲームで数多の敵を倒すチートになったような爽快感と歴史が好きなのが。ドアが開く音で二人が気づき俺に振り返る。


「おにいちゃんだ!見て、見て、わたしの華麗な操作を」


「夕食を作るのか兄者?」


離れている内に、すっかり仲良くなった比翼と移山。それは、いいんだがまるで兄と妹じゃないかな?と俺はそう思った。


「ああ、見せてもらうよ。夕食はもう少しはしてから作るよ」


ソファーに座り、どうして意気投合したかを考察する。やはり比翼は、誰にも仲良くなれるリア充が高いと俺はそんな安易な理由で、なんとなく納得をした。

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