第177話―この素晴らしいマナに祝福を!―
「ちょっと買い出しに行ってくる」
2月23日の日曜、昼過ぎ。
冬雅、真奈、三好さん、羽柴さん四人のJKさんが居間でそれぞれ
寛いでいた。正午の食事を終えて俺は冷蔵庫が寂しくなっているのと酢が無くなっていて買い物に
行くことにした。
「買い出しなら、わたしも行きます」
真っ先に反応した冬雅。絶対に同行しようとするのは分かっていた。けど、今夜の食材など揃っていて調味料や納豆など買いに行くだけなので一人で十分だと俺はそう思っている。
「いいよ一人で十分だから」
「えーと・・・お兄ちゃんが一人だと怪しい人について行きそうですので保護者的なわたしがついていないといけません」
「冬雅・・・何か理由をつけようとしたようだけど無理ありすぎる」
「・・・うん、わたしも今になって恥ずかしくなってきました」
「冬雅おねえちゃん!わたしと協力プレイする約束だったじゃないですか!」
そろそろお暇となる
最早、俺の家は比翼と冬雅の家でもあった。そして冬雅は
一日中と遊ぶことで。
「お、お兄ちゃんごめんなさい。わたしと一緒に行くの楽しみにして誘ったのに・・・今日は同行できません!」
コントローラーをローテーブル上に置き次に冬雅は
「冬雅・・・頭を上げてくれ。
そんな事をしなくていいんだ」
「でも、お兄ちゃん」
顔を僅かに上げると不安げで上目遣いに愛おしく思う。
「なに、この茶番劇?」
冷めた目で呆れ果てた羽柴さん。まさか彼女からそんなツッコミされるとは思いもしなかった。
「まさか羽柴さんが突っ込むなんて・・・いつもなら真奈はずですけど」
冬雅は後ろにいる真奈、三好さん、羽柴さんが座る席に振り返りやや
「
それに放置したらスゴイ事しそうな雰囲気だったからね」
「お、お兄ちゃんとスゴイ事――」
「冬雅おねえちゃん何を想像しているか知らないけどレーティングが高そうな考えをしている」
雪を
「あ、あはは。なんだかスゴイ事になったね」
「だね」
三好さんは珍しく困ったように苦笑して真奈も似たような反応をする。帰っている頃には冬雅は落ち着いているだろうから、そのまま放っておこう。
「留守番を任せるよ」
「はーい!」
ドアノブを回して開けて振り返らず頭にすぐ浮かんだ言葉を言うと
比翼が元気よく返事する。
「お兄さんたまにはワタシと行こう」
真奈が、足音を立て近づくのと同時に同行すると後ろから言われた。振り返ると、もじもじとして
これ以上は発する余裕が無さそうだ。
「真奈、よし行こうか」
「うん!」
冬雅が同行すると強く思っていたが約束を反故には出来ず、もう一人で行こうと決めていたが真奈と二人で買い物するのもいいと思い快く返事して真奈は嬉々として笑う。
「少し寂しいですけど真奈、嬉しそうだね」
「って、冬雅!?お兄さんと行くのは嬉しくないけど勘違いしないで!!」
復活した冬雅は明るく送り出す。ぐぬぬっと唸り声で睨んでくる羽柴さんに目を合わさないよう気をつけて居間を出て安堵する。
その際に真奈は首を傾げていた。
そんなわけで真奈と買い物となった。
「あっ、お兄さんこれ比翼の大好物なんですよ!」
最寄りの業務スーパー店内、日曜だけあって人が多い。
真奈は指で商品棚に並べている中を指すのはマシュマロだ。棚にあるマシュマロを真奈はカゴに入れる。
「ああ、知っているよ。
けど真奈は皆をよく趣味嗜好とか熟知しているよね」
「熟知ってほどじゃないけど、
一緒に遊んでいたら
冬雅はお兄さんに女の子として意識してもらおうと思想錯誤のあまり荒唐無稽な案を出るし、
茜は本なら知識が豊富で
友達の話となると真奈は喜々とした笑みで
出来ないような不器用な部分がある真奈に、まるで主人公だなと
新しく情報で認識が変わる。
「スゴイなぁ真奈は。だから俺は真奈を尊敬の念で持っている」
「も、もう。尊敬の念とか言われてあまり嬉しくないんだけど」
少し不満だと顔に出て俺はつい頬を緩めて笑う。高飛車のような態度ではなく甘えてくるのだから。
「それじゃあ真奈の好きな物を教えてほしいなぁ」
「な、何・・・
他の女の子がときめくような!
・・・・・んー、そうですねメロンがワタシ好きです」
「メロンか・・・スーパーのメロンでいいなら買うけど」
「い、いいよ!お兄さん金欠なんだしそれ以上しないで」
真奈が預金残高が、やや危ういのを言ったつもりないけど心配され
ていたとは。いや、金欠なのは普段の生活で見ていたら分かるか。
最近、ケーキや服など買っていないし。
「そうだとしても余裕はあるよ。俺はメロンが食べたくなったからカゴに入れよう」
真奈が
後でいらなくなったとか、分けるとか真奈に日頃の感謝を込めて
食べてもらおう。
「お兄さん。本当にいいですから下手な芝居をしても解るからね」
果物を売っている場所を向かって足を向けて行く俺の後をついていく真奈が止めようとする。
それよりも考えが読まれているだと!?軽く読まれやすい軽はずみな言動に自省していると、野菜と果物コーナー近くに出入口があり自動ドアが開いて入ってくる綺麗な女性。
「あら?」
足を止める若い女性。俺と真奈を交互に視線を動かして見ている。
確かに目立つけど、おかしくないか?
「マ、ママ!?」
「えっ?ママ・・・もしかして女子大生のようなあの人は・・・・・」
振り返り空いた口が塞がらない真奈はフリーズして言葉も行動も
止まっている。
「はい。ママだよナーちゃん」
にこやかな笑顔で言った17歳の母とは思えない容姿に俺は、ああ!前に見たことがあったと思い出すのだった。
「男の人が運んでくれるのは助かるわ」
「えーと、どうも」
「どうしてお兄さんがお礼しているんですか!」
「いや、こういうの慣れていなくて」
俺は真奈の母親の荷物を持ち
平野家の自宅へと生活道路を歩く。
普段は極力と話さないよう暮らしているのもあって話術が死滅しているほど。ビジネストークなら少し出来るけど、この日常的なやりとり一番、苦手なんだよなぁ。
「ふふ、仲がいいのね」
「あっ、はい。真奈さんには色々と助けられています」
「そうなのね。山脇さんはナーちゃんのどこに好きなったのかな?」
まるで、年下の女子大生にしか見えない真奈の母親は自然な顔を傾けて尋ねる。前の俺ならドキッとした仕草だ。
「えーと恋愛の意味でない方面で言わせていただくと・・・優しいところやゲーム強さとか勉強が――」
「や、やめてぇぇーー!!
ママは変なことを言わないでよ。なんでお兄さんは普通に答えているんですか!?恥ずかしくないんですか!!」
真奈の母親の荷物を家まで運び
冬雅達に少し遅くなるが日が沈む前に戻るつもりだった。
しかし、そのミッションは
「まぁ、まぁ!ナーちゃんたら
手を繋いで。もしかして普段から?」
「えっ、あ!そうですね。はい」
家に辿り着き、リビングに断る暇もなくリビングに案内され御礼にとお茶と菓子で歓迎される。
そこで、疑問を持ったのが帰りまでずっと手を繋いでいたことだった。ここまで来て聞かない方が無理があるか。
「フフッ、そう、そうなのね」
「ママ何をニヤニヤしているのよ!」
「ニヤ、ニヤ」
「擬音を言葉にして娘を遊ぶなぁぁぁぁーー!!」
微笑ましそうに真奈の母親に見られて地に浮いたような気分だ。
指摘されても真奈は離そうとしないし、質問攻めや値踏みされているような落ち着かない気分を真奈の温かさを感じる繋いでくれているおかげで少しは落ち着いているのもある。ま、まずいなぁ好きなのは冬雅だって決めているのに。
「やっぱり、もうキスとかしたの?」
「どうして、そんなストレートな質問ばかりするのよママ!!」
「あら、ナーちゃんに怒られてしまったわ。山脇さんいつもナーちゃんといるときもそうなのですか?」
「まぁ、そうですね。あそこまで叫ぶのは初めて見ましたけど
年相応な反応で微笑ましく思います」
「・・・・・は、はぁ!?お兄さんいい!ママがいるのに時と場所を選んでよ」
右に座る真奈が夕日に彩る雪のように赤くなる顔に、褒めすぎたようだ。
「あら、あら。お邪魔だったかしら。でも、この機会に真奈の交際相手と話をしたいから我慢してくれないかしら」
「交際相手じゃない!本当に話を聞いてよママ!!」
白の家具と壁が多めの清楚なリビングで真奈の絶叫は響くのであった。俺は真奈母親の質問攻めを終わらないかなと顔に出さないよう気をつけて心の中だけで呟く。
「少しお手洗いに」
「廊下を出て右にありますわ」
真奈の母親さん、それだと少し解りにくいです。そうと言わず会釈して席を立ち向かう。トイレはすぐにドアの色とかでなんとなく分かった。トイレに鍵をしてスマホを取り出す。
(なかなか開放してくれない。
冬雅達には伝えないと)
気づかなかったがラインにたくさん冬雅が送っていた。
(病院にいるのですか!なんて
心配させてしまったなぁ。
早く返事しよう)
無事と、あまりにも短く考察ゼロのメッセージを送信。すぐに待たずにして返事が来た。安堵したと
アニメのキャラスタンプ。
(って帰るのが遅くなるって伝えないと!)
今は真奈の母親に偶然にも出会って帰れそうにない。申し訳ないけど三好さんや羽柴さんには遅くなる前に帰らせるようにお願いします。
最後の敬語はどうなんだろうと思い直すべきだろうかと
思い送信してポケットにしまいトイレを出る。
「戻ってきました・・・あれ?
真奈、顔が赤いけど・・・・・やっぱり今の無しで」
きっと母親から付き合って何年目とかどうして好きになったのなど
訊かれたのだろう。
「無しって、何!?
お兄さんがなかなか戻ってこないから好きになったのは?色々と
訊かれたの」
「山脇さんのお
二人の強い絆は言葉や見つめ合うよりも手と手できっちり繋ぎ合うことが最も
真奈の母親は目を閉じて詩的な言葉が出てきたのだけど、
いったいどんな会話をしたのだろうか。
「ママは黙って!」
もちろんそれで、沈黙を選択はなく次々と質問攻めに合う。
気づけば日が沈みシーリングライトがリビングを照らす。
「ふぅー、山脇さんが信用できる人って思えるようになりました」
「えっ?」
突然、笑顔を消えて真摯な表情となる。どうやら真剣な話をする
流れとなっていると直感で感じ取る。
「やっぱりナーちゃんって花を恥じらう可愛いから邪な人に
騙されないかと警戒してしまうのよ」
「分かります」
「花を恥じらうわけない!お兄さんもすぐに同意しないでよ!!」
真奈は疲れ知らず。夜になろうが同じ声量でツッコミ叫ぶ。
これが、若さか・・・まぁ、俺も若いけどね。とバカな事を考える。
「比喩よ」
「それぐらい知っているわよママ!」
「話を戻すわね山脇さん。
やっぱりナーちゃんと付き合うと認めたのだけど、本当に信用できるか?利用されているだけなら考えて不安だったのよ」
「・・・・・」
どう答えるべきか悩み、とれも失礼にあたると思い頷くことだけにした。
「それで、どんな反応するのか試したの。取繕うかを理路整然な解答を選んでいるかをねぇ。
フフッ、まさかナーちゃんが支えて山脇さんがそれとなくナーちゃんを気遣うところを見せられたら認めざるしかないわ」
どうやら考察ではないけど、母親の中では俺と真奈は付き合っていると思っている。下心が無いかを
真奈の気持ちを軽視していないかを鋭い観察眼で俺に質問攻め
したのだと理解した。それは当然の権利で申し訳なさそうに
語る真奈の母親に両親の呵責を覚える。
「ママ・・・・・」
「色々と問題が山積みたと思うけど私が出来る範囲でしたら手助けしますわ」
「ありがとうございます!」
交際していないと、とても言えない雰囲気になっていて俺は感謝の言葉と頭を下げる。
「ここを自分の家だと思って、いつでも気軽に来てくださいね。
ナーちゃんの部屋にも」
「えっ、はい?」
どうして真奈の部屋と言ったのか謎だけど、きっといつでも家にやって来て構わない一種のオーバー
表現と無理に納得する。これから誤解を解くようにしないといけない。そう考えているとドアを開ける人は真奈の父親であった。
「な、なんだこれは?
貴様は真奈を誘惑したロクでなし・・・外に出ろやがれぇぇ!!」
俺は悟った。真奈が絶叫するのは父親に影響を受けたのだろうと。
「パパ落ち着いてぇぇぇーー!!」
真奈が必死に止めてくれたお蔭で
格ゲーを
楽しかった。そして俺はとうとう開放して帰れると靴を履く。
「お兄さんなんだかごめんなさい。迷惑をかけてしまいましたよね」
「そうでもないよ。楽しかったよ・・・個性的で」
「それ、ワタシも入ってない!?」
玄関まで見送りに来たのは真奈だけ。両親は若い二人にと主に母親が。父親はしぶしぶと言っただけ。
「・・・・・ま、まぁ。また明日」
「目を逸しているし。
うん、また明日に会いにいくからお兄さん」
俺は素直な言葉を言う満面な笑顔の真奈に手を振って平野家を後にする。夜道は無心になって
孤独感を強く虚無感になるのだが
今日はそれが無く騒いだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます