第174話―歯車は既に反対に廻る―
執筆して試行錯誤の日々。それからは冬雅達とドタバタ展開が繰り広げる事は・・・無かった。それはどうしてか?
「用事があるって言って、どこかに行った」
PC正面に向かって一人と呟く俺はため息をこぼす。気になる、そして寂しくなって執筆に集中できない状況になっている。
(一度ここに来たけど比翼が嬉しそうについていたのは予想もしなかったなぁ・・・これが、嫉妬か!?いや、いやバカな事を考えるのはやめてと・・・小説を書かねば!)
粉骨砕身、全力疾走するのだと自分に鼓舞してキーボードをタッタッと叩いていく。次第にキーボード音も外に流れるほど没頭しているとピンポーンと来訪が鳴る。
「冬雅が帰ってきたのかな?
よし、仕方ない。本当に仕方ないがいいところだけど出迎えないとなぁ」
頬を緩んでいると、玄関ドアのドアノブを掴む前に気づく。危なかった咄嗟に出てこなかったら
かわいいなどと微笑むところだ。
よし、深呼吸して・・・いいだろう。
「はーい?」
「こんばんは、冬雅のお兄さん。今日は早く終わったので遊びに来ました」
「み、三好さん!?」
品行方正と綺麗に頭を下げて挨拶をした三好さんに、俺も
「冬雅さん達はアニメを観て?」
「それが、用事だと今日はいないんだよ」
「そうなのですね・・・残念です」
「わざわざ来てくれたのに本当にごめん。えーと、せっかくだから中でケーキだけ食べて帰りますか?」
三好さんと一対一で話をしたことはそんなにない。それゆえに、どう接すればいいか
もう27なのに緊張しますね。
「魅力的な誘いですけど断ります」
「そうですか」
「ふっふふ、冬雅のお兄さんそれだと神待ちをしている人みたいみたいですよ」
上品に笑う三好さんに俺は咳き込みそうになるが堪える。
「・・・からかわないで下さい」
指摘されなかったら分からなかったが普通に捉えるからな。
冬雅や三好さんも当たり前のように中へ上がるから
「からかいがありますね。
さて、冗談はこれぐらいにして。もしよろしければ、エミリーさん達と会いませんか?」
外国人で金髪碧眼の変わった性格の美人さん。20前半の容姿で気高そうな雰囲気を纏う彼女は、生粋のオタクでありハイテンションな人。
「うーん、やめておきます。
人と話すのが得意じゃないですし」
「そうですね・・・でも、小説志望者に有益な相手だと思いますよ」
有益って、なんだか
冬雅や羽柴さんに慣れてしまって
大きな驚なく顔に出ていないと思う。エミリーさんはマンガを書いていた事を知っている。
きっと作品を作る側として交流には得られる物があることであろう。やや極論と思うけど、暗中模索にある俺にいいかもしれない。
「三好さんの言うとおりですけね。それじゃあ、会いに行くます」
「よかった・・・エミリーさんも人と話すのが得意な人じゃないから」
「えっ、エミリーさんが・・・!?」
「はい。あんなに
触れないようにしてくださいね」
ニコッと笑う三好さんに俺は
首肯する。
「分かったよ。それじゃあ私はどこで向かえば?」
「私が案内しますよ。確認しますけど冬雅さんはすぐに帰ったりとかは?」
冬雅が訪れる可能性が十二分があるだろう。今日は少し遅くなるらしいがラインでメッセージを送るとしよう。暫くスマホで操作して送信する。
「準備するので中で待ちますか?」
「中?・・・あぁー!いえ遠慮します。先まで無闇にそのセリフすると神待ちって言ったのに」
いや、神待ちとか言わないでほしいのですが!?あれは泊まる条件で醜い感情でする人でと意味が少し違うよと突っ込むべきか迷い
諦めた。ほとんど変わらないし。
「うぅー、寒い。なんて寒さなんだ2月なのに春の到来は遠い」
コートを袖を通して外に出るがまだまだ現役の冬風が吹いて身を縮む。前は昼が温かいのに、これが
寒暖差かと
「もし、よろしかったら私と手を繋いでみます?」
隣に並んで歩く三好さんが満面な笑みで手を向ける。
「いや、いいです。それ繋いだら最後・・・とかになりそうですし」
「心外ですね。ラブラブ展開になりますよ」
「照れずに淡々と言っているのに?」
「さすが女子中学生を何度も落とすだけはありますね。格言とか落とし方で出本も狙えますよ」
「あはは、絶対にしないから」
車のヘッドライト、街灯、家々の明かりがつき始める夜の時間帯に
俺と三好さんは思いもせず話が
弾んでいた。・・・まぁ、内容が完全にあれで通り過ぎる人からは不審な目を見られる。大丈夫だ、
俺は冬雅や比翼とずっといるから
この程度で屈しないのだよ。
あっははは・・・なんだかハイレベルサイコパス。
「冬雅のお兄さん面白い人ですね。確かに可愛いと言いたくなるのが分かりますね」
「ずっと疑問なのですが可愛いってなんですか!?」
やや高い声で叫んでツッコミに
三好さんは親しそうに微笑む。
なんだか大人と話をしているみたいと思ったら、あべこべ。
「うーん?どうしてかな」
「・・・そうですか」
改善しようと思ったけど、それが
「それよりも、冬雅さんと真奈さん・・・もしかして比翼ちゃんの
どちらが好きですか」
「えっ!?」
ストレートな言葉を掛けられ狼狽の声が出る。これが、可愛いとかいわれる
さて、どう答えようかと冷静になろうとするが思いの外、俺は動揺して焦っている。
「そ、それは・・・えーと大事な友人だと思っているよ」
「いえいえ、誤魔化さずにです。
私の問いの意味を・・・曖昧なんて酷いと思いますよ」
俺は三好さんが冬雅から聞いた人物評では人見知りと聞いたのだけど、どうやら少し違うようだ。
時には獅子のように鋭い観察眼や
優柔不断を嫌う傾向が。
「・・・冬雅だと思う」
「ふ、冬雅さんを!?」
足を止め驚愕する三好さん。
三好さんの中では真奈が選ぶと考えていたのだろう。予測に過ぎないが・・・正直に答えたことで、
「ああ」
「・・・はっきりしないのは?」
楽しげにしていた笑顔は俺の答えに真剣で複雑そうにする。
「まだ、よく分からないかな」
「・・・・・」
「冬雅と真奈には伝えている。
答えはいつか2年後には・・・・・
「・・・すみません。なんだか
しゅんとなり、模範的な頭を下げた彼女に俺はそんなことさせた
罪悪感に申し訳ない気持ちになる。
「いや、当然だよ。
正しい選択とか器用に出来ない俺が悪いですから」
「それでしたら私も同じですね。こういうのを
笑顔で人差し指を左右に振り言う。
「いえ全然、違いますから!
それだと犯罪に加担とかなりますし、そもそも犯罪とかしていない」
とんでもない発言に俺はツッコミスキルを
これも誰かのせいなのですよ。
・・・・・言い訳みたいな事を心で呟くのか俺は。
「ふふっ、そうなのですね」
「その笑みは絶対に知っていて
ボケましたね三好さん」
右手で口を抑えて微笑む三好さんに俺も釣られて笑う。
なんだか手玉に取られた感はあって癪だけど。
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