第155話―魔神英雄伝マナ―

お正月は神社やお寺も賑わっている時期。そしてワタシの初詣は――


「お、お兄さんワタシと二人だけですね」


「そうだね。まさか途中から冬雅達が用事で帰っていくなんて。

俺なんかと一緒でなんだか申し訳ない」


「そ、そんなことないから!

ぎょ、僥倖ぎょうこうかなって思ったりもしたり?」


島根県にある有名の出雲大社いずもおおやしろに来た。参拝に来た列にワタシとお兄さんは隣に並んでいる。正直、辟易していたんだけどお兄さんとこうして隣にいるだけで心臓の音が早く鳴っているのを感じる。


「そう?えーと真奈まなとこうして二人きりって懐かしいよね」


「う、うん。お兄さんと二人きり」


これじゃあまるでデートだ。お、落ち着くために周囲を見渡そうとしても所々にカップルがいい雰囲気で余計に意識させる。繋いでいる手を離せば少しは落ち着くだろうけど、お兄さんは寂しがりだから繋がないとね。これは個人的にずっと繋いでいたいて私欲ではない・・・・・・な、なんですか疑っているんですか!


「って、ワタシは何を二人称を言いたくなるんですか」


「うわぁ!?真奈ど、どうした?」


お兄さんに驚かせてしまいました。本当にどうしたんだろうワタシ・・・急に誰かに見られている視線を感じてしまった。

幻覚?はいったん置いといて。

大社おおやしろと呼ぶだけあって圧巻の一言。大社と呼ぶのはここ出雲大社のみで後は忖度そんたくして大社たいしゃと呼ぶのがルールとなっている。


「実は真奈が大人になる前に約束したけど・・・俺は真奈の事が好きだ」


「ふーん、そうなの・・・・・えっ?

ええぇぇぇ!!?お、おお、お兄さんは何を言っているんですか」


「いつも支えて優しい真奈を好きになるのにそう時間は掛からなかったんだ」


ワタシの問いに答えずお兄さんは前触れもなく嘘偽りのない想いを告白をする。真剣で優しい表情。


「・・・・・ま、待って冬雅に告白したんでしょう。だ、だから無理だよお兄さん」


そうクリスマスで二人は相思相愛になった。まだ交際をしない恋人でもないのが二人らしい。けど、

お兄さんがそんな発言するなんて信じられなかった。


「冬雅には・・・フラレてしまったんだ。だから真奈、付き合ってほしいんだ」


「・・・考えさせてください」


「真奈?」


「嬉しいですけど、何かかなおかしいんです。前にデジャブというのか似たような経験が・・・あるんです」


「わかった。返事は待つよ」


疑問にあふれて理路整然な考察できないまま、列が前へ前へと進んでいき賽銭箱さいせんばこに5円玉を七枚を投げる。

お兄さんと冬雅とパパとママと茜と花音と比翼の分。ワタシの幸福は自分の手でつかみ取るのがワタシの信条と決めている。


「お兄さんは何をお願いしました?」


二礼ニ拍手一礼を済ませたワタシ達はおみくじにある場所へ牛歩ぎゅうほの速度で歩く。お兄さんが何を願ったのか純粋に気になって。


「真奈が幸せになるように願ったんだよ」


「・・・・・そ、そうですか」


笑顔でそう言われたらトキメいてしまった。ドキマギとするのに疑問はどんどんふくらんでいく。それよりも二人きりだし楽しまないと、おみくじを引く。


「大吉だ!」


ちょっと嬉しい。恋愛運が成就すると書いているけど無理だろうなぁと苦笑してしまった。


「俺も大吉だ!」


「お兄さんも大吉なの、スゴイ確率ですね」


「そうだな。俺と一緒なんてこれは運命かもしれないなぁ」


「・・・う、うん。そうだよね」


何かがおかしい。出雲大社の歴史を視覚情報と空気を感じて一緒に楽しむ。時間が過ぎるのは本当に早く外は夜となりワタシとお兄さんは新幹線に乗り帰路に就く。

向かいに座るお兄さんと出雲大社の話題で話の花を咲かせる。


「真奈、告白の返事だけど・・・」


「ええっ!?ど、どうして急に」


「このままズルズルとするのはやめたいんだ。だから、返事をしてくれたら助かる」


「・・・お兄さんじゃないですよね」


「えっ?」


「お兄さんだけど。ワタシが作った妄想のお兄さん・・・こんな夢心地な気持ちを言うことなんてない」


「真奈?いったい何を言っているんだい」


お兄さんは、困ったように苦笑している。何度も似たような事を体験すれば、これが夢なんてすぐに理解した。


「それに、お兄さんはフラレたからって他の人を選ぶなんてできるとは思えない。ワタシだけを幸せを願うことなんてしない。

お兄さんはもっと優しいんだから」


もし気づかないフリをしても良かったけど、ワタシが大好きなのはみんなに優しいお兄さんで、いい大人なのに純粋すぎる人が大好きで自分でもどうしようもないほどだぃぃい好きなんだ。


「・・・夢だけでも夢を願ってもいいんじゃないか?」


お兄さんの姿をした人は心配と優しさで微笑む。


「ううん。まだ、お兄さんにワタシを選ぶかもしれない。

だから、まだ終わっていない」


そうだった。ワタシは諦めていた恋を無意識に諦めてなんかいなかった。お兄さんに振り向いて欲しくて色々と我儘わがままを言った。


「そうか。なら俺と会うのは最後だな現実の俺によろしくって伝えてくれ」


「本当にそんなことしたら、お兄さんがかわいそうな顔をされると思うけど」


「ふっ、そうだな・・・・・・」


――ワタシは夢の世界から現実に戻ったようだ。目を開くと見慣れた天上と家具。そして朝の到来を告げる窓越しからの陽光。


「お兄さんにれさせてみせるぞぉぉ!」


ワタシは勇ましく宣言する。

大声を上げたことにママとパパが

どうした!とリビングに行くと

訊かれるのだった。

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